第332話 勝利
空から強襲する俺に向けて、敵のライドキャリアから砲撃が繰り出される。そもそも命中精度はそれほど高くないようだ。飛行する魔導機を狙い撃つことはできないようで、一発も命中しなかった。まあ、当たったところでダメージは受けないだろうけど。
砲撃をしてきていたライドキャリアの砲門にドロップキックをお見舞いするように着地して破壊すると、周りを見渡し敵の本隊を探す。
「フェリ、敵の本隊の位置がわかるか?」
「命令系統の中心となっているのは北北西の位置の部隊だと思われます。軍旗も上位のものですし、可能性は高いでしょう」
「よし。それじゃ、その北北西の部隊を叩こう」
俺は再度飛び立つと、北北西にいる敵部隊へと向かった。俺の姿をとらえたその部隊は、鬼のように砲撃をしてきた。反撃の感じから敵本隊に間違いないだろう。俺は砲撃を避けもしないで真っすぐと突撃して、敵本隊の中心へと降りたった。
空を飛んできた魔導機が本隊のど真ん中に平気で降り立った状況が理解できないのか、敵はすぐに動くことができなかった。魔導機もライドキャリアも俺に注目するが誰も一歩を踏み出せない。確かにたった一機で敵の真っただ中に突撃してきて、平然としている光景が理解不能なのはなんとなくわかる。しかし、こっちも散歩しにきたわけではない。動かないなら遠慮なくこちらから仕掛けさせてもらう!
俺は左手を敵に向けて、手の甲に装備している強化魔光弾を放った。強化魔光弾はロボットアニメにでてくるビーム兵器のように真っすぐと伸びていき、敵機を貫通して破壊する。さらに狙いを定めて強化魔光弾を連射する。次々と撃ちだされる光線で敵機を串刺しにして破壊する。
さすがはラフシャルの作った魔光弾だな、連射してもオーバーヒートすることもなく平気だ。アルレオに実装していた市販のやつなんて、一発撃ったら止まってたからな。
魔光弾の攻撃で目が覚めたのか、敵機がようやく動き出した。武器を構えてこちらに迫ってくる。
剣を抜いて構えると、敵機が近づくのを停止して待つ。攻撃範囲、敵が俺の間合いに入った瞬間、体を捻りながら円に剣を振り、近づいてきた敵を一掃する。
さらに浮遊歩行の機能を利用してジグザグに動きながら、敵を斬り伏せていく。敵は反撃するどころか防御することもできずに倒される。浮遊歩行はもはや魔導機とは別次元の動きを可能にする。初見でこの動きについてこれる奴はいないだろう。
戦闘中……いや、一方的な殲滅の途中に、大きな爆発が起こった。多分、リンネカルロが四元素砲を放ったのだろう。俺はそれがなにか分かったのでとくに驚くこともなく変わらず戦えていたが、敵は得体のしれない攻撃に怯えているようだ。恐怖が勝ったようで、もう、完全に戦意は失われていた。
それから攻撃してくる敵はいなかった。一目散に自国の方へと逃げていく。敵の全軍で撤退の動きがみられたので、リンネカルロと渚に状況を確認する。
「リンネカルロ、渚、そっちはどうだ?」
「四元素砲でかなりの損害を与えましたわ。それのせいでしょうけど、ほとんどの敵が一目散に逃げ始めましたわ」
「こっちも、敵はもう戦う気はないみたい。私に目もくれず、国境を目指して移動してる。どうする、追いかけた方がいいのかな?」
「いや、十分損害も与えたしもういいよ。逃げる相手を倒すのはあまりいい気分じゃないしな」
「そうですわね。戦意の無い人間をいたぶる趣味はございませんわ」
「わかった。それじゃ、私は勇太やリンネカルロと違って飛んで戻ることもできないから先に帰るね」
渚の言葉の後に、リンネカルロが何かに気が付いて騒ぎはじめた。
「きゃっ! 大変ですわ!」
「どうしたリンネカルロ!」
「さっきの四元素砲でエーテルが枯渇しましたわ!」
「なんだよ、そんなことか。驚かすなよ」
「仕方ないですわね。私も徒歩で帰りますわ」
今まで歩いて移動するのが当たり前だったけど、そう言われると飛べないのは不便にすら感じるな。
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