第333話 戦後処理
敵軍は完全に撤退した。アムリア連邦は負傷兵の回収や、敵軍の捕虜の確保に大忙しに動いている。かなり大規模な戦闘だったので、敵も味方も被害は甚大であった。負傷した兵は数万人にもなり、捕虜にした敵兵は一万人にものぼる。
「完全勝利というには被害がでかすぎるな」
ジャンが被害状況などを確認しながらそう嘆く。
「勇太たち帰ってくるのがもう少し遅かったらやばかったよね」
「ホント、基地内に侵入された時はダメだと思ったわ」
ナナミとエミナも苦労したのだろう。心底ほっとしたようにそう言う。
「それより、アリュナは大丈夫なのか?」
俺は負傷したアリュナが気になりそう聞く。
「大丈夫だ。もう医療カプセルから出て部屋で休んでるよ。そうだ、勇太。ちょっといって見舞ってやれよ」
そうだな。大丈夫といっても気になるしちょっと見てくるか……。
ということでアリュナのいる部屋を訪ねた。
「勇太だけど、アリュナいるか?」
部屋の前でそう声をかけると、元気そうなアリュナの声が返ってきた。
「勇太かい!? ドアは開いてるよ」
入ってこいってことかな? そう思い、俺はドアを開けて部屋の中を覗いた。アリュナはベッドに横になっていた。なぜか布団を頭までかぶって隠れている。
「どうした、まだ具合が悪いのか?」
そう聞きながら近づいていく。すると、するすると少しづつ布団がずらされ彼女が姿を見せる。どういう訳かアリュナは着衣を何も着ていなかった。
「わっわっ! アリュナ! どうして裸なんだよ!」
「どうしてって、私はいつも寝る時は裸だよ。ほら、目をそらさないでちゃんと見ておくれよ」
「アリュナ!! そんな卑猥な体を勇太に見せないでくださるかしら!」
「あら、リンネカルロも一緒だったの?」
アリュナの見舞い来たのは俺だけではなかった。リンネカルロと渚も同行していた。
「あたりまえですわ! 勇太だけであなたの部屋になんかにいかせませんわよ! ほら、予想通り、妙な気を起こしてましたわ」
「妙な気って何さ。私はただ、治った体を勇太に見せたかっただけだよ」
「別に裸を見せる必要はないでしょう!」
「裸じゃないと見せられないところを怪我していたのよ!」
「あら、それはどこかしら? そもそも怪我した状況も知らないのに、治った個所を見せる必要がありまして?」
アリュナとリンネカルロ言い合いは続く。二人とも凄い剣幕なので、なんとも止める隙もない。
「こら! ちらちらアリュナの裸みない!」
「みっ、見てねえよ」
渚の指摘に慌てて否定するが、俺も男の子である。どうしても、ちらっと目がいってしまう。それを察した渚に、最後には部屋を出されてしまった。まあ、リンネカルロとあれだけ喧嘩できるならもう大丈夫だろう。
戦いの後片付けと同時に、防衛体制の強化も同時に行われた。今回の戦いの生き残りと、後で援軍でやってきた第六軍を中心として防衛軍が組織された。さらに練習生部隊の第二期生も始動することになり、量産機の生産も急ぐことになった。
戦いが終わってから三日後に、ラネルがビラルークへと訪問してきた。今後の対応と現状の視察の為だが、なぜかビラルークに到着してすぐに無双鉄騎団に顔出す。
「勇太さんも渚も無事でよかった」
「なによラネル。忙しいのにこんなところにきて大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないけど、どうしても直接、聞いておきたいことがあったから」
「聞いておきたいこと?」
「実は今回の戦いで、ヴァルキア帝国とリュベル王国の大物を何人か捕虜にしたのだけど」
「大物ね。将軍クラスでも捕まえたのか?」
ラネルの話を聞いていたジャンがぶっきらぼうにそう質問した。
「いえ、もっと大物です。ヴァルキア帝国の覇王キュアレス。リュベル王国の魔神ケイマイオス。他にも王族や皇族を何人か……」
「そりゃ、すげえな。身代金とか取り放題だな」
「はい。捕虜の返還として、かなりの条件をヴァルキア帝国、リュベル王国に請求できると思います。そこで、今回の戦いの最大の功労者である無双鉄騎団に、アムリア連邦として報いたいと思いまして相談にきました」
「ほう。身代金の一部でもくれるのか?」
「お金より貴重かもしれません。渚に以前聞いたのですが、無双鉄騎団はリュベル王国に赴く用件があるとか」
リュベル王国……そうだ。オヤジを生き返らせることのできる古代文明の研究施設がリュベル王国にあるんだった!
「ラネル! 俺たちがリュベル王国で探索できるようにしてくれるのか!」
「はい。それを捕虜の返還条件の一つに加えようかと思っています」
よし! どうしようかと悩んでいた問題の一つが解決しそうだ。これでオヤジの復活も現実的になってきたぞ。
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