第331話 形勢逆転

軽く振っただけで、盾を構えた敵機を盾ごと斬り伏せる。蹴りを入れただけで敵機は吹き飛び沈黙する。動作一つ一つが今まで乗った機体とは次元が違った。


これがクラス2専用機か……。


俺は専用機の動きを確認しながら戦う。スピードもパワーも全てが超次元の感触で、まだ一割も力を出していないのに敵軍を圧倒する。渚の機体もかなりのポテンシャルを持っているようだ。渚もかなり力を抑えて戦っているようにみえる。


俺や渚、リンネカルロの戦いに触発されたのか無双鉄騎団の仲間たちの動きもよくなってきた。圧倒的な勢いで敵軍を殲滅していく。最初は抵抗していた敵軍も、やがて防戦一方になり、最後は逃げるように後退し始めた。


無双鉄騎団の勢いはアムリア連邦全軍にも伝わり、大きな波となって敵軍に襲い掛かる。すでに数の優勢でもそれを覆すことができないのか、多数であるはずの敵軍は追い詰められていった。


「よし好機だ! 敵軍に反撃する気力はもうないぞ! 全軍、最後の気力を振り絞って攻撃しろ!」


ジャンの言葉に、アムリア連邦の指揮官たちも呼応する。疲労と損傷でボロボロの部隊を奮起させて最後の攻勢に移る。


さらに追い打ちをかけるようなできごとが起こった。


「基地、東方面より軍勢が接近! 軍旗から友軍だと思われます!」


周囲を警戒していたムサシの乗員が、望遠鏡を覗きながらそう報告する。すぐにアムリア連邦軍のチャンネルで現れた友軍から通信が入る。


「こちら、中央第六軍。援軍要請に従い馳せ参じた。これより戦闘に参加する」


通信を聞いてジャンがなにやら情報を持っていたようで反応した。

「第六軍か、量産機部隊を新設したところだな。これで勝負は決まりだな」


援軍の登場にジャンも勝利を確信したようだ。


敵軍は組織的な反撃もできないで、国境方面へと後退していく。そこへ援軍でやってきた第六軍が側面から強襲した。ただでさえ士気の落ちている敵軍は不意の攻撃になにもできずに倒されていく。


新設された量産機部隊もこの強襲でみることができたけど、ラフシャル設計だけあってやっぱり優秀な機体のようだ。複数体の敵に対しても圧倒するだけの実力があり、さらに量産機ということで部隊単位の組織的運用で本領を発揮しそうだ。


「勇太。リンネカルロ。渚。もう勝負は決まったが、今後の為にできるだけ敵の戦力を削っておきたい。悪いが後退する敵の後方に回り込んで敵の本隊を叩いてくれるか」


確かにジャンの言うように、アムリア連邦に二度とちょっかいを出したくないと思うくらいに徹底的に叩いた方がいいかもしれない。俺はリンネカルロに、行くぞ、と合図を送ると渚を捕まえて上空へと舞い上がった。


「ちょっと、勇太! また私を空から落っことす気でしょう!」

「仕方ないだろ、渚は空飛べないんだから」

「もう……絶対、後でラフシャルに文句言ってやる!」


後退する敵軍の後方に回り込むと、渚を爆弾のように落とした。まあ、敵からしたら渚専用機の存在は爆弾みたいなものだろうからこの扱いであっていると思う。


「俺は北西方面の敵を叩くから、リンネカルロは東北方面に逃げてる敵を叩いてくれ」

敵は大きく二軍に分かれて後退していた。おそらくヴァルキア帝国とリュベル王国の二つにわかれているのだと思うが、俺はどっちがどっちなのかわからないのでそう指示した。

「わかりましたわ、この戦い、最後の攻撃になりそうですから、出し惜しみせず、もう一発四元素砲をお見舞いしてあげますわ」


俺もその案に乗ろうかと思ったが、もう少しクラス2専用機の実力を把握したいと思い、敵の本陣に単騎で突撃することにした。

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