第317話 総攻撃/春馬

一瞬何が起こったのか理解できなかった。空中を飛んでいる魔導機に砲門の狙いを定めた瞬間、大きな爆発が起こり僕のギリメカラが大破した。コックピットの防護システムに守られてなんとか無事だったけど、もうギリメカラはピクリともしなかった。


信じられない……無敵の防御能力と強力な火力を誇るギリメカラがこうも簡単に撃破されるとは……。


自慢の設計だった機体をやられて悔しいと思うけど、それ以上に予想外のできごとに混乱していた。大破したギリメカラのコックピットから動くことができないでいると、味方の魔導機が近づいてくる。


「春馬様、ご無事ですか!」


ギリメカラが大破したのを見て部下が救出に来てくれた。礼を言う気力もなく無言で部下の魔導機に乗り込み戦場を離脱する。


この戦場の主戦力だったギリメカラが倒されたことで形勢が逆転していた。勢いとは怖いもので、ギリメカラ抜きの戦力でもこちらが優位だったはずなのに、敵軍の猛攻に圧倒されている。指揮していた将軍は、この勢いを変えるのは難しいと判断したようで一時撤退の命令が下った。



今日の戦果は、ヴァルキア帝国、リュベル王国共に、全ての戦場でおもわしくなかったようだ。いくら新戦力を試すのが主目的であっても、二日続けての不調を軍上層部は重く受け止めていた。


「アムリア連邦がこれほどやるとは予想していなかったな」

「こちらの方が兵力は上なのにどういうことだ! 力負けしているとしか思えないぞ!」

「ふっ、こちらは主戦力をまだ前線にだしていない。本番はこれからですぞ」

「ですな、いくらなんでも三日続けて無様な戦いはできませぬからな」


「それでは、明日は全兵力による総攻撃ということでよろしいかな」

思い思いに意見を言っていた参謀や将軍たちの意見をまとめるように主席参謀がまとめた。

「異議なし!」

そこにいる全ての人間が、総攻撃を指示した。それを見て総司令官が立ち上がり決定を繰り返す。


「明日は全軍による総攻撃をおこなう。出し惜しみは無しだ! この決定はヴァルキア帝国にも伝えて、同盟の力を見せつけるとしよう!」


いよいよ、強化されたリュベル王国軍が本気を出すようだ。こうなればアムリア連邦も一溜りもないだろう。残念なのはこの戦いに僕の出番はないだろうと言う事であった。実は予備としてギリメカラの二号機を持ってきてはいた。だけど、今日の敗北で、もう、僕にそれを使う機会は与えられないだろう。


「春馬、そう言えば今日の戦いの結果聞いたぞ」

総司令官がそう話を振ってきた。

「申し訳ありません。思うような成果をあげれませんで……」

「いや、試験機で、あの結果なら悪くはないだろう。撃破数78機、威圧感もあり、味方の士気向上にも貢献していたと聞いている。大破したそうだが、あの機体には予備があるそうだな。明日の総攻撃でも期待しているぞ」


「はっ、はい! 全力で結果を出します!」


どうやら自分で思っていたより、結果を良くみてくれていたようだ。これで明日の戦いにも参加できる。よし、今からギリメカラの調整をしよう! 今日のような敗北は二度とするものか。



結局、朝方まで機体を調整していた。寝不足だが、興奮しているのかそれほど眠くはなかった。


出撃前に話を聞いたのだけど、どうやらリュベル王国の総攻撃に、ヴァルキア帝国も同調することが決まったようだ。これで本日はヴァルキア帝国とリュベル王国の全軍による総攻撃が実施される。これでアムリア連邦の敗北は今日中に決まるだろ。

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