第316話 完成した専用機
「よし、これで最終調整も終わったよ。勇太の専用機の完成だ」
ラフシャルが嬉しそうにそう言う。俺は完成した新魔導機を見上げながらこいつが暴れまわる想像をして心を躍らせていた。
「もう少しで渚の専用機の調整も終わるから、そうしたら三人の魔導機の調整は完了になる」
俺の専用機の最終調整が完了する少し前に、リンネカルロのヴィクトゥルフの最終調整は終了していた。これでみんなのところへと向かえる。
「今、ビラルークでは戦争中なんだよな。戦況はどんな感じなんだろう」
俺が誰に聞くわけでもなくそう言うと、フィスティナが答えてくれた。
「少し前にジャンさんから連絡があって状況を聞きましたけど、なんとか優勢に初日はしのいだみたいです」
「そうか、ジャンやアリュナに清音までいるから、大丈夫だとは思っていたけど、心配する必要もなかったか。まあでも、これから何があるかわからないしすぐに戻らないとな」
「渚の最終調整なんて待ってないで、私と勇太で先に戻るって選択肢もありますわよ」
リンネカルロがなぜか渚を見ながらそう提案してくる。確かにその案もありといえばありだ。
「二人で帰るって言ってもどうするつもりだ。フガクは渚の最終調整が終わるまで動かせないよ」
ラフシャルがリンネカルロにそう指摘した。
「ヴィクトゥルフには飛行能力がございますわ。勇太専用機にも飛行能力があると聞いてますし、二人で飛んで帰るつもりですわよ」
「ここからビラルークまでの距離を飛行するのは無茶だな。途中でエーテルが切れる」
「そうですの?」
「そう。まあ、渚の専用機の最終調整もそれほどかからないから、待ってなよ」
「仕方ありませんわね。ほら、渚、早く終わらせなさいよ」
「私に言われても……」
その後、渚専用機の最終調整も終わり、調整中の練習生たちを置いて俺たちは一足先にビラルークに向かうことになった。
初日を優勢に終わったと聞いても、まだ、俺の不安は消えていなかった。少しでも早く行くためにフガクを不眠不休で進ませることになった。そうなるとフィスティナ一人で操縦させるには無茶があるので、俺と渚、それにリンネカルロが交代で操縦することにした。
「ちょっと……勇太! 飛ばしすぎだって!」
「し、知らないよ! スピードどうやって調節するんだ!」
俺が操縦桿を握ると、フガクが今までみたことのないようなスピードで進みだした。山間を進んでいたので、このスピードはかなり怖い。
「あっ、そうだ言い忘れていたけど、フガクの推進力をルーディア値に依存するように改造したから、勇太には操縦桿は握らせない方がいいよ」
今更ながらラフシャルがそう注意してきた。そう言うことは早く言ってくれ……。ということで、フガクの操縦はフィスティナ、渚、リンネカルロの三人での交代制となった。クラス3で、現在ルーディア値100万を超えた渚と、クラス4で50万超えのリンネカルロでもかなりのスピードがでる。
「ラフシャル、どうしてフガクの推進力をルーディア値依存に改造したんだ?」
「推進力だけじゃないよ。防御シールドに、四元素砲の出力なんかも操縦者のルーディア依存に改造している」
「だからどうしてそうしたんだよ」
「前々からもったいないと思ってたからね。エーテル高濃度地帯にいる間にと思って調整したんだ」
「もったいないってなにがだよ」
「それは本人が言う気がないみたいだから内緒だよ」
どうも話が飲み込めない。まあ、なににしろ、これで思ったより早くビラルークに戻ることができるかもしれない。なにしろスピードが以前とは比べようがないくらいに早くなっている。渚やリンネカルロだけじゃなく、フィスティナの操縦でもそのスピードは維持されており、かなりの時短になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます