第315話 私が決める/ファルマ

友軍の為にも、ここで私たちが引くわけにはいかない。だけど、さっきのヴァジュラの攻撃の失敗で、こちらの作戦が読まれたのか周りの警戒を強めている。これでは近づくのも難しい。


「どうする、ファルマ!」


どうしたらいいんだろう……ジャン、アリュナや勇太ならこういう時どうするかな……いや、勇太はたぶん力押しでなんとかするだけか。思い直した私は、ジャンやアリュナならどうするか考えた。


そう言えば前に巨大な魔導機とみんなと一緒に戦ったことあったな……あの時はどうしただろう……そうだ、あの時はアリュナが的確にみんなに指示をだしていた。みんなの長所を理解して、敵の弱点を見つけて……。


みんなの長所……ロルゴのガネーシャは何と言っても耐久力と防御力が自慢。今も強力な四足歩行の砲撃を一人で受け止めている。


ナナミのヴァジュラは、攻守バランスのとれた機体で、どんな状況にも対応できる汎用力が魅力の機体……。


ダメだ……アリュナみたいに思いつかない。どうしたらいいんだろう……八方塞がりだと思ったけど、私の思考には一つだけ大きな抜けがあった。それは自分自身を考えの蚊帳の外に置いていたことである。


そうだ、私も戦力の一つじゃない。私のガルーダの長所は飛行できること、それだけだと思っていたけど、ずっと乗っていて最近気が付いたことがあった。それはガルーダの意識伝達の正確さである。操作球のイメージ伝達は、魔導機によってごくわずかだけど差異が生じる。大まかな動きでは問題ないことでも、ミリ単位では動作にずれがあるのだ。だけどガルーダは寸分狂わず、私のイメージが機体の動作に直結していた。


この長所はアローを扱うのに最大の効果を生み出していた。アローで100m先の対象を狙った時、手元の一ミリの誤差は目標に到達した時には数メートルの誤差にもなる。だけど、私のガルーダにはミリの誤差もない。それが最大の長所……。


私は四足歩行の弱点を探した。そして一か所、明らかに装甲の弱い部分を見つける。私にしか狙えないその場所は、背中の砲台の砲口であった。


あそこなら……。


「ナナミ! ロルゴ! 足を抑えて四足歩行の動きを止めて!」


砲口を狙うにしても動き回っていては流石に無理である。ナナミたちに足を止めてもらうようにお願いする。


「任せて! ロルゴは右側からお願い!」

「わがった……おで……頑張る!」


そう言うとロルゴは、砲撃を盾で防ぎながら突進すると、足にしがみついた。ナナミも後ろ足に攻撃をして動きを止めようとする。四足歩行の足は分厚くて装甲も厚い。破壊するのは難しそうだけど、動きを止めるくらいならできそうだった。


敵が四足歩行の動きを止めようとしているのを察したのか、周りの敵魔導機がナナミたちに攻撃を始めた。ナナミは襲いかかってきた敵機を斬り伏せて自分で対処しているが、足にしがみつくロルゴは後ろからいいように槍や剣で攻撃されている。ロルゴはそれでも足から離れようとしない。いくらガネーシャ でもこのままでは危険だ。私はアローを構えてロルゴを攻撃する敵機を狙って射る。


装甲が薄く、エレメンタルラインの集中部分でもある首元を狙ったアローは、正確にそこを射抜く。さらにもう一機の敵に狙いを定める。こいつは重装備でガッチリと体が守られているので、足の関節部分を狙う。正確に撃ち出されたアローは装甲の隙間に命中して足を破壊する。足の関節を破壊された敵機はバランスを崩してその場に崩れ落ちた。


周りの友軍機がこの状況を見てフォローしてくれ、近づく敵機に対応してくれ始めた。これで四足歩行に集中できる。


私は浮遊したまま四足歩行に近づく。それを見て背中の砲門の一つをこちらに向けてきた。狙い通りだ。私を狙う砲門の砲口はこちらから丸見えだ。ゆっくりとアローを構えて狙いを絞り、魔導撃を発動してアローに力を加える。そして砲口が火を吹く前に放った。


アローは砲口に吸い込まれるように消えていく。一瞬の沈黙の後、四足歩行の背中部分が膨張して、大轟音と共に吹き飛んだ。


背中を燃え上がらせながら、四足歩行はゆっくりと崩れるように倒れていった。

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