第308話 激化/ジャン

無双鉄騎団の布陣する場所が、防衛線のウィークポイントだと敵軍も気がついたようだ。かなりの戦力がこちらに集中してきた。


「予定通りだ! 俺たちに敵が集中すればするほど、周りの味方が楽になる! 逆に崩れたら全軍が崩壊するぞ! 気合入れて踏ん張れ!!」


俺の言葉で奮起したわけではないだろうが、無双鉄騎団だけではなく、練習生部隊も動きが活発になる。押し込んできた敵部隊を逆に押し返すほど、こちらの勢いが増した。


無双鉄騎団やアムリア連邦が強くなりすぎたのか、ヴァルキア帝国もリュベル王国も大したことはないと思ってしまった。しかし、そんな俺の見立てとは違い、現場は敵に妙な怖さを感じているようだ。


「ジャン! ちょっとおかしい! 敵軍に妙に強いのがたまに混ざっている!」

アリュナがそう指摘する。さっきから戦いを見ているが、苦戦しているようには見えないが……。

「どういうことだ? 特に苦戦しているようには見えないぞ」

「まだギリギリ対応できているだけよ。まだ敵の主力の本隊が動いているようには見えないのに、トリプルハイランダー並みのライダーがちらほらいる」

「トリプルハイランダー並みの敵が……どういうことだ!?」

「わからないけど、もっと強いのが後ろに控えてる可能性もあるから気をつけた方がいいね」


いくら強国のヴァルキア帝国やリュベル王国でも、トリプルハイランダーが一般部隊にちらほら編入できるほどいるわけがない。一体何が起こってるんだ。


「ジャン。アリュナの言ってるように何かおかしいよ! 危険だったから私が真っ先に仕留めたけど、さっき倒した魔導機はクアドラプルハイランダー専用機のシュティンガーだったよ。シュティンガーはよく発掘される魔導機だけど、起動ルーディア値が高すぎて乗れるライダーがいないことから、至高の廃棄物と揶揄されてるものなんだけど、実戦で使われてるなんて、ちょっとおかしい」


魔導機マニアのファルマだから見間違いはないだろう。シュティンガーの話は俺も聞いたことある。そんなのを見かけるなんてやはりこの戦いのヴァルキアとリュベルは何か変だ。考えれば考えるほど不安になってきたのだが、それが形になって現れ始めた。


今まで全ての敵を瞬殺してきた清音が、一機の魔導機に手間取っている。その相手だがファルマも知らない魔導機のようで、スピードもパワーも驚異的な力を見せていた。しかし、さすがは清音である。そんな強敵だが、最後は胸を貫き倒した。


「ルーディア鍛錬をする前の私だったら勝てなかった……」

強敵を倒した清音の感想である。天下十二傑で倒せない相手となると、同じ天下十二傑しか想像できないが、天下十二傑の全ての魔導機の特徴を知っているファルマの知らない機体だったことで謎が深まる。


さらに危機的状況が、目に見えてこちらに迫ってきていた。

「ちょっと待って……シュティンガーがあんなに!」


ファルマの声に、国境の方へ目をやる。見ると目立つ黄色い集団が見えた。無骨なデザイン、まるでサーガに出てくる黄金騎士のような風貌の魔導機……あれがクアドラプルハイランダー専用機のシュティンガー……そのシュティンガーばかりの敵部隊が、静かにこちらに迫ってきていた。


「ジャン! クアドラプルハイランダー専用機があの数でくるのはヤバイよ!」

「わかってる。ちょっと待て、対応を考える」


さて、どうする……百機はいるな……さらに他の部隊も大量にきているし……くそっ! 勇太とリンネカルロがいればな……強引になんとかなりそうだが、今はいない二人のことを考えても仕方ない。


どうする……今の戦力でこの危機を乗り切る方法は……俺は頭をフル回転させて、打開策を考えた。

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