第307話 成長と変化/ジャン

乱戦が始まると、防衛線の要である俺たちの陣に敵の魔導機部隊が突撃してきた。数は500機ほどで、こちらの四倍はいる。すぐに迎撃の指示を出した。

「敵を他の陣に行かせるな! 素早く片付けないと背後からどんどんくるぞ! 無双鉄騎団は練習生をフォローしながら全体に散らばれ!」


無双鉄騎団だけで固めるより、全軍に散らばり配置する方が全体的な戦闘力は増すだろう。敵軍は大軍で、少数精鋭で戦い抜くことより、軍全体で対処するように考えるべきだろう。


練習生が強くなったといっても、やはり無双鉄騎団の面々にはまだまだ及ばない。すでにルーディア値十万越えのアリュナは鬼神の如き動きで、次々に敵を真っ二つに切り裂いていく。その殲滅スピードは、練習生十人分より早そうだ。


ロルゴが数十という敵機の攻撃を一手に引き受けていた。性格上、敵といっても攻撃するのを好まないロルゴらしい戦い方で、味方の手助けに全力を注いでいる。ロルゴのルーディア値も十万近くまで成長していて、並みの魔導機の攻撃など簡単に跳ね返している。


驚異的な成長速度のナナミも、その力を発揮している。リンネカルロと同じクラス4ってのは間違いではないようだ。すでにルーディア値もリンネカルロに並んでいると聞いているが、それが戦闘力にも反映していた。


ルーディア値の成長は他のメンバーには及ばないけど、ファルマの成長はそんな数値じゃ説明できないところにあった。アローの正確性は、敵機の弱点を的確に狙う。おそらく格上の相手にも、あのピンポイント射撃は有効だと思う。


やはり天下十二傑は伊達ではない。清音の力はやはり一歩抜きん出ていた。無駄のない動き、神速とも言えるスピードで敵を斬り伏せる。


清音の強さに目を奪われるが、同じ剣豪団であったブリュンヒルデとトリスも素晴らしい動きをしている。やはり武術を真剣に学んでいた連中はどこか空気感が違う。安定した動きは、周りの味方に安心感を与えていた。


アーサーも最近、清音やブリュンヒルデに影響されて剣術の稽古に熱心だ。まあ、アーサーの使う武器はランスだけど、どこか共通するところがあるのか、戦い方に成長が見られる。前は突進一辺倒だったけど、今は機動力を生かした臨機応変な戦い方ができていた。


ラネルの姉さんであるユキハも、最近、集中してルーディア鍛錬に取り組んでいたこともあり、急成長をしている。元々戦闘センスはよかったようで、清音に稽古を付けてもらったことで化けたようだ。もはや一般的なライダーに囲まれても、遅れを取ることはないように見える。


エミナも成長しているはずだが、ラフシャルに強化してもらったアルテミスのステルスモードにより、その活躍を確認することもできなくなっている。影に隠れて、味方のフォローや、敵機の撃破をしていると思う。


「アリュナ、練習生を十機ほど連れて側面をつけ! アリュナの抜ける穴はペフーのギガンテスで埋めろ」


敵軍の隙を見つけたのでそう指示を出した。アリュナもその意図を理解したのかすぐに動く。


「あいよ。そこの練習生小隊、私についてきな」


アリュナの穴埋めを指示された練習生のペフーのギガンテスも、指示に従い前に出てきた。ギガンテスは超大型魔導機で、戦場では嫌でも目立つ。手柄を急ぐ敵機がその大型の獲物に向かって殺到してくる。ギガンテスは集ってくる虫を払い除けるように、近づいてきた敵機を跳ね飛ばしていった。


前方に気を取られすぎていた敵部隊は、アリュナの率いる遊撃隊に側面を強襲された。まさか横から攻撃されるとは思ってなかったようで、大きく混乱する。混乱した部隊は脆い。清音を中心にして、一気に敵部隊を殲滅していった。


「よし、第一陣は片付きそうだな」


しかし、それでも殲滅したのは敵のほんの一部だ。戦場全体を見渡すと、まだまだ無数の敵機が健在である。

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