第306話 開戦/ジャン
侵攻理由は、ルジャ帝国要塞への一方的な攻撃の報復と伝えられてきた。ルジャ帝国が最初に攻撃を仕掛けてきたことなどなかったことになっている。
「ずっるいよね。向こうから攻撃してきたのに」
ナナミが膨れっ面でそう言う。
「国の言い分なんてものは自分の都合だけで語ってくるからな。ルジャ帝国やヴァルキア帝国の歴史書には、堂々とアムリア連邦からの先制攻撃なんて記載されるだろうよ」
まあ、今は理由をとやかく言っている段階ではなかった。すでに、ルジャ帝国、ヴァルキア帝国、リュベル王国の連合軍はアムリア連邦の領土に侵入しようとしている。
「全員戦闘準備だ! 魔導機隊は出撃! ライドキャリアの砲門を開いていつでも放てるように準備しろ!」
「やっぱり勇太は間に合わなかったね」
アリュナが残念そうにそう言いながら格納庫へと向かう。
「ちょっと心配だよね」
敵の数の多さを見て不安を感じているのか、ナナミもそう言葉にする。無双鉄騎団のメンバーは皆ルーディアの鍛錬などでかなりの成長をしている。並みの敵など相手にならないほど強くなっているが、やはり戦力の要は勇太だ。強者になってもどこか不安に思うのだろう。
最初の戦闘が起こったのは、俺たちが布陣している場所からさらに国境に近い丘の上で、そこにはアムリア連邦の砦があった。敵の侵攻を見て、砦に設置されているバリスタから無数のアローが放たれた。
敵軍にアローが降り注ぐ。その攻撃を敵の魔導機はシールドを上にして防いでいる。被害は軽微のようで、なにもなかったかのように侵攻の歩みは止めない。さらに第二波が砦から放たれる。それも同じようにシールドで防いでいた。すぐに第三波の攻撃も放たれると思ったが、その前に砦に爆発が起こる。
誘爆するように砦が爆発に包まれ、設置しているバリスタが次々に破壊されていく。なにが起こっているのかよく見ると、敵軍のライドキャリアからの砲撃を受けているようだった。
「おいおい、なんだあの艦砲射撃は! サラマンダー主砲なみの射程と威力じゃねえか!」
バリスタの射程は500mほどで、サラマンダー主砲は1000mと倍の射程がある。威力も数倍は違い、攻撃の範囲も桁違いに広い。まともに打ち合えば勝負になるはずはなかった。砦は一方的な艦砲射撃で、すぐに無力化された。
「敵にもサラマンダー主砲なみの砲撃があるぞ! 魔導機隊はむやみに固まって近づくな!」
味方の全軍にそう伝える。
驚異的な砲撃だが、こちらにもサラマンダー主砲を搭載しているライドキャリアが100隻もある。魔導機による白兵戦に突入する前に、近づく敵軍にむけて一斉に砲撃が始まった。
こちらが敵の主砲に驚いたように、相手もまさかの艦砲射撃に動揺しているようだ。アローに対したのと同じようにシールドで防ごうとするが、サラマンダー主砲をシールドで防ぐのは無理がある。被弾した箇所から大きな爆発が起こり、周辺の魔導機が大きく吹き飛ばされる。
「砲撃を止めるな! 乱戦になる前に少しでも数を減らせ!」
魔導機同士の白兵戦が始まれば、砲撃できる場所は限定されていく。敵の数の方が圧倒的に多い、このまま白兵戦となればこちらが不利になるのは目にみえている。その前に少しでも敵数を減らしたかった。
かなりの敵魔導機を砲撃により撃ち減らしたはずであるが、あまりにも数が多すぎて、敵軍の規模が縮小しているようにみえない。その何かの群れのような塊は、アムリアの防衛線にゆっくりと接触する。
白兵戦が始まった。敵味方入り乱れて、魔導機同士の激しい戦いが繰り広げられる。ライドキャリは、支援の為に敵のライドキャリアに向けて砲撃を開始する。敵のライドキャリアも、その砲撃に対して応戦してきた。
「こんな戦いになるなんて誰が予想できたよ……」
魔導機同士の戦いの背後から、ライドキャリア同士が激しく砲撃戦を繰り広げる。どちらにも強力な砲撃があるとこうなるのかと学んだ。
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