第303話 専用機
アムリア連邦の上位魔導機が作られる魔導機製造所が完成した。製造所は十の工房に分かれていて、一度に十機の魔導機を製造することができる。
製造所ができたことで、暇そうにしていたレジナント大佐たち練習生たちも調整で忙しくなってきたようだ。
俺の専用機も基本機能の調整が終わり、次の段階へと進んでいた。
「勇太の専用機には四元素砲も実装するつもりだけど、もう少し出力の高い必殺兵器も採用しようと思う」
「四元素砲がサブウェポンなのですかラフシャル師匠!」
俺が反応する前に、ラフシャルの説明を熱心に聞いていたライザが驚きの声をあげる。
「そうだよ。クラス2のポテンシャルなら十分可能だし、シールド展開できる上位魔導機には四元素砲も効果が弱いからね。強力な敵機も粉砕できる必殺技が欲しいだろ」
「そりゃ、強い武器があるにこしたことはないけど……」
「実は長い時間をかけて理論を構築した凄いのがあるんだよ」
ラフシャルが凄いと言うくらいだから、よほどのものだろう。だけど、その凄いのを実装するにはかなりの調整が必要だった。コックピットに座って操作球を握る時間がかなり増えた。肉体的には疲れはしないけど、だんだん飽きてきて気疲れが酷くなってくる。もう限界と思い始めてきたころに、ようやく調整は終わった。
調整が終わると、機体に外装が取り付けられ始めた。外装の金属もラフシャル特注のもので、あらゆる攻撃に強いスーパー合金だそうだ。
「量産機にはコストが高すぎて採用を断念したレヒュルダイトを使用している。サラマンダー主砲くらいなら、シールド展開する必要もなく弾き返すくらいの強度はあるよ」
「サラマンダー主砲って、直撃すればハイランダー専用機を一撃で粉砕する威力があるんだよな!? それを食らっても平気なのか!」
「問題ないよ。さすがに四元素砲クラスの攻撃を受けたらシールド展開した方がいいと思うけど、それでもダメージは軽微だと思うよ」
四元素砲の攻撃を受けて軽微なダメージってどれだけだよ。
外装が取り付けられていくと、俺専用機の姿が現れ始めた。ぱっとした見た目はアルレオに似ているかな。カラーリングも白くしてくれているみたいだ。
「やっぱり勇太にはアルレオが似合うからな。他のデザインの方がよかったかい?」
「いや、これでいいよ」
アルレオが蘇ったみたいでなんだか嬉しい。使ってる時は感じてなかったけど、やっぱり愛着があったようだ。
渚の方の調整も順調に終わり、外装が取り付け始められた。渚専用機も俺の魔導機と同じレヒュルダイトを使用していて、かなりの強度になるようだ。
「うわ……かっこいいね」
渚専用機は渚のクセに生意気だと言いたくなるくらいに凄い仕上がりになっていた。まあ、スポンサーの依頼の品ということで、力を入れて作成したという感じだろう。色は真紅に金のラインがあしらわれて高級感がでている。形は少しだけ俺専用機に似ている。どうやら一緒にデザインしたから、よってしまったようだ。
「見た目だけじゃないよ。性能もこれまで作ったクラス3専用機の中でも最高の出来だと思う」
「だそうだ。よかったな、渚」
ラフシャルの言葉を聞いて、渚を茶化すようにそう言う。
「もう……こんな凄い専用機用意されて、私にこれからどうしろって言うのよ……」
「馬車馬のように働けってことだろ?」
「いやだな……本当にそうなりそう」
渚の気持ちはどうだろうと、これから渚とこの機体はアムリア連邦の守り神になるだろう。それぐらいの存在感はありそうであった。
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