第302話 コンセプト
シャルカの上位魔導機製造所は急ピッチで行われている。やはりテント生活をしている職員たちから苦情が出たのか、生活できる住居棟の建設が優先的に建てられた。何もないところから二日ほどで建てられたので、耐久性とか心配だ。
「リンネカルロのヴィクトゥルフの調整が今日から始まったみたい」
いつも俺の周りをうろうろしているリンネカルロがいないので渚に聞くと、そう答えてくれた。
「俺たちの専用機はまだなのか」
「同時に進めてるみたいだけど、もう少しかかるみたいね」
「さっさと作ってみんなのところに戻りたいんだよな」
「寂しくなったの?」
「いや、ちょっと嫌な予感がするんだよな……何とも言えない感じなんだけど、北から嫌な空気が流れてきてる」
「何それ? でも……勇太って昔から変な勘はよく当たるからね。もしかしたら本当に何か来るのかも」
無双鉄騎団の仲間たちがいるから大丈夫だと思うけど、やはりなんとも心配だ。
俺の願いが届いたのか、次の日には俺と渚の専用機の調整も始まった。いよいよ、俺の魔導機と対面である。
「なんだよ。パッとお披露目って言ってたのに、まだ骨組みが組み上がったばっかりかよ」
そう、どんな魔導機か楽しみにしていたのに、お披露目されたのはまだ骨組みで外装も出来ていない状態の魔導機であった。
「当たり前でしょう。調整前に外装なんて取り付けたら手間になるだけじゃないの、見た目なんて最後の最後よ」
まあ、確かにそうだな。ライザの言うことに納得した。
「調整ってどうすればいいんだ?」
「コックピットに座って、操作球を握ってくれればいいんだって」
「それだけ?」
「そう、あとはその都度指示するから」
言われるままに、俺は剥き出しになっているコックピットに座って、操作球を握った。
調整って何をするかと思っていたけど、俺は本当に何もしないで、操作球を握るだけだった。俺が動かない代わりに周りのラフシャルやフェリ、それにメカニック班は忙しそうに計器を見たり、メモをしたり部品をいじって忙しそうにしている。
「どうだった渚」
俺の後に調整をしていた渚が戻ってきたので様子を聞いた。
「どうって、操作球を握ってただけよ」
「やっぱりそうか」
「これじゃ、どんな魔導機になるか今の時点では全然わからないわね」
「そうだな。まあ、それは後の楽しみに取っておくか」
機体不明の俺たちと違って、ヴィクトゥルフはどんな機体か分かっているので、リンネカルロはちょっと余裕の表情だ。
「私のヴィクトゥルフはもう、だいぶ調整が進んでいますわよ」
すでに自分の機体の認識が芽生えているようで、そう言っているが、そうなるとオーディンはどうするつもりなんだろうか。
「ヴィクトゥルフは前との違いはあるのか?」
「フフッ、もちろん、とっておきの機能が追加されますわよ!」
「空飛んで、四元素砲ぶっ放せて、他に何がいるんだよ」
「それは後の楽しみですわ」
結局、リンネカルロは勿体ぶって教えてくれなかったけど、後でラフシャルと話をした時にこんなことを言っていた。
「勇太たち、三人の専用機のコンセプトは、リンネカルロは遠距離攻撃型。渚は近接戦闘型、勇太は万能無双型だよ。まあ、細かくは調整しながら考えていくけど、方向性はそんな感じになると思うよ」
「万能無双型ってまたよくわからないな」
「クラス2のポテンシャルを活かすにはそれくらいのコンセプトじゃないとダメだろうからね。どんなこともできる万能最強の魔導機を作ってみせるよ」
ラフシャルのことだから凄いものを作るだろうけど、具体的なイメージは浮かばなかった。
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