第298話 コア生成/ライザ

「メカニック班は全員集合!」


私の号令で、オビワン、ダルム、バルムを中心に、メカニック助手として新たに雇った十人の作業員が集合する。


「今日は無双鉄騎団、メカニック班にとっては記念する日になります!」

そう宣言すると、ざわざわとざわめきたつ。

「記念する日って、俺たちメカニック以外は全員、休みなんですよね? それが関係してるんですか?」

「まあ、あの馬鹿どもの留守中だというのは無関係ではないけど……あっ、アリュナ様は除く馬鹿どもです」

「具体的になにがあるんですか?」

「おほんっ。え~ラフシャル師匠と相談して、邪魔な連中がいない今日、この日に、初のルーディアコア生成をおこなうことになりました!」


おおおぉおお~と全員がことの重大さに気が付いたようで大騒ぎになる。

「ちょっ、ちょっと! ルーディアコアの生成はデリケートな作業らしいから、見学は許してくれたけど、黙ってみてるだけだからね。今みたいに騒がないように」


みんなルーディアコアの生成には興味があるようで、静かに見ているように言った私の指示を承知したようだ。


ルーディアコアの生成は、フガクの格納庫の中に作った簡易の無菌室でおこなわれる。無菌室は透明のシートで覆われていて、ラフシャル師匠とフェリ以外は外からの見学となった。


「フェリ。オリハルコンを物質変換させるから、熱量に注意してくれ」

「計器に異常はありません。熱量は20GJまで上昇。ラフシャル、もう少し変換をゆっくりして」

「わかってる。だけど、これはクラス2用コアだから、多少無理しても圧縮率をあげたい」

「だったら中和剤の量を増やして、今のままだっと熱暴走するわよ」

「もちろん、この日の為に新しく開発した中和剤を用意していたんだ」


ラフシャルはそう言いながら容器に入った液体を変換中の機械に入れた。


「驚いた……熱量は上昇しているのに、温度の上昇が止まった」

「このままオリハルコンの変換量を増やしていくよ」

「まだ増やすつもり⁉ もう、ゆうにクラス3のコアの質量を越えてるわよ」

「限界まで行く。勇太専用の機体にふさわしい出来栄えにしたいんだ」

「……わかった。だったらとことんやりましょう。私が他の作業を進めるから、あなたは変換に集中しなさい」

「さすが、フェリ、君がいてくれてよかったよ」

「あなたの為じゃありません。勇太の専用機のコアだから協力するんです」

「わかってる。最高のルーディアコアを作ろう」


作業を見ていてわかったのだけど、ルーディアコアの生成技術は錬金術に近いことに気が付いた。前に師匠が言っていたけど、魔導機は機械工学、魔法理学、精霊術、それと錬金術、全ての技術が集まった結晶だと、言っていたけど、今ならその言葉の意味を少しは理解できるかもしれない。


それにしてもやっぱりあの二人は凄い……全ての作業がイメージできているのか、無駄のない動きで進める。作業の大半は何をやっているのかも理解できないけど、技術者として一流なのは誰の目から見てもあきらかだ。


「よし、できたぞ」

「素晴らしい出来栄えね。それなら強力なスペルをいくつも刻み込めるわね」

「シエトラの為に、初めてクラス3用コアを作成した時以来の充実感だよ」

「初のクラス3専用魔導機、ラルフェンね。あれも傑作だったけど、今回の勇太のコアはあれを凌駕しているわね」

「クラス2用だから、スペックが段違いだよ。どれだけスペルを刻めるか楽しみだよ」


ラフシャル師匠は嬉しそうにそう話している。話を聞いていると、コアはまだ完成ではなく、ここからまだ作業が必要だそうだ。メカニック班の全員がさらなる作業に心を躍らせる。これからどんな作業をするか目を輝かせて注目した。

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