第297話 街ブラ
休暇を過ごしていた俺たちは、街をうろついていたのだけど、リンネカルロやアリュナがお気に召すお店が少なく、本当にブラブラするだけで時間が過ぎていた。
「碌な店がありませんわね」
密かに買い物を楽しみにしていたのか、リンネカルロは本当に残念そうにそう言った。
「そりゃ、仕方ないかもね。ここは連邦の軍関係者の為にできた街だから、そもそも、女性客に対する需要がないんでしょうから」
「あら、軍関係者には女性も多いわよ」
「絶対数は少ないからね。やはり、ああいった店の方が売り上げはあるだろうからね」
アリュナは裏路地のちょっと怪しい通りに並ぶ大人な雰囲気の店を見ながらそう言う。
「ね~ね~。あの店は何するとこなの?」
純粋な好奇心でナナミがアリュナに聞いた。
「ありゃ、男のストレスを発散してくれる店だよ。何をするかは店によるんじゃない」
「そうなんだ。男のストレスを発散してくれるんだったら、勇太も行ってくればいいのに」
ナナミの言葉にアリュナとリンネカルロ、それに渚が反応した。
「絶対ダメ!!」
凄い剣幕で怒鳴られたので、意味がわからないナナミは本気で驚いて半べそをかいてしまった。
「うっ……だって、勇太はいつも忙しそうにしてるし……ナナミは心配だから……癒して欲しいもん」
俺の為に言ってくれたんだろ思うと、やっぱり少しジンとくる。俺はナナミの頭に手をのせてこう言った。
「ありがとう、ナナミ。だけど、俺は別に今の生活嫌じゃないし、そんなにストレスも溜まってないよ」
「ほんと?」
まあ、疲れはするけど、やっぱり仲間に恵まれているのか、本当にストレスはそれほど感じていない。
「ああ、本当に大丈夫だ」
そう言ってやると、ナナミは良い笑顔に戻った。
「それより、渚。私の本能がダメだと警告してたので咄嗟に拒否しましたけど、具体的にあの店って何をするところですの?」
リンネカルロが小声で渚に確認する。アリュナに聞かなかったのは変なライバル心があるからだろう。
「ええ! 具体的にって言われても……私もわかんないよ」
「そうですの? 凄く強く反対してましてけど」
「私も、もわっとした知識があるだけだから……アリュナに聞いてみたら?」
「嫌ですわよ。そんなのも知らないのかと馬鹿にされますわ」
二人ともコソコソ話をしているつもりのようだが、俺にも聞こえてるくらいだから、もちろんアリュナにも聞こえていた。
「全部聞いてたよ。なに、リンネカルロ、あんた、そういう知識全然ないの?」
「わっ……悪かったですわね」
「まあ、それじゃ教えてあげる」
そう言いながらアリュナはリンネカルロの耳元に顔を近づけ、コソコソと何かを説明し始めた。それを聞いていたリンネカルロの顔がどんどん真っ赤になっていく。
「そっ、そんなことまでするのですの!!」
どんなことまでだと気になるが、さすがに小声すぎて聞こえない。
「アリュナ、リンネカルロだけずるいよ、ナナミたちにも教えてよ」
ナナミ、ファルマ、ヒマリの三人が好奇心いっぱいの顔でアリュナに聞く。
「ダメだよ。あんたらにはまだ早い」
「ええ~どうして~」
「どうしてもだよ!」
アリュナはちゃんと説明できないのかお茶を濁した言葉で誤魔化している。
「それより、お茶にしない? 私、歩き疲れちゃったよ」
しつこく三人に迫られるアリュナに、渚が助け船を出した。
「そ、そうね。そうしましょう」
もう、どこでもいいのだろう。近くにあった店に飛び込むように入った。
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