第296話 休暇

魔導機採掘場の確保と、ルジャ帝国の要塞の攻略が完了した。練習生の成長も確認できたし、アムリア連邦軍の軍事強化は順調だと証明された。


そんな中、珍しくジャンが気を遣ってこう言ってきた。

「明日は完全休暇にするぞ。みんな臨時のお小遣いをやるから遊んでこい」

丸一日仕事のことを考えなくていい時間ができるのはありがたい。しっかし、ジャンは飴と鞭の使い方が露骨だよな。唐突だし、もう少しバランスも考えて欲しいものだ。


俺たちライダーや船員たちは全員休暇になったけど、ラフシャルたちメカニックは休みはないそうだ。ジャンはたまには休めよと言ったんだけど、メカニックは全員、そんな暇は無いと断ったらしい。どれだけ働き者なんだよと思ったけど、ジャン曰く、どうやら今の仕事が楽しくてしかたないから休むのがもったいないと思ってるとのことだ。



「それにしても、私もお小遣い貰ったけどいいのかな……」

ジャンは気前よく、正式な団員ではない、渚やユキハにもお小遣いを振舞っていた。

「いいんじゃないか。結構こき使われてるし、貰って当然だ」

「そっか。じゃあ、遠慮なく貰っとこ」

渚はどこか嬉しそうだ。そんなにお金に困ってるとは思えないけど、連邦から給料でてないのかな。

「そうだ、勇太。この後、どっか出掛けようよ。せっかくの休暇だし、ブラブラしよう」

「そうだな、別に予定がないからいいぞ」

そう答えた瞬間、後ろから抗議の声があがった。


「え~渚とだけずるい~ ナナミもお出掛けしたいよ!」

今の会話を聞かれていたようでナナミが拗ねたようにそう言ってきた。

「だったらナナミも一緒にくればいいだろう。人数は多い方が楽しいし」

人数が多い方がいいというのは失敗した。ナナミはその言葉を真に受けて、ファルマとヒマリも誘ってついて来た。



「まるで妹たちを連れて出かけているお姉さんになった気分ですわ」

きゃぴきゃぴと騒ぎながら街をブラブラするナナミ、ファルマ、ヒマリの三人を見て、リンネカルロが愚痴る。

「文句言うなら、フガクに残ればよかったんじゃないの」

アリュナがそんなリンネカルロに指摘する。

「仕方ありませんわ。休暇日は一日しかありませんもの」


なぜか当たり前のようにアリュナとリンネカルロも付いて来ている。まあ、リンネカルロの言うように休暇は一日しかないから、みんで楽しく過ごすのも悪くはないだろう。とっ、俺は思っているのだが、渚は少し機嫌が悪い。

「なんだよ、お腹空いたのか?」

「ちっ、違うわよ。ちょっと久しぶりに勇太と二人で出掛けるのもいいなって思ってたから」

どうやら渚は久しぶりに俺と二人で出掛けたかったようだ。まあ、確かに渚とは子供のころから当たり前のように一緒に出掛けていたから、その気分に戻りたかったのだろう。

「まあ、渚の気持ちもわかるけどな、みんなも大事な仲間だし、ここは我慢してくれ」

「私の気持ちがわかってるの?」

「当たり前だ。久しぶりに幼馴染みとの水入らずを味わいたかったんだろ? わかってる、わかってる。まあ、それは次の機会を作るから待ってなさい」

「もう……やっぱりわかってないじゃない」

「じゃあ、なんだよ」

「……なんでもないわよ。ほら、アリュナとリンネカルロが険悪になってるわよ。止めなくていいの?」


渚の言うように、いつの間にかアリュナとリンネカルロが言い合いをしている。俺は慌てて止めにはいった。

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