第291話 茶会

俺とラネル、それと渚の三人でお茶をする予定が、なぜか気が付けばアリュナやリンネカルロなども加わり、騒がしい会へとなっていた。


「アリュナ、昼間っから酒かよ」

「いいだろう。苦いだけのお茶より、しっくりくるんだよ」

「本当に節操がない人ですわね。私のスペシャルドリンクを分けて差し上げてもよろしくてよ」

「そんな気持ち悪いモノ、飲みたいくないね」


リンネカルロのスペシャルドリンクは、アリュナの言うように得体のしれない色と匂いがしていて、俺もできれば遠慮したい。

「リンネカルロ、ナナミ飲みたい!」

「ナナミにはちょっと早いですわ。これは大人の飲み物ですのよ」

大人も飲みたいとは言わないと思うけど……。


「それで、これは何の会なの?」

よくわからない状況に渚がしびれを切らして言い出した。

「ラネルの歓迎会だろ?」

「あっ、そうなんだ。ナナミはてっきり誰かの誕生日会かと思っていたよ」

「違いますわよ、午後の茶会ですわよ」


みんな適当に発言するな。まあ、リンネカルロが一番近いと思ったけど肯定するとまた面倒くさいのでスルーした。


「勇太さん……」

悲壮感を漂わせ、ラネルが俺を見つめてくる。


「どうしたラネル? 楽しくないのか?」

「いえ……そうですよね。そもそもフガクでお茶となるとこうなりますよね。タイミングを間違った私が悪いです」

何かを納得したようにラネルが言う。やっぱり人数が多いのが気に入らなかったのかな?


「あっ、そう言う事か……全部、勇太が悪いのね」

渚が何かに気が付いたようでそう言ってきた。

「なんだよ。俺のどこが悪いんだ?」

「全部よ! この鈍感男!」


何を責められてるのかわからないけど、渚は理由もないのに俺を怒ったりしない。もしかしたらラネルの気を悪くさせてしまったのかもしれない。

「なんか、ごめんラネル……」

「いえ、いいんです。でも、勇太さん……今度は二人でお茶してもらますか」

やっぱり騒がしいのが嫌だったみたいだ。俺は笑顔でそれを了承した。


「おう、やってるな。丁度いいから作戦会議もするぞ」

ジャンはそう言いながら空いてる席に座って紙を配り始めた。

「ジャン、仕事の話は終わったんじゃないのかい? 今はプライベートなお茶会だよ」

「まあ、そんな固いこと言うなよ。やること多すぎて時間がねえんだよ」

確かにここ最近のジャンは忙しそうだ。稼ぎ時だと商人の勘が働いているのか凄い勢いで何かをしている。

「おい、ナナミ。エミナたちも呼んできてくれ」

ここにいないメンバーを呼んで本格的に何かを決めるようだ。



「ルジャ帝国の要塞攻略戦を練習生の実践演習にするつもりだって!」

ジャンの説明に、実際に練習生を指導している教官連中から驚きの声が上がる。

「そうだ。俺たちで要塞を潰すのは簡単だが、せっかくなので練習生の強化材料にしようと思う。実戦で得るものは多いだろうし、もったいないからな」

「まあ、確かに練習生たちもかなり強くなってきたから大丈夫だと思うけど……」

「もちろん、俺たちでサポートはする。不測の事態が起こったら遠慮なく出張って解決してOKだ」


それならとアリュナたちや清音も同意する。

「ラネルはどうなんだ。自分のとこのライダーに、そんな無茶させて平気なのか?」

俺が聞くと、ラネルはお茶をゆっくり飲みながらこう答えた。

「無双鉄騎団がサポートするなら問題ありません。それによってライダーたちの糧になるなら、こちらからお願いします」

どれだけ俺たちを信頼してるのやら……。


要塞攻略もそうだが、魔導機発掘の為の準備も必要になる。人員の確保に機材の調達、その辺は連邦政府に準備してもらわないといけなくなるけど、大丈夫なのかな。


「すでにその辺りは手配しています。三日ほどで整う予定になっています」

さすがはラネルだ。すでに準備を進めているようだ。


それから具体的なサポート計画やら、担当などの話をした。すでにみんなお茶会だったことを忘れてあーだーこーだと議論がはじまった。

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