第290話 魔導機採掘
正式に量産型魔導機の生産が承認され、動き始めることになった。しかし、一つだけ問題があり、その課題をクリアする必要があった。
「量産機に転用するルーディアコアが圧倒的に足らない」
ルーディアコアを製造するには大量のオリハルコンと鳳凰石が必要になる。昔は大量に取れたそうだけど、今では枯渇していて高価なうえに確保するのも難しい。その為に、量産機には発掘した古代時代の魔導機のルーディアコアを転用することになっていた。しかし、予想より規格に合うコアが確保できそうにないことが判明して、ジャンが頭を抱える。
何かの資料を見ながらブツブツと言っているジャンに、俺は聞いた。
「どれくらい足りないんだ?」
「連邦内の魔導機採掘所の作業効率を上げても三割ほどしか確保できそうにない」
「予定の七割も足りないのか?」
「しまったな……ラフシャルが量産機に使うルーディアコアの規格は一番生産されたものだからいっぱい取れるよって言ってたから、それほど気にしてなかったんだけどな……」
「確かに一番多く使われている規格ですけど、それは大陸全体での話ですからね。この辺りの地域では、複数の規格を満遍なく使用していましたので、割合が低いのでしょう」
ジャンの愚痴をフェリが的確に説明してくれた。こういった知識はラフシャルよりフェリの方があるみたいだな。
「他の国ではたくさん取れるんだろ? 輸入とかできないのか?」
俺の言葉にジャンがすぐに反論してきた。
「馬鹿野郎、それだと金がかかりすぎるし、敵国に勘繰られるだろうが」
確かに量産機にコストがかかりすぎるのは問題だ。
「待ってください……この場所の近くにイバ防衛線跡がありますね」
地図を見ながらフェリがそう言ってきた。
「イバ防衛線?」
「はい。古代文明と巨獣との戦いの激戦区です。ここには50万機を超える魔導機が眠っているはずです」
「50万機だと! それだけあれば規格に合うコアも大量に発掘できそうだな! ちょっと正確な場所はどこなんだ?」
ジャンがフェリの見ていた地図を覗き込んでそう聞いた。
「ギリギリ連邦の領地内だな。しかし、ルジャ帝国の要塞が目と鼻の先にあるか……」
敵の要塞の近くで呑気に発掘させてもらえるとは思えない。ぜったいに邪魔されるだろう。
「戦争になる可能性もあるし。こりゃ、ラネルに相談だな」
忙しいラネルに時間を取ってもらうのは難しいことだと思ったけど、俺が少し話があるんだけど……と伝えたらすぐに飛んできてくれた。
「新しい魔導機の採掘場所の確保ですか……」
ラネルに現状を説明すると、なぜか残念そうにそう言う。
「連邦の領地内だから問題はねえと思うけど、すぐ近くにルジャ帝国の軍事要塞があるんだよ。まあ、そんなの無双鉄騎団で潰すのは簡単だけど、戦争になっちまうからな。それであんたに相談してるってことだ」
ジャンが補足するようにそう説明する。しかし、一国の要塞を潰すが簡単とは……無双鉄騎団も力をつけたものだ。
「アムリア連邦の軍事理念は専守防衛が原則です。ですから、こちらから要塞を攻撃することは許可できません」
「まあ、そんなこったろうと思った。しかしよ、向こうが攻撃してきたら反撃してもいいんだろ? 反撃で要塞をしばらく使えないようにぶっ壊しても問題ないよな」
ジャンのその言葉を聞いて、ラネルは深い溜息を吐く。
「確かに問題ありませんけど……ああ……そうなったら完全に戦争になりますね……」
ラネルは基本的には戦争が嫌いなので反対したいようだけど、国益の為には仕方ないと判断したみたいだ。
「勇太さん、せっかくなのでお茶でもしませんか」
仕事の話が終わると、ラネルがそう誘ってきた。まあ、予定はなかったのでOKする。そうだ、ラネルと友達である渚も誘ってやろう。そう思って、部屋にいた渚に声をかけた。
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