第276話 今後のこと
今後のことも考える為に、アリス大修道院で一旦落ち着くことにした。フガクとムサシは麓で待機させ、俺たちはアリス大修道院、本院へとやってきた。
「マザー・メイサ、これからどうするのですか」
ヴァルキア帝国だけではなく、リュベル王国も禁書ラフシャル・ウェポンを狙っていることがわかった。強大国である二国を相手に、アリス大修道院が生き残るのは難しいと思われる。
「私たちにはアリス様のご加護があります。きっとこの苦難も乗り越えられるはずです」
そんな万能なご加護があるんなら、そもそもこんなことになってないと思うんだけどな……。
「しかし、現実問題、国家レベルでの保護がなければ長くは持たないと思います」
清音の言葉に、マザー・メイサは悲しい表情でこう答えた。
「ですが、リュベル王国にまで狙われているとなると、助けてくれる国はないでしょう……対抗できるとすればエリシア帝国くらいでしょうが、皇帝が亡くなって新皇帝になったエリシア帝国は様子がおかしく、とても中立組織に手を貸すような雰囲気はありません」
「アムリア連邦を頼ったらどうですか」
会話を聞いていた渚がそう提案する。確かにアムリア連邦も大国の一国だ、ラネルならちゃんと話を聞いてくれるだろうし、話す価値はあるだろう。
「アムリア連邦ですか? 確かに大国ですし、願ってもない相手ですが、新興国ということもあってアリス大修道院とパイプが薄いです。しかも三強国の二国を相手にすることになると分かっていて助けてくれるでしょうか……」
「ダメだったらその時別のプランを考えればいいだろ。とりあえず交渉してみてはどうだ?」
久しぶりにジャンらしい考え方を聞けてなぜか嬉しくなる。さらに一押しする為にこう提案した。
「話なら俺からしようか? あまり戦争の好きな子じゃないけど、アリス大修道院の事情を聞いたら助けてくれると思うよ」
「アムリア連邦の高官の誰かとお知り合いなのですか?」
「高官というか、国家元首とホットラインがあるから話ができる」
「国家元首とホットラインですか!? 勇太様は一体何者なのですか……」
とりあえずラネルには俺が話をすればいいとして、当面の守りをどうするかだな、幸いにもダイラム伯爵の部下の戦死者は、破壊された魔導機の数から考えると想像以上に少ない。ライダーの数はいるので、魔導機を修理すれば戦力は復活する。俺はラフシャルに話をして、ダイラム伯爵隊の魔導機を修理してくれるように頼んだ。
「それにしても、どうしてアリス大修道院はそんなに狙われているんだ?」
一仕事終えて、へとへとになっていたので、俺は本院の地下温泉に入らせてもらっていた。温泉と聞いて付いてきたジャンが温泉につかりながら、そうぼやいた。
「ヴァルキア帝国も、リュベル王国も、ここにある禁書ラフシャル・ウェポンが欲しいそうだ」
「禁書ラフシャル・ウェポンだと……おい、ラフシャル。お前、知ってるか?」
ダイラム伯爵隊の魔導機を直す前にと、リフレッシュの為にと、めずらしくラフシャルも温泉にやってきていた。ラフシャルはジャンの質問に、少し考えるとこう答える。
「確か、学生の時に書いた論文にそんなのがあったと思うけど、その時はまだラフシャルじゃなかったしね……なんだろう、僕もわからないな」
「後でみせてもらえよ」
「そうだね、みると思い出すかもしれない」
今、一緒に温泉を堪能しているのは俺とジャンやラフシャルだけでなく、無双鉄騎団の男性陣が勢ぞろいしていた。何気なく今後、どうするかという話になる。
「それで、勇太、これからどうするんだ。聞いた話だと、剣聖を生き返らすなんてとんでもないこと考えてるみたいだけどよ」
「オヤジにはお世話になったから、できれば蘇らせたい」
「まあ、お前がそういうなら無双鉄騎団としても動くしかねえけどよ、ちょっと一つだけ問題がある」
「なんだよ、その問題って?」
「無双鉄騎団は深刻な資金不足に陥っている」
「ええ!! お金ないのか? メルタリアや、アムリアからお金は入ってるんじゃないのか?」
「確かに入金は悪くないのだが、出金が想像以上に膨れがっていてな……」
「何に使ってるんだよそんなに!」
「ラフシャルがフガクにとんでもない主砲を取り付けたり、何も考えずに高価な素材をバカみたいに使って魔導機を強化したりと、やりたい放題なんだよ!」
確かにあの主砲とか、みんなの魔導機の強化具合をみれば、お金がかかっているのは理解できる。
「仕方ないだろ。ルシファーに対抗するには無双鉄騎団の強化は必須なんだから」
話を聞いていたラフシャルが反論する。
「だからって、考え無しに使いすぎだ! 10億あった資金が、もう一千万くらいしかないんだぞ!」
「まだまだお金はかかるよ」
「まだかかるのかよ!」
「まだ、強化の1%も達成してないからね」
「たく……とんだ貧乏神だな」
しみじみというジャンは心底困り果ててる様子だ。ジャンの商才も、ラフシャルの金遣いの荒さにはかなわないようだ。
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