第275話 蘇生するには
アリス大修道院から敵が撤退して落ち着くと、あらためて無双鉄騎団と合流した。久しぶりのフガクは何も変わってなかった。
「勇太! どこで何してたか説明しなさい」
渚が俺の顔を見るや否やそう詰め寄ってくる。
「その話は後だ。ちょっと色々やることあるから待ってろ」
「何よ、その言い方! 人が心配して探してあげてたのに!」
どうやら俺が行方不明になってたのを心配して探すのを手伝っていたようだ。その気持ちは嬉しいが、今は優先することがある。みんなとの感動の再会を喜ぶ前に、会わないといけない人物を探した。他の仲間たちにも見つかりワラワラと周りを囲まれるなか目当ての人物を見つける。
「ラフシャル! ちょっといいか」
「あっ、勇太。僕も用事があるんだ。君にはルーディア強化の特別プログラムを──」
「そんなのは後だ! ちょっとムサシにきてくれるか」
まだなにかブツブツ言っているラフシャルを連れて、一度ムサシへと戻った。ムサシのオヤジの眠っている医療カプセルの前に連れて行ってこう聞いた。
「ラフシャルなら、この人を生き返らせたりできないか?」
その場にいた清音が泣きそうな表情でラフシャルの言葉を待っている。ラフシャルはカプセルの中をよく見てこう言った。
「勇太、すぐに医療カプセルで冬眠モードで保管したのは正解だ。死亡して時間が経過すると、蘇生は難しくなるからね」
「それじゃ、生き返るのか!」
「勇太……命とはそんなに軽い物じゃない。一度失った命を取り戻すのは簡単なことじゃないよ」
「どっちなんだよ! 生き返せるのか、生き返せないのか!」
「結果から言うと蘇生は可能だ」
それを聞いて清音が膝をついて泣き崩れる。俺も心から喜んだ。
「だけど、蘇生にはいくつかの条件があるんだ。その条件を揃える必要がある」
「言ってくれ! どんな条件でも揃えるから!」
「まずは場所だ。蘇生には高度なアストラルメディカル施設が必要で、そこじゃないと蘇生は不可能だ。また、施設を動かすのに膨大なエネルギーが必要になる。さらにいくつかの錬金素材が必要なのでそれを用意しないとダメだ」
ちょっと大変そうだけど、オヤジを生き返らせる為だ。なんとかしようと心に誓った。
「高度なアストラルメディカル施設って言われても見当がつかないな」
「一から作ってたら何十年もかかるから、既存の施設が必要だからね。昔の施設で使えるところがあればいいんだけど……そうだ。フェリなら知ってるかもしれない。勇太、フェリを回収しているだろ、どこにあるんだ」
「あっ、そうだ。その用事もあったな」
俺はそう言いながらバックパックからフェリを出してラフシャルに渡した。
「今、あの魔導機に乗っているんだろう。あれにフェリを接続していいか」
「あっ、でもエクスカリバーは借り物だからな……」
そう言ったが、清音がすぐにこう言ってくれる。
「いえ、父上が蘇るまでは、エクスカリバーは勇太のものです。好きに使ってください」
まあ、オヤジが復活したらまた移動させればいいか。そう思い、エクスカリバーへフェリを接続してもらうようにラフシャルに頼んだ。
「フェリ、聞こえるか?」
「はい、勇太。お久しぶりですね」
エクスカリバーの外部出力音からフェリの声が聞こえる。しかも久しぶりって感覚があるんだと、少し感動する。
「その久しぶりの会話でこんなこと聞くのはあれだけど、今でも使えそうな高度なアストラルメディカル施設ってのに心あたりないか?」
「アストラルメディカル施設ですか……一つだけ有力な場所を知っています」
「どこにあるんだ、それは!」
「緯度-5.441022、経度-56.601562、辺りにある、古代文明の研究施設です。地下深くにあるシェルター内にある施設ですので、現存する可能性は高いです」
さすがはフェリ、博学だ。すぐに候補の情報を教えてくれた。
「緯度-5.441022、経度-56.601562か……現在の位置だとリュベル王国の東部あたりかな」
「リュベル王国!? さっきまで戦っていた国じゃないか!」
完全に敵対してしまった国だけど、大丈夫だろうか……お願いして施設だけ使わせてもらうってのも虫のいい話のように思えるけど……。
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