第261話 新たなる最強/渚

無双鉄騎団の旗艦、フガクから魔導機隊が一斉に出撃する。メンバーはリンネカルロ、ナナミ、アリュナ、エミナ、アーサー、ロルゴ、ファルマ、私、ユキハの全九機だ。


「無双鉄騎団には、我が軍の二個大隊と一緒に、敵左翼の部隊を叩いて欲しい」

ターミハル軍の依頼に、ジャンが応える。

「了解した。リンネカルロ、アリュナ、聞いての通りだ。敵左翼を叩くぞ」

その通信を聞いて、私たちは敵左翼へと向かった。


「こら、ナナミ、そっちは逆だよ」

「え! 左だよね」

「バカ、敵の左翼は私たちからみたら右側よ」

「あっ、そうか」


激しい戦いの前なのに、無双鉄騎団の面々はいい意味でリラックスしている。絶対的な自信があるから余裕があるのか、悲壮感など微塵も感じない。こういう人たちは強い。武道の経験から私はそれを知っている。


戦闘が始まると、無双鉄騎団は陣形が自然と形成されていた。前衛としてナナミ、ロルゴ、アリュナの三人が敵の攻撃を抑え込む。後衛からはリンネカルロとファルマが強力な遠距離攻撃を放つ。アーサーとエミナは遊撃隊として、前衛、後衛の両方をサポートしていた。個々の力も素晴らしいのだが、連携も見事なもので、少数で大部隊の敵軍を圧倒した。


「渚、無双鉄騎団ってなんなの。あの強さは異常だわ」

ユキハが率直な感想を言う。私もそれには同意する。


しかし、私も負けていられない。連携の邪魔にならないように、敵の崩れた陣形からはみ出してきた敵機を狙う。


長槍の攻撃を避けて相手の懐に入ると、首を捻ってねじ切る。首がなくなった敵機は近距離の体当たりで押し倒した。


間髪入れず襲ってきた敵機の、水平に振られた剣の攻撃をしゃがんで避けると、剣を持つ敵の手を取り捻る。そのまま押し倒そうとしたのだが、敵の腕が根元から引きちぎれた。仕方ないので腕が無くなった敵機を蹴り倒す。


どうやらルーディア鍛錬の効果がでているようで、前より遥かにパワーが上がっている。戦いながら調整しないと……。


「さっきの無双鉄騎団の強さが異常だって言葉に追加するわ。渚、あなたの強さも十分異常よ」

ユキハからしたら私の動きも十分、異常に見えるようだ。


無双鉄騎団の驚異的な強さに押されて、敵軍は後退を始めた。友軍であるターミハル軍が逃がすものかとその敵軍の側面に襲い掛かる。無双鉄騎団に叩かれて陣形が崩れ、士気が大きく下がっていた敵軍は、ターミハル軍の攻撃に対応できなかった。組織的な攻撃が個々の反撃を圧倒する。


「チャンスだな、敵左翼の指揮官を狙うぞ。アリュナ、渚を連れて敵軍中央のライドキャリアを叩いてくれ。リンネカルロ、アリュナたちの道を作れ」

ジャンが好機と見たのかそう指示をだした。


「あいよ。渚、リンネカルロの攻撃が終わったら走るよ!」

「はい!」


リンネカルロが大きく動作を始めたら、無双鉄騎団の仲間たちは彼女から離れる。何をするつもりなのだろうか……。


「ルーディア値の上昇と、ラフシャルによるオーディンの強化で可能になった新魔導撃ですわ……存分に味わいなさい! グングニル・レイガン!!」


オーディンの周りに無数の光の槍が出現する。それが前方の敵軍に向かって、まるでレーザービームのように放たれた。


光の槍は次々と敵機を貫いていく。一つの光だけでもかなりの破壊力なのだが、それが無数に襲い掛かってくる恐怖は想像を絶する。直線的で強力な攻撃は、文字通り、敵軍中央のライドキャリアまでの道を作った。


「走るわよ、渚!」

「はい!」


アリュナと一緒に、敵のライドキャリアに向かって走った。リンネカルロの攻撃であぜんとする敵軍からの反撃はない。難なくライドキャリアまで到達した。


ライドキャリアは接近された魔導機相手には何もできない。その為に防衛の魔導機隊を配置しているのが普通である。このライドキャリアにも守備の為の防衛隊がいた。その数は五機。


まずはアリュナの双剣が二機を瞬殺する。私も太刀を抜いて一機の首を飛ばした。残りの二機は、一瞬で仲間の三機を倒されたことで、恐怖を感じたのか逃げ出した。だけど、目的はこのライドキャリアなので追う必要はない。私とアリュナはライドキャリアのコアブロックに侵入してそれを破壊した。


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