第260話 傭兵として/渚
勇太がいるかもしれない剣豪団の情報を入手した。どうやら剣豪団は三国同盟の一つ、ターミハルという国へと向かったそうだ。
「剣豪団が三国同盟に向かったとなると、大きな戦争が起こる可能性があるわね」
エミナの言葉に対してアリュナが質問する。
「それはどういうこと?」
「剣豪団は反エリシアの筆頭勢力と言われているのよ。対エリシア連合の三国同盟
に呼ばれたのならそういうことでしょう」
「エリシア帝国と三国同盟の戦争か……これ以上ないくらいに金の匂いがする案件だな。まあ、今回はあのバカ勇太の回収が先決だからなるべく関わらないようにするがな」
ジャンの判断に感謝する。今は勇太を見つけるのに集中して欲しい。
それから剣豪団を追ってターミハルに入国した。入国してすぐに、ターミハル軍が接触してくる。
「こちらはターミハル軍、監視艇。そちらはどこの所属のライドキャリアですか。我が国への入国の理由と所属を教えてください」
フガクに近付いてきたライドホバーから、かなりの音量の外部出力音でそう聞いてくる。
「こちらは傭兵団の無双鉄騎団。貴国に敵対する意思はない。剣豪団がこちらに入国したと聞いて追ってきた。できれば剣豪団の所在を教えて欲しい」
「無双鉄騎団。敵対意思のないことは了解した。しかし、残念だが軍事行動に関係する情報は教えられない」
「わかった。では貴国内で行動する許可を頂きたい」
「今は戦時中の為、その許可も出すことはできない。すみやかに国外へ退去して下さい」
ジャンは向こうの対応に少し考えると、こう話を切り出した。
「それでは軍の上層部にこう伝えてくれ。強い傭兵団を雇う気はないかと」
ジャンたら、なるべく関わらないって言ってたのに……。
「──少し待たれよ。上層部に確認する」
その返事を聞いたジャンは、外部出力音を一旦切った。
「ジャン。なるべく関わらないんじゃなかったのかい」
アリュナが私の代わりにジャンにそう指摘してくれた。
「いや、このままだとこの国を追い出されちまうだけだろ。傭兵として雇って貰えば金も情報も入るし一石二鳥だろ」
「だけど、ポッとやってきた傭兵団をそう簡単に雇うかしら」
「監視艇は戦時中って言ってただろう。エリシア帝国相手の戦争に戦力はいくらあっても困らないと思うぞ」
ジャンの予測はあたっていた。監視艇からはこう返事があった。
「軍の司令官がお会いになるそうだ。条件面で折り合いがつけば雇って貰えるだろう」
そのまま監視艇の誘導で、司令官のいる基地まで案内された。基地内へはジャンとアリュナだけが入り、雇用条件の交渉をする。
「どうでしたの?」
ジャンとアリュナが帰ってくると、すぐにリンネカルロがそう尋ねた。
「短期条件で契約してきた。報酬は剣豪団の情報と一億ゴルド。エリシア帝国を相手にするには安い報酬だが、まあ、仕方ねえ」
「短期条件ていうのは?」
「激戦区での一戦だけの契約だ。みんなには悪いけど、ちょっと頑張ってもらうことになる」
「一戦だけなら仕方ありませんわね。さっさと終わらせて勇太の情報を得ましょう」
すでにリンネカルロの中では【剣豪団=勇太】になっているようだ。
すぐにターミハル軍の案内で、激戦区になっている地区へと向かった。そこはベハンという場所で、都市を守る防波堤になっている軍事地区だそうだ。
「ジャン、敵軍の情報はどれくらい貰っているのかしら」
リンネカルロの質問に、ジャンは少し渋い顔になる。
「敵の戦力は魔導機3000機ほど、戦艦タイプのライドキャリアが70隻以上。対する味方は魔導機2000機、ライドキャリア30隻と数では劣勢だそうだ」
「かなり戦力差があるわね。一戦と言ってたけど、私たちはどこまで戦えばいいのかしら?」
「戦況が互角になるか、敵が撤退するまでという契約だ」
「1000機差を埋めるのは骨が折れそうね」
無双鉄騎団にお世話になっている私とユキハも、この戦いに参戦することになった。人手は多い方がいいと歓迎される。一人を除いてだけど。
「渚。クラス3の実力をみせていただきますわ」
リンネカルロのその言葉には敵意すら感じる。よほど自分の上のクラスだってのが気に入らないみたい。私は別にそんなのどうでもいいんだけどな。
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