第229話 頂上決戦

スカルフィ一門は、敵襲に備えてきたのかすぐに魔導機を出撃させた。両者はボクデンとカゲヒサの周りで激しくぶつかる。


スカルフィ一門の魔導機は40機ほど、対してエリシア帝国軍はその倍はいる。個々の力はスカルフィ一門の方が上かもしれないが、数的不利により、撃破されているのはスカルフィ一門の方が多いように見える。


劣勢のスカルフィ一門を助ける為に、オヤジ率いるムサシの魔導機隊が乱戦に参加する。俺も動きの遅いナマクラで必死についていくが、本気で走る剣豪団のメンバーたちに置いていかれる。


オヤジたちが参戦したことで戦況は変わった。エリシア軍有利から一転、剣豪団が押し始めた。やはりオヤジと清音は強い。エリシア帝国の精鋭を次々に斬り伏せていく。


圧倒的な強さで敵を斬り伏せていたオヤジであったが、黒と赤の目立ったカラーリングの魔導機と対すると、その勢いを止められた。


「勇太さん! やばいっす! 大先生と大陸最強ユウトの一騎討ちが始まります!」


トリスが興奮したようにそう通信で言ってくる。あれがエリシア、いや大陸最強と言われているユウトの魔導機アジュラか……


剣豪団の連中だけではなく、エリシア帝国軍のライダーもこの戦いには興味があるのか、一時的に戦いがストップした。事実上の大陸頂上決戦に、さっきまで戦っていた全員が動きを止めていた。


最初に動いたのはユウトのアジュラだった。左手に持った盾を前方に構えながら、エクスカリバーに接近する。オヤジは両手剣を鋭く振り抜き、アジュラの盾をぶっ叩いた。ドンッと爆発したような音が響いて、アジュラとエクスカリバーの間の空気が揺れた。


並の魔導機なら今の一撃で盾ごと吹き飛ばされていただろうが、アジュラは耐えた。バランスを崩すこともなく、さらに一歩踏み出して右手の剣を突き出し、エクスカリバーを攻撃した。


オヤジは最小限の動きでその攻撃を避けると、体を回転させて両手剣を振り、二撃目を繰り出す。アジュラはその攻撃も盾で防ごうとする。だが、さっきとは違って盾の直前でオヤジの剣の軌道が変わる。乙の字を書くように両手剣はアジュラの足元を斬りつけた。


ユウトはとっさにその変則的は攻撃を小ジャンプで避けたが、無理な体勢となりバランスを崩す。オヤジの前でバランスを失うのは命取りだ。間髪入れずにオヤジは両手剣を振りアジュラを追撃した。


勝負は決まった。そう思ったが、ユウトも大陸最強は伊達ではなかった。アジュラを中心に、竜巻のような強風が吹き荒れた。その風に中には何か小さな物体が無数にあるようで、パシパシパシッとエクスカリバーのボディーに傷をつける。致命傷になるような攻撃ではなかったが、崩したバランスを持ち直すほどの時間は稼がれてしまった。


体勢を立て直したアジュラは剣を胸のところで縦に構えると、勢いよくエクスカリバーに剣撃を繰り出した。ユウトの連続剣撃は恐ろしく速い。両手剣のオヤジは、なんとか剣を最小限に動かして攻撃を防いでいた。しかし、鋭い一振りがエクスカリバーの首元をかすめる。オヤジも少ない隙を狙って両手剣で反撃するが、全て盾で防がれた。


あのオヤジが押されている……あらためてユウトの力に驚愕する。このままではオヤジは負けてしまう。そう思うとなぜか心臓を掴まれたような不快な感覚に襲われた。


「勇太! よ〜く見ておけよ。とっておきを見せてやる」


不安になっていた俺の気持ちを察したように、オヤジが通信でそう言ってきた。


オヤジは何か技を出すようだ。俺はそれを見逃さないように集中した。


オヤジとユウトの戦い。激しい攻防の中で不思議な現象が起こった。一瞬、いや、その表現すら長く感じるほどの合間。アジュラとエクスカリバーの二つの魔導機は、時が止まったように停止した。そして次の瞬間、エクスカリバーの剣がアジュラの首下辺りを貫いていた。


何が起こったかわからない。エクスカリバーは剣を振る動作すらしていなかった……


「無動剣。俺の必殺技だ」


オヤジはそう言いながらアジュラから剣を引き抜いた。

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