第226話 灼熱の魔導機

剣豪団は結果的に二手に別れて戦うことになった。強敵相手に戦力を分散するのはあまり良くないと思うけど、あの状況では仕方ないだろう。


二軍に分かれた剣豪団、もちろん俺は清音一門と行動を共にする。そうなると、俺のお守りをすると言っていたオヤジもこちらにいた。


「勇太。ユウトやロゼッタが出てきたら、お前は後ろに下がるんだぞ」


ユウトがどれほどの相手かは知らないけど、いざとなったらナマクラでも戦えると自分では思っていた。


「まあ、積極的には戦う気はないけど、オヤジと大陸最強との戦いには興味はあるからな。ちょっと見学はするぞ」

「そうだな、師の戦いを見るのもまた修行だ。しかし、俺が苦戦しても手を出すんじゃないぞ」


「わかってる。俺はそれほど野暮じゃない」


どんな相手だろうと、オヤジが負けるとは一ミリも思ってないのでそんな心配はしていなかった。

「一応念のために言っておきますけど、私の戦いにも手を貸す必要はありませんから」

清音が涼しい表情でそう言ってくる。仲間の安全には気を使うが、自分の戦いにはその配慮はないようだ。

「わかってるよ。手は出さない」



バルミハル軍と共に戦う清音一門は、王都の北にあるバルミハル軍の基地へと向かった。基地はエリシア軍の魔導機20機ほどに攻撃され、壊滅寸前であった。


「剣豪団だ! 剣豪団が援軍にきたぞ!」


三国同盟の共有通信で、基地の兵たちから歓声が上がる。攻撃していたエリシア軍も近づくムサシに気がつき、動き始めた。


「よし、全機出るぞ!」


オヤジの号令で、ライダーたちは一斉に格納から出撃した。


エリシア軍の魔導機はムサシを取り囲むように展開してきた。俺たちは後方の出口から出撃すると、左右に分かれてムサシを守るように布陣する。


「ありゃ、ロゼッタのアグニアだな」

オヤジの指摘したのは真紅の魔導機、炎の魔神を想像させる機体は威圧感たっぷりでこちらを見ていた。


「父上。アグニアは私が相手します」

「そうだな……それがいいだろう。勇太。親バカで言うが、見応えのある勝負になるだろうから見ておけ」


清音VSロゼッタ── いきなり天下十二傑同士の一騎討ちが見られる。


ロゼッタも清音の存在に気がついたようで、まっすぐ、清音の菊一文字に向かってきた。


「出てきたね剣皇清音! どれほどの実力か見せてもらうよ!」


戦闘時に外部出力音で敵に話しかけるのは珍しい。余計な情報を相手に与えるのを嫌う為だと聞いているが、ロゼッタは自分に絶対的な自信があるのか、それを気にしていないようだ。


「炎帝ロゼッタ。あなたの小さな火ではこの菊一文字を燃やすことは出来ません」

「小さな炎とは言ってくれるね。灼熱のマグマより熱い炎をプレゼントしてあげるよ!」


ロゼッタはそう言うと、右手に持ったリング状の武器を振った。ゴゴゴッと地響きのような音が鳴って、地面から炎が吹き荒れる。


清音は吹き出した炎の柱を避けると、ロゼッタとの距離を一気に詰めた。そして神速の剣でアグニアの首を狙った。アグニアはリング状の武器でそれを受け止める。やはり天下十二傑、並の反応速度ではないようだ。かなりの手練れでも、清音の神速の剣を初見で受けるのは難しい。


さらに清音は攻撃を繰り出す。アグニアは両手に持ったリング状の武器でその攻撃全てを受け止めた。あの攻撃を難なく受け止めるとはやはり侮れないな。


アグニアと菊一文字の周りを取り囲むように炎のサークルが生まれる。おそらくロゼッタの仕業だと思うが、どのように発動したかわからない。


炎のサークルは少しつづ円の大きさを小さくしていき、二機の魔導機に迫ってくる。

「アグニアは強力な火炎耐性があるからね、残念だけどあなただけ燃やされな!」


そう言うと炎が一気に中心に集まり、大きな炎の柱になった。清音の菊一文字はその炎に巻き込まれる。しかし、炎に巻き込まれたの一瞬で、すぐにその炎は竜巻のような強風にかき消された。


「ですからそんな小さな炎では菊一文字を燃やすことは出来ないと言っているでしょう!」


清音の菊一文字は剣を下段に構えて、竜巻の中から姿を表した。竜巻はそのまま清音の剣の刀身に集まっていく。そして気合のこもった言葉を発して、剣を上に振った。


「斬・旋風剣!!」


アグニアの機体に突風と同時に見えない剣撃が走る。さすがのロゼッタもそれを全て防ぐことは出来ず、アグニアのボディーに亀裂が入った。

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