第218話 三国同盟
広大なエリシア帝国の領地に接する国々は、常に強大な帝国の侵攻に怯えていた。エリシアの東に位置する三つの王国。ターミハル、バルミハル、イーミハルもそんな国家であった。
三国はエリシア帝国に対抗する為に古くから同盟関係を築き、長きに亘って帝国と激しい戦いを繰り広げてた。近年、そんな三国を陰で支え、エリシア帝国の侵攻を防いでいたのがオヤジの剣豪団であった。
ターミハルの王都に到着した剣豪団は、客人待遇で迎えられる。オヤジと清音、それとスカルフィはターミハル軍との会議の為に軍部へと赴いた。もはや剣豪団は同盟国の一つとしてみられているようで、その会議はターミハル側にとって重要視されているようだ。
「至急の依頼で俺たちを急ぎ呼び出した割には、王都は静かなものだな」
ムサシの食堂。会議に出かけたオヤジたちとは別に、俺たちは食事をしながらゆったりと待機となっていた。鉄平との模擬戦から、なにかと俺にまとわりついてきているトリスが、想像していた状況と違うことに懸念点があるようでそう言った。
「何かの情報を掴んだって話よ。確かに王都は静かだけど、軍部の方はかなり大慌てで動いているみたい」
清音から俺の世話を言い渡されているブリュンヒルデが、俺の隣で妙な料理を食べながらそうトリスに言う。
「軍部が大慌てで動くなんてエリシア帝国の侵攻だと思うが、今回はこれまでの規模とはレベルが違うってことか」
「前の侵攻でも、魔導機が5000機も攻めてきたけど、今回より冷静だった。そう考えると、それを上回る戦力が攻めてくることが予想できるわね」
「5000機以上となるとかなり大規模な戦争が起こるな」
ちょっと今まで聞いたことないような数の戦力に驚く。やはりエリシア帝国は別格なのだろう。
「勇太さんは、最高スコアはいくつなんですか」
不意にトリスがそう聞いてきた。
「最高スコア?」
「一つの戦いでの最高撃墜数ですよ。俺は12機です」
一つの戦いでの最高撃墜数か……そうなるとヴィクトゥルフでヴィクトゥルフ・ノヴァをぶっ放した、あの時かな。確か1000機くらいだっけ。
「正確には分からないけど、1000機くらいかな」
そう言うと、トリスもブリュンヒルデも盛大に驚く。ブリュンヒルデなんて飲んでいた飲み物を吐き出したくらいだ。
「いくらなんでも冗談ですよね?」
ブリュンヒルデは控えめに俺にそう聞いてきた。
「いや、本当だよ。まあ、ちょっとインチキしたけどな」
ヴィクトゥルフは規格外だから、あれはもうインチキと言ってもいいだろう。
「なるほど、何か裏があるんですね」
インチキの表現で二人はなんとか納得した。
そんな感じで、ムサシをはじめとする剣豪団はゆったりとした時間を過ごしていた。しかし、それもオヤジたちが三人が会議から戻ってくるまでであった。
「剣豪団、全団員にムサシの格納庫に集まるように伝えてくれ」
会議から戻ってきた三人の表情が険しい。余程の事態なのが伝わってくる。それをみてブリュンヒルデも驚いていた。
「こんな緊張している師匠たちを見るのは初めてです。余程のことがあったみたいですね……」
剣豪団の全団員がムサシの格納庫に集められ、オヤジから皆に状況が説明された。それを聞いた団員たちは、全員、緊張と驚きで固まった。
「今回のエリシア帝国の侵攻軍の規模は魔導機10000機の大部隊だ」
10000機の数字には誰も驚きを見せなかったが、オヤジの次の言葉で騒然とする。
「なお、今回の侵攻には、エリシアの三傑、ユウト、ロゼッタ、エメシスの参戦が確認されている。これはエリシア帝国が本気で三国同盟を侵略するつもりだということだ」
ザワザワと周りがざわめきたつ。その三人の名前は俺でも聞いたことがある。確か三人とも天下十二傑だよな。
「凄い、天下十二傑の半分がこの戦いに参戦するなんて……」
「こりゃ歴史的大事件になるな。エリシアの三傑VS剣豪団の三傑の戦い、いや、ちょっとドキドキしてきた」
そうか、オヤジや清音も天下十二傑なんだよな。というか、剣豪団の面々だけど、驚いていはいるけど、別にビビってはないようだな。そりゃ、オヤジとか清音がいるから負けるとは一ミリも思ってないんだろうな。
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