第219話 国境へ

傭兵だが主戦力である剣豪団には、国境にある重要な拠点の防衛が任された。


城塞都市モスピレイ。ターミハルと敵国であるエリシア帝国、同盟国の一つであるイーミハルの三の国が隣接する最重要拠点。地理的にもここを落とされると、ターミハル、イーミハルの両国の防衛ラインが崩れる為に、三国同盟から多くの戦力が集められていた。


「それにしてもエリシア帝国は、10000機もの魔導機、さらに三傑と、三国同盟だけにそれだけの戦力を投入できましたね」


城塞都市モスピレイに到着して、侵攻してくるエリシア軍への備えている合間、何か理解できないことがあるのかブリュンヒルデが清音に聞いた。


「これは未確認の情報なので、皆には伏せていたけど。西のオブリアン大連合が崩壊したって話よ」

「まさか! 戦力では反エリシア帝国の最大規模の西の大連合が崩壊したのですか!」


「だから未確認情報って言ってるでしょう。聞いた話では、100機ほどのエリシア帝国の魔導機隊に数万機の魔導機を展開した大連合が、一ヶ月もかからずに敗北したって奇想天外な話だからちょっと誤報だと私は思ってますけど」


「ごめん、よく分からないのだけど、その大連合とやらが崩壊したら、どうしてエリシア帝国はこっちに戦力を投入できるようになるんだ?」


そう俺が聞くと、無知な弟に姉が教えてくれるように説明してくれた。


「エリシア帝国は、広大な領土を保有しているので、沢山の国との間に国境を有している。常に領土拡大の隙を狙っているので、国境にある国々には二つの選択肢が求められる。従うか戦うか── エリシア帝国は強大です。小さな国がまともに戦っても勝てる相手ではありません。多くの国が戦うことを選択したからこそ、その侵攻を防ぐことができていたのです。その多くの国の中でも、エリシア帝国の侵攻を防いでいた大きな勢力が三つあります。東の三国同盟、西のオブリアン大連合、そして南のラーシア王国。常にこの三勢力に対して、戦力を分散していなければいけなかったエリシア帝国は、その強大な力を一つにすることができなかったのです。しかし、その三勢力の一角が崩れたとなると……」


そこまで聞けば馬鹿な俺でもわかる。なるほど、今まであった均衡が崩れてきたってことか。もしかしてだけど、復活したラフシャルの兄弟子が関係したりしないよな……タイミング的に無関係とは思わないけど……



剣豪団が城塞都市モスピレイに到着してから次の日、エリシア帝国方面に、無数の魔導機の軍勢が姿をみせた。その数は今までみたことないほどで、あれが全部敵だと考えるとさすがの俺でも少しビビる。


「勇太さん。やはり、10000機の魔導機軍ともなると圧巻のボリュームですね」


トリスが呑気にそう言ってくる。俺も他人のこと言えないが、こいつ、ちょっと能天気なところがあるな。


「勇太さんんは常に私の側にいてください。いくらライダーが強者でも、機体はナマクラですから」


トリプルハイランダーのブリュンヒルデが一緒なら安心だ。確かにナマクラでは不安なので助かる。


三国同盟側の戦力は、魔導機5000機、ライドキャリア80隻、城塞都市の城壁に設置された長距離バリスタ200門。攻めてきたエリシア軍には劣るが、地の利もあり、戦況次第ではどうにか戦える力はありそうだ。


「剣豪団は中央で敵を押さえ込む。中央はムサシ隊、右にボクデン隊、左はカゲヒサ隊。三国同盟軍をサポートすることを忘れるな! 友軍が全滅したら俺たちも生きては帰れないぞ!」


オヤジの指示で、剣豪団が動き出した。全体から見たら少数部隊だが、やはり存在感が違う。剣豪団が中央に躍り出ると、他の部隊は道を開けるように左右に割れた。


「勇太、俺の戦いを見ておけ、魔導機での戦い方の見本を見せてやる」


オヤジがそう言いながら迫り来る敵軍に対して、先頭に立って歩み出した。やはり貫禄が違う。オヤジの背中を見ているだけで安心感が溢れてくる。他の団員たちも同じように感じているのか、剣豪団の士気はみるみる上がっていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る