第210話 剣豪団

食事が終わると、オヤジは至急の仕事の軍議を行うために、剣豪団の旗艦である、『ムサシ』と言う名のライドキャリアに向かった。


「勇太、軍議中、暇だろう。誰かに剣豪団を案内させよう。清音、お前の弟子の誰かを勇太に付けてやってくれ」


清音は深いため息を吐きながらも弟子の一人を手配してくれた。


「ブリュンヒルデです。師匠にあなたを案内するように申しつかりました」


ブリュンヒルデと名乗ったのはナナミと同年代くらいの女の子で、金髪のベリーショートで清音と同じような着物のような服をきていた。和のテイストに洋の顔立ちがアンバランスで可愛らしい。


「よろしく、ブリュンヒルデ」

俺は笑顔で挨拶するが、彼女は無表情で会釈するだけだった。無愛想なのか、照れ屋さんなのか、それともまさか嫌われているのか、彼女と俺との間に、見えない壁を感じる。



剣豪団は三隻のライドキャリアを所有していた。一番大きいのが旗艦のムサシで、25機の魔導機を格納できる大型艦である。次に大きいのが搭載数22機のボクデン、こちらもムサシほどではないが十分大きい大型艦で、バリスタの数などを見ると火力が凄まじそうだ。もう一隻も大型艦のカゲヒサ、搭載数20機、剣豪団はライドキャリアにも火力を求めているのか、どの艦を砲門が多い。大型艦3隻からの集中砲火を受けたら最新鋭のフガクでも長くは持たないかも知れないな……


まず、案内してもらったのはカゲヒサの格納庫。ブリュンヒルデは律儀に一機、一機、魔導機を説明してくれる。その中でも目を引いたのは藍色の機体で、スマートながら力強そうなフォルムは、並ぶ魔導機の中でも目立っていた。


「見る目がございます。これはスカルフィさまの一番弟子、カゲヒサ隊の隊長であるディアーブロさんの愛機、ソードブレイカーです。ダブルハイランダー専用機で、剣豪団の中でも五指に入る戦力になります」


アリュナやエミナと同じダブルハイランダーか……もし、アリュナたちと戦ったらどっちが強いんだろう。


一通りカゲヒサを見て周り、次はボクデンへと移動した。ボクデンの格納庫へ入った瞬間、存在感のある赤い機体が目に入る。先ほどのソードブレイカーよりさらに上位の威圧感を感じる。


「これは天下十二傑、剣王スカルフィさまの魔導機、アロンダイトです。クアドラプルハイランダー専用機で、大陸屈指の強さを誇ります」


「天下十二傑って……」

「何を驚いているのですか、まさかスカルフィさまが天下十二傑だと知らなかったのですか?」

「ちょっと待て、スカルフィってオヤジの弟子なんだよな、ていうことはオヤジは天下十二傑より上ってことなのか?」

「オヤジ……大先生も天下十二傑のお一人です。さらに言うなら私の師匠、清音さまも天下十二傑に数えられています」


「嘘だろ、剣豪団には天下十二傑が三人もいるのか!」

「まさか剣豪団の三英傑を知らない人がいるなんて驚きです。しかもそれが大先生のお弟子になったとは……師匠が嘆くのも理解します」


染み染みとブリュンヒルデは呟いた。


「おい、ブリュンヒルデ! そいつはなんだ! どうして師匠の魔導機の周りをウロチョロしてるんだ!」


近くにいた剣豪団の団員の数人がこちらに近づきながらそう怒鳴った。


「モドレッドさん、こちらは大先生のお弟子になった、勇太さんで、師匠の指示で剣豪団の案内をしているだけです」

「大先生の弟子……鉄平が話していた旧友ってこいつか。気に入らないな、大先生の弟子か何か知れないけどよ、ここはスカルフィさまの船だ、関係ない奴は入ってくるんじゃねえよ!」

「関係ないって……大先生のお弟子さんですよ」


「大先生だろうが関係ねえ! ブリュンヒルデ、貴様も同じだ! ここはスカルフィ一門のライドキャリアだってことなんだよ! 清音一門も入場禁止だ!」


ブリュンヒルデは何か言い返そうとするが、その騒動で周りにいた団員が集まってきて俺たちを取り囲むと、雰囲気の悪さを感じ何も言わずに、ここを去る選択をした。


「勇太さん、いきましょう。彼らに何を言っても無駄みたいです」


俺もその意見に賛成だが、剣豪団の内情はあまりうまくいってないのかと心配になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る