第211話 名刀
ボクデンを追い出された俺とブリュンヒルデは剣豪団の旗艦、ムサシへと向かった。
「スカルフィと清音の弟子って仲悪いのか?」
無言での移動に耐えきれず、何か話そうと、さっきの出来事の件を俺はブリュンヒルデに聞いた。
「別に悪くありません。だけど一部弟子の中には変な対抗心を持っている者もいます。さっきのスカルフィさんの二番弟子、モドレッドさんはその筆頭なのです」
剣豪団に師事すべき人間が多いのが問題なのか、妙な派閥を生み出す環境があるのは間違い無いように思える。オヤジが全てを仕切って全員の面倒を見れば問題ないのだろうけど、あのオヤジはそんなタイプじゃないしな……
聞くと旗艦ムサシの魔導機隊は清音の弟子たちで編成されているそうだ。ライダーの人数は20名、ムサシの最大搭載数は25機なので、まだ余裕がある。ボクデンとカゲヒサはスカルフィの弟子たちで編成されていて、両方合わせると42名のライダーが所属している。単純な数で言うと、スカルフィ一門の方が倍以上も多い。
ムサシの格納庫に入ると、ボクデンやカゲヒサと違い、スタッフが笑顔で迎えてくれた。
「よう、ブリュンヒルデ、師匠たちが軍議でいない間に男とデートか?」
「ちっ、違います。この方は大先生のお弟子さんで、剣豪団を案内しているだけです」
「ほう、大先生が新しい弟子を取ったって聞いたけど本当だったんだな。あの弟子を取るのを嫌っていた大先生が認めたってことは相当な逸材だろう」
ムサシの乗員は、皆、気の良い人たちで、自ら整備している魔導機を自慢げに紹介してくれた。
「こいつが大先生の魔導機、『エクスカリバー』だ。大陸でも二機しかない、稼働しているクインティプルハイランダー専用機の一つだ。こいつを触れるだけで、俺は幸せ者だ」
オヤジはクインティプルという聞いたこともないクラスのライダーのようだ。まあ、只者でないのはわかってたから驚かないけどな。
エクスカリバーはアルレオと同じ白い機体であった。しかも、もしかしたら設計者が同じなのかと思うほど外見がよく似ている。
「こっちは清音師匠の愛機、『菊一文字』だ。クアドラプルハイランダー専用機で、疾風迅雷の異名を持つ名機だぜ」
菊一文字……どこかで聞いた名前だな。菊一文字はブラックメタリックの綺麗な機体で、スリムなボディーだがどこか力強さを感じる。見た目だけで強者の風格が窺える。
「勇太さん、私の魔導機もお見せいたします」
ブリュンヒルデはそう言って、俺を奥に連れて行く。そこにあったのは鮮やかな朱色の機体で、風貌からして凡機とは思えなかった。
「魔導機『鬼丸国綱』です。皆は鬼丸と呼んでいます。トリプルハイランダー専用機で、パワーだけなら清音師匠の菊一文字にも負けません」
すでにクアドラプルハイランダーやらクインティプルハイランダーとあまり聞かないクラスの名を聞いているので、トリプルハイランダーと聞いてもさほど驚かなかった。それが不満なのかブリュンヒルデはさらにこう付け加える。
「私はこう見えても清音師匠の一番弟子です。剣豪団でも五指に入る戦力なんですよ」
「一番弟子にしては若いよな」
正直な感想を言うと、ブリュンヒルデから驚きの言葉が飛び出した。
「よく幼く見られますけど、私、こう見えても二十歳なんです」
「そうなのか! せいぜい、十二〜十四歳くらいかと思ってた!」
ナナミもとても十四歳には見えないけど、それより衝撃的な感じだ。俺はさらに気になることがあったので彼女のそれを聞いた。
「オヤジが清音も二十歳って言ってたけど、師匠と同い年ってどういうことなんだ?」
「元々、私と師匠は幼馴染みなんです。普通の友人関係でしたけど、剣を学んでいる彼女を見て、私も習いたくなって……最初は大先生に弟子入りを志願したんですけど、それは断られて、代わりに清音師匠への弟子入りを勧められたんです。すでにその時、師匠は普通の剣士では太刀打ちできないほどの達人になってましたので、言われるままに彼女に弟子入りしたんです」
なんとも複雑な関係だな、友人から師弟関係って……
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