第207話 そして二ヶ月後
オヤジの木剣の動きは、最初の頃に比べて格段に速くなっている。それだけ修行始めは手を抜いていたのかと、実感する。
そんなオヤジの動きにも、まだまだ互角とは言えないが、ある程度ついていけるようになっていた。それを見てオヤジは染み染みとこう言う。
「恐ろしいほどの成長スピードだな。今まで剣を学ぶ多くの者を見てきたが、お前ほど物事を吸収するのが得意な奴は初めてだ」
「自分ではわからないけど、実際どれくらい腕前は上がっているんだ?」
「ふっ、そうだな。並の国なら国を代表するような剣士レベルには成長しているだろう」
「ちなみにオヤジはどれくらいのレベルなんだよ」
「俺は大陸を代表するくらいの剣士だ」
当たり前のように言うが、確かにそうなんだろうと納得する。
「オヤジより強い剣士はいるのか?」
「そうだな、戦って勝てるかどうか分からない剣士は二人いる」
「おっ、オヤジと互角に戦うような化物が二人もいるのか! 誰なんだよそいつらは」
「二人とも俺の弟子だ。一人は一番弟子のスカルフィ。剣技ではまだ俺の方が上だが、若いぶん体力もあるしな、戦いが長引けばどうなるか分からん。もう一人は二番弟子の清音だ。こいつは剣技ではすでに俺を超えている天才剣士だ。だが、精神がまだまだ未熟だからな、普通に戦えば俺が負けることはないんだろうがな」
「何だよ、普通に戦えば負けることはないって。それじゃどうしてその清音って人には勝てるかどうか分からないんだ?」
「そりゃ、父親として娘に本気で剣を向けれるわけないだろう」
「娘。そうか、その人が前に話していた娘さんか」
そんな化け物みたいに強い娘の婿にこいとか言ってたのかこのオヤジ……
「あと、魔導機での戦いなら、もう一人追加しないといけないがな」
「ほうほう、それは誰なんだ」
「お前だよ、勇太。俺に見る目があるのか神の悪戯か、俺の弟子は三人とも超が付くほど優秀だな」
「俺のルーディア値も知らないし、魔導機に乗ってるのも見たことないだろう。どうしてそう思うんだ?」
「どうしてだろうな、何となくわかるんだよ。勇太、お前のルーディア値がとんでもなく高いってのは肌に感じるんだ」
「……仲間からはあまり喋らない方が良いって言われてるけど、やっぱりオヤジには言っておくよ。オヤジ、聞いて驚けよ、俺のルーディア値は100万以上だ」
「そうか、想像以上に高いな」
「何だよ、あまり驚かないのかよ」
「だから肌で感じてるって言ってるだろ。それにお前のルーディア値が幾つだろうが、俺の三番目の弟子であることに変わりはないからな」
ちょっと拍子抜けしたが、俺のルーディア値を聞いても変わらないオヤジの反応がなんだか嬉しかった。
オヤジは時を刻む、魔導時計を見て頭をかきながらこう言う。
「明日にはここから出れるな。まだまだお前に稽古をつけてやりたかったがな」
「確かにまだ稽古はつけてもらいたかったけど、ここから出て、腹一杯飯を食いたい」
そう、当初の懸念通り、俺とオヤジは途中から食糧不足に陥った。三日前からすでに食べ物は底をつき、水で腹を満たす日々が続いていたのである。
「ハハハッ。確かにそうだな。ここから出たらすぐに飯を用意させよう」
「後、オヤジ、お願いなんだけど、ここから出たら仲間と合流したいんだ。アムリアか、メルタリアまで送ってもらっていいか?」
アムリアのラネルやメルタリアのユーディンならフガクと通信共有しているのでジャンたちと連絡が取れる。合流するにはまずは連絡をしないと……
「アムリア連邦とメルタリア王国か、ここからだったらアムリアの方が近いな。よし、すぐにでも送っていってやるよ」
助かった。これで合流するのはなんとかなる。巨獣の件は大丈夫だったんだろうか……みんな無事だといいんだけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます