第199話 封印完了/ジャン
勇太から言われていた時間通り、アルレオが自爆した。強烈な閃光と、光があたりを包み、巨獣の群れを強烈な爆発に巻き込んでいく。少し離れているフガクにまでその衝撃波は到達して船体を激しく揺らす。
「勇太!」
爆発の威力に心配になったのか、アリュナが叫ぶ。ナナミとファルマも心配の声をあげた。
「やだ……あんな爆発の中で本当に大丈夫なの!?」
「私……胸が痛い……勇太……」
爆発によって巻き上げられた砂煙が晴れると、巨獣の群れは姿を消し、広い地下空間だけが広がっていた。
「時間がない、すぐにまた巨獣が湧き出すぞ! アリュナ、ナナミ、ファルマ、勇太を探して回収してくれ! 爆発の中心点にいるはずだ、急げよ!」
「了解!」
アリュナたちはよほど心配なのか、凄い勢いで飛び出し、アルレオの姿を探した。
すぐに見つかると思っていたが、アリュナたちからの通信は、その期待を裏切るものだった。
「ジャン、どこにもいないよ! アルレオの残骸すら見つからない!」
「どうしよう……やだ……勇太いないよ!」
「勇太! 勇太!」
くっ……やっぱり自爆なんてやらせるべきじゃなかった……
「ジャン、爆発の時に、大きく吹き飛ぶ物体が見えたわ、もしかしたら、それがアルレオのコックピットだったかもしれないわ」
フィスティナがそう教えてくれる。よくあんな状況の中でそんなの見えたなと感心したが、そんなことより先に情報の詳細を聞く。
「本当か! どっちの方に飛んでいったんだ!」
「中心点より、北西の方角。あの勢いだったらかなりの距離を飛んでるんじゃないかしら」
「よし! アリュナ、ナナミ、ファルマ! もしかしたらそこより北西に飛ばされてる可能性がある。そっちを探してくれるか!」
「了解! すぐに向かうわ!」
すでに異界の門から新しい巨獣が湧き出てきている。時間がない……早く見つけないと……
「……ジャン、大変よ、北西の地に大きな亀裂を見つけたわ。もし、ここに落ちてたら……」
「嘘だろう……クソッ! どれだけついてねえんだよ!」
「なっ、ナナミ、降りて探してくる!」
「ばっ、馬鹿! ナナミやめなさい! ここに落ちたとも決まってないのよ!」
どうやらナナミがその亀裂に降りようとして、アリュナに止められたようだ。アリュナの判断は正しい。下手したら行方不明者が増えて状況が悪化するだけだ。
最悪の状況の中、ラフシャルから唯一の吉報が伝えられる。
「ジャン、封印が完了したよ」
「わかった。すぐにフガクを遺跡の横まで移動する」
これで巨獣が湧き出ることは無くなったわけだが……今、新しく湧き出て存在する巨獣は50体ほど、予定ではラフシャルを回収したらすぐに撤退する予定だったが、勇太を置いて撤退なんて、うちの連中が納得するはずがない。やはり、あの巨獣を片付けて安全を確保した後、本格的な捜索をした方がいいだろう。
しかし、巨獣50体、勇太無しで倒せるのか……
悩んでいると、ラフシャルがブリッジに戻ってきた。
「ジャン、勇太が見つからないって本当か!」
ラフシャルも心配なのかすぐにそう言ってきた。
「ああ、アルレオの残骸すら見つからないそうだ」
「そうか……なら生きてる可能性は高いな、フェリがついてて、残骸も残さないほどの事故はありえない」
「それを聞いて安心した。だとすると本格的な捜索をしなくちゃいけねえが、そうなるとあの生き残った巨獣が邪魔になる」
「50体くらいかな……幸いにもSレベル個体以上の姿は見えないようだね」
「勇太無しで殲滅できると思うか?」
「う〜ん……リンネカルロも動けないし、難しいと思う」
そうラフシャルが判断したのを聞いていたのか、アリュナがこう言ってきた。
「私とナナミは対巨獣装備を持っているから何とかなると思うよ」
「対巨獣装備! そんなのどこで手に入れたんだい?」
「ここに来る前にフェリに案内された場所で入手した」
「なるほど、フェリはそんな用意もしていたのか……確かにフェリが用意していた装備があるならいけるかもしれないね」
ラフシャルの判断なら間違いないだろう。俺は巨獣の殲滅を決断した。
「よし、生き残った巨獣を殲滅するぞ! 全員、戦闘準備だ!」
巨獣の殲滅は勇太の捜索に繋がる、それを信じているのか、全員、活気のある反応をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます