第191話 第七格納庫
ジャンからの通信を終えると、すぐにフェリに異界の門の事を聞いた。
「フェリ、異界の門って場所知ってるか?」
「はい、マスター、存じております」
「巨獣の封印が解かれたからジャンたちはそっちに向かうみたいなんだ、ここから直接向かうルートを教えてくれ」
「畏まりました。ルートを異界の門へと修正します」
巨獣が復活した事をアリュナとナナミに伝えると、二人から頼もしい反応が返ってくる。
「あら、間に合わなかったのね。まあ、それで次の行動を起こしているってことは、まだ、何かやりようがあるってことでしょう。悲観するのはまだ早いわね」
「それに巨獣なんてみんなナナミたちで倒しちゃえばいいよ。無双鉄騎団は強いんだから大丈夫だよ」
「強いって言ってもな、巨獣も相当なもんだぞ」
「それでも負けないよ! ナナミたちには団結力もあるんだから!」
ナナミは本当は少し怖いのかな、ちょっと強がって言っているようにも聞こえる。
それから、しばらく順調な移動をしていたが、不意にフェリがこう言ってきた。
「マスター、少し寄り道をしてよろしいでしょうか」
フェリが自らそんな事を言うのは珍しいので驚いて聞き直した。
「えっ、寄り道って、何かあるのか?」
「巨獣が復活してしまったこの状況で、今の装備で異界の門に行くのは大変危険です。この近くに対巨獣用装備が保管されていますので、それを取得してから参りましょう」
「対巨獣用装備、そんなのがあるなら寄り道する価値はあるな……わかった。そっちに向かってくれ」
そしてフェリが案内してくれた場所は、楕円形の大きな岩であった。見た目では普通の岩に見えるけど、フェリは岩の突起部分に手を翳すように言ってきた。俺は言われるままに、アルレオの手をそこに向けた。すると、どこからか声が聞こえてくる。
「ここは対巨獣用装備を保管している第七格納庫です。扉の解除にはラファクターAクラス以上の承認が必要です。名前と、認証番号を言ってください」
その言葉に対して、すぐフェリが答える。
「フェリ・ルーディア、認証番号127778927…………」
「ラファクターSSSクラス。プロフェッサー、フェリ・ルーディアの認証を確認しました。第七格納庫の扉を解除します」
声がそう言うと、岩に光の筋が現れ、その光が横に広がっていき岩の中へと入れる入り口が現れた。
岩の中に入ると、綺麗に陳列されて多くの魔導機用の装備が置かれていた。いっぱいあるので、何が何かもわからない。
「右から二番目に置かれている武器は、プロミネンス砲と言い、クラス4用の武器ですが、独立コアを使用しているのでダブルハイランダーのアリュナでも十発程度は使用できるでしょう。右から五番目に置かれているのはアースクエイクユニット。重力系魔導撃を強化する装備で、ナナミのシールド・グラヴィティを強化できます。こちらもクラス4用装備ですが、五発程度なら使用できると思います」
フェリが外部出力音でアリュナとナナミにそう伝える。二人は言われるままに、指定の装備を手に取った。それにしてもフェリは本当に物知りだな。
「フェリ、俺はどれを使えばいいんだ?」
「マスターには奥にあるクラス3用の武器、シャイニング・スマッシャーが良いでしょう。ヴィクトゥルフ・ノヴァより範囲は狭いですが、威力ならこちらの方が上です。レベルS個体以上の巨獣にも有効でしょう」
「ヴィクトゥルフ・ノヴァより威力があるのか! すげーな……」
「しかし、こちらはクラス3用の武器です。クラス2のマスターは問題ありませんが、クラス5のアルレオには負荷が大きく、おそらく三発程度の使用が限界でしょう」
「アルレオでも負荷に耐えられない武器なのか……どんなレベルだよ」
「現存する最強ランクの武器です。ちなみにヴィクトゥルフもクラス4ですから、クラス3のシャイニング・スマッシャーの使用には耐えられません」
「ヴィクトゥルフもか、一体どんな魔導機なら耐えれるんだ」
「クラス3専用魔導機は五体しか存在しません。古代文明時代、最強のクラス3ライダーは五名しかいませんでしたので、それ以上必要なかったのです」
「五体か、今、それはどこにあるんだ、クラス2の俺ならそれに乗れるんだろ?」
「……申し訳ありません。今はお答えできません」
「あっ、えっ!? て言うかフェリはクラス3専用機がどこにあるか知ってるんだ」
「全てではありませんが、二体が眠っている場所は知っています」
「そうか、まあ、答えられないなら仕方ないよな」
フェリが俺の質問に答えなかったのはこれが初めてかもしれない。それほど重要な理由があるんだろうとそれ以上は聞かなかった。
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