第189話 再会の涙/結衣

私はボロボロになった緑の敵機に向けて、外部出力音で話しかけた。

「あなたの仲間に金色の魔導機がいるわよね、今、それはどこにいるの!」


やはり直接エミナを手にかけた金色の魔導機は許すことはできそうになかった。今すぐにでも仇を討ちたい気持ちからか、強めの口調でそう聞いた。


緑の魔導機から返事はない──さらに強く問いただす。


「答えなさい! 無双鉄騎団!」


答える代わりに、ボロボロの機体のハッチがゆっくり開く。そこから現れたライダーを見て、驚きで言葉を失う。


嘘……エミナ……どうして……


涙が溢れてくる……エミナが生きていたという嬉しさと、そのエミナをもう少しで殺そうとした自分の行動に対して恐怖を感じて体が震える。私は戦闘中なのも忘れてハッチを開き、エミナの元へ駆け寄った。


「エミナ!」

そう言って彼女を抱きしめる。彼女も私を抱きしめ返してくれた。

「どうして、どうして、すぐにエミナだって名乗らなかったの! 私、もう少しであなたを殺すところだったのよ!」

「ごめん、結衣……でも、あなたは巨獣の封印を解く側、私はその封印を守る側……目的の大きさから、もし、私情よりこの戦いを優先しなくちゃいけなくなって戦闘を回避出来なかった時、お互い辛くなると思ったから……」

「馬鹿! どんな理由があったって、あなたと戦う選択なんてするわけないでしょう! それに私は巨獣の封印の解除に本当は協力したくないのよ」


「ちょっと待って、巨獣の封印の解除はエリシア帝国の意向じゃないの?」

「違うわ、メシア一族と、大賢者ラフシャルの画策よ」

「ラフシャル……結衣、それは本物のラフシャルじゃないわよ」

エミナの言葉に驚く。


「それってどういう意味なの?」


そうエミナに聞き返した時、途轍もない轟音が周囲に響き渡った。それは地下空間が崩れ落ちそうなほどの勢いで、全ての戦闘が中断するほどの効果があった。


「様子がおかしいわ……エミナ、一緒にエルヴァラに乗って、エリシア帝国に戻りましょう」


「ごめん、結衣、私はもうエリシア帝国には戻るつもりはないの。私の今の居場所は無双鉄騎団だから……ハッチを開いてあなたに姿を見せたのは、私の件で無双鉄騎団に恨みを持っていると分かったから誤解を解きたかったのよ」


「エミナ、無双鉄騎団って一体……」

「私の命の恩人で、今は家族みたいなものなのよ。エリシア帝国には無い、何かこう、暖かい感じのある場所……結衣、あなたも無双鉄騎団にこない? みんなあなたを歓迎してくれると思うわよ」


エミナの明るい表情を見ると、本当にそんな場所なのかもしれない。だけど、このままメシア一族とフラシャルの元にメアリー一人残すのは不安だし、ヴァリエンテの自爆のこともある。さらにエリシア帝国に戻って皇帝にラフシャルとメシア一族の件を伝えなければ……


「エミナ、ごめんなさい……今はいけない、だけど、だけどいつか、また一緒に……」


そう伝えている途中、さらに大きな轟音が響き渡り、今度は地面が揺れ始めた。もう、ただ事では無い。


「雲行きが怪しいわね、私もライドキャリアに戻るから、結衣、あなたも早くエルヴァラに乗りなさい」


「うん、わかった。エミナ……気をつけて」

「あなたもね── あっそうだ、無双鉄騎団のリーダーはあなたと同じ、地球人なのよ、二人を早く逢わせたいわ」


エミナが自分の魔導機に戻りながらそう言う。私と同じ地球人……この世界には沢山の地球人が召喚されているから、それほど珍しいことじゃないけど、妙にその事が気になった。私は魔導機に乗り込む途中のエミナにこう聞いた。


「エミナ! その無双鉄騎団のリーダーの名前は何て言うの〜!」


少し距離が離れたから大声になる。何とかエミナに伝わったようで彼女は答えてくれたが、その言葉はさらなる大きな轟音によってかき消された。


さらに地面が揺れ、地下空間の様子がおかしくなっていく。私はエルヴァラに戻ると、すぐに通信で状況を確認する。

「一体何が起きてるの!」

「わからないけど、戦闘どころじゃ無いわね、一度ライドキャリアに戻りましょう」


メアリーの言葉に賛成すると、私はライドキャリアへと向かうことにした。雷撃を使う敵と戦闘中だったヴァリエンテもこの状況に戦闘を中断していた。ヴァリエンテの相手は、エミナから救援を受けたのか彼女の元へと近づいている。それを見て心の底からほっとした。

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