第181話 封印の解除/メアリー
襲いかかってきたガーディアンはなんとか殲滅した。しかし、結衣の姿が見えない。私は心配になり、言霊箱で彼女に呼び掛けた。
「結衣、どこにいるの結衣! 応答して!」
しかし、彼女からの返信はなかった。そんな焦る私とは対照的に、他の連中は淡々と次の行動に移っていた。
「ラフシャル様が封印の解除に向かわれる、ライダーたちはさらなる安全の確保に努めなさい」
「ブリュレ博士、ちょっと待って! 結衣がいなくなったのよ、探さないと!」
「封印の解除が最優先です、結衣の捜索はその後でかまいません」
「そっ、そんな……」
誰も結衣を心配していないようだった。メシア一族にとって、ラフシャル以外の問題は、全て取るに足らない事なのだろう。
「悪いけど私だけでも結衣を捜索するわよ」
「フッ、好きになさい」
私は結衣を探して、周囲を探し回った。しかし、ここは地下世界、辺りに光苔が繁殖していているので見えはするが、昼間の地上ほどの明るさはなく、捜索しにくい。しかもここでは何かの鉱石が強く反応していてビーコン水晶が役に立たない。
それから言霊箱で呼びかけながら捜索をしたけど、結衣はどこにも見当たらない。
「どこにいったのよあの子は……」
それからしばらくして、ライドキャリアから敵機接近の警告シグナルが送られてきた。こんな場所に敵機なんて考えられないので、またガーディアンが接近してきたと思っていたのだけど──
「メアリー、未確認の魔導機が接近しています、迎撃に向かいなさい」
「未確認の魔導機? こんな場所にどうして」
「それはわかりません、ですが、どんな理由で現れたにしろ、封印解除の邪魔をする者は排除する必要があります」
そんなに巨獣の封印解除が大事だとは思わないけど、調査隊を守る事は私の任務の一つなのは間違いない。いくらメシア一族という存在が胡散臭くても、今は職務を全うするしかなかった。
私が駆けつけると、すでに戦闘は始まっていた。敵は三機、手練れのハイランダーの数人が簡単に撃破された。並の相手ではないのは明白だ。
「貴様たちは何者だ! こちらがエリシア帝国の調査隊だと知っての狼藉か!」
エンリケが外部出力音で相手に警告を発する。エリシアの名を出せばほとんどの勢力は怯むはずだが、この相手はそうならなかった。
「エリシア帝国だろうがなんだろうが、巨獣の封印を解いてる連中に狼藉もなにもあったもんじゃないでしょう!」
どうやら巨獣の封印の解除に気付いて、それを阻止しにきたようだ。個人的には向こうを応援したいくらいである。
「ふっ、巨獣の封印の事を知ってるとは……残念だがお前たちには死んでもらう必要があるようだ」
「やれるものならやってみな、ここに倒れてる連中と同じ程度の実力じゃ、無理だと思うけど」
「安心しろ、ここからは全力でいかせてもらう!」
エンリケが威勢のいい事を言ったけど、その作戦は、私とエンリケで敵を抑え、その間に他の魔導機が敵を取り囲んで倒すと言う単純なものだった。あまり乗り気では無いが、協力を拒否するわけにもいかず、エンリケと共に敵機へと接近した。
私はトライデントで敵機を攻撃した。しかし、その攻撃は軽く弾かれる。敵の反撃は素早く鋭かった、咄嗟に後ろに体を引いて敵の反撃を避ける、敵の剣はヴァリアプルの胸を掠り、抉りとる。ヤバかった、もう少し避けるのが遅かったら致命傷になっていたかもしれない。
エンリケも敵の白い機体に翻弄され、包囲しようとしていた魔導機たちも金色の魔導機に完全に抑え込まれていた。本当に何者なのか、これほどの実力者なら、かなり高名なライダーだと思うのだが魔導機の特徴からは思い当たる人物はいない。
「ぐっ、お前ら、本当に何者だ! ハイランダー以上のこの調査隊相手に……」
「エンリケ! 残念だけど、この敵は強い! 撤退しないと全滅するわよ!」
「チッ……くそ、しかし、そろそろ封印が解かれるはずだ、それまでは持ち堪えるんだ!」
私は撤退を示唆することにより、相手に無駄な戦闘を回避する選択肢を与えようとあえて外部出力音でそう言ったのだが、何を考えてるのかエンリケは封印の解除の状況を相手に伝えてしまう。
予想通り、封印の解除の阻止が目的の敵は攻撃を激化させていく。一機、また一機と倒されて、さらに私のも白い機体が急速に接近してきた。すぐにトライデントを構えようとしたのだが、遅かった。白い魔導機の細身の剣が見えない速度で振り上げられ、トライデンを持つ腕ごと斬り飛ばされた。
この白い魔導機には勝てない、そう思った時、ライドキャリアから封印解除の連絡が届いた。それを聞いたエンリケが喜びの声を上げる。
「ハハハハハッ! ここの封印も解かれたようだぞ! もうお前らの相手をしている必要もない! 撤退するぞ!」
撤退する理由ができたエンリケは、そう言うと一目散に退却する。他の魔導機も逃げ出すようにライドキャリアへと戻っていく。
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