第179話 もう一つの封印に

残りの封印は二つ、ライドキャリアに戻ると、遺跡で聞いたラフシャルの話をみんなにした。


「厄介だな、そのルシファーってのは……」

ジャンが怪訝そうにそう言う。やはりジャンは頭がいい、すぐにルシファーの危険性を理解したようだ。


「そいつも厄介だけど、巨獣の復活は絶対に阻止しないとダメだね」

「当たり前ですわ、あんな怪物がゾロゾロ湧き出す世界なんて、想像しただけで鳥肌が立ちます」


「ラフシャル! 残りの封印はここから近いのか?」

「どちらもライドキャリアで3時間くらいの場所だね、一つ目の封印が解かれてそれくらい経過しているから、ルシファーはもうどちらかの封印を解除しているかもしれない」

「よし、部隊を二つに分けるぞ。勇太、アリュナ、ナナミ、お前たちは別行動だ、三人で封印の一つに向かってくれ」

「ええっ! ちょっと、ジャン! 別行動なら私と勇太でもよろしいのではなくって!」

「馬鹿野郎、お前と勇太を組ませたら、戦力バランスが狂うだろうが、こっちの戦力が弱くなりすぎだ」

「アリュナやナナミがいれば、一般的な敵なら問題ないですわよ!」

「一般的な敵じゃないのが来たらヤバイだろ! いいからリンネカルロはこちら組だ、我慢しろ!」


ジャンにそう言われてリンネカルロが拗ねている。どうやらリンネカルロはムスヒム本隊との戦いを二人で戦ったのが余程しっくりきたのか、いつも俺と組みたがる。まあ、相棒として認めてもらっていると思うと嬉しくはあるけど。


残りの封印は破られたらヤバイのは俺も理解している。すぐにアリュナとナナミを連れて、封印の一つに移動を開始した。


「大体の場所はさっき聞いたけど、同じような風景で迷いそうだな……」

そう不安を口にすると、通信でラフシャルがこう言ってきた。

「迷ったらフェリが場所を知っているから聞くといいよ」

「あっ、そうなんだ、なら安心だな。よろしくなフェリ」

「はい、お任せください」


フェリって本当に物知りだよな、こんな場所の遺跡の場所を知ってるなんて──


俺とアリュナとナナミは、ライドキャリアから魔導機に乗り、徒歩で移動していた。少し早歩きくらいの移動速度で、ライドキャリアと同じくらいのスピードで目的地へ向かう。


「勇太、そういえば渚とは連絡してるの?」

ナナミが不意にそう聞いてきた。

「ああ、頻繁に向こうから話しかけてくるからな、毎日のように話をしてるよ、まあ、暇なんだろうな」

「ふ〜ん、そうなんだ」

「まだ暇な渚はわかるけど、忙しいはずのラネルからも通信がよくくるんだよな、国家元首ってのも案外、暇なのかもしれないな」

「本当にそう思ってるのかい、勇太」

「えっ、違うのか?」

「たくっ、伝説的に鈍い男だね、まあ、そこもいいところなんだけど」

「えっ、どう言う意味だよアリュナ、教えてくれよ」

「勇太、国家元首ってのが忙しいのはナナミにも理解できるよ」

「なるほど、ラネルは暇じゃなくて、忙しいのに無理して通信してきてくれてるのか。なんとも律儀なやつだな、防衛契約している傭兵相手にそんな気を使わなくていいのにな」


そう俺が言うと、アリュナもナナミもなぜか呆れたように何も言わなかった。


たわいない話をしてると、フェリが伝えてくる。

「マスター、もう少しで封印の遺跡に到着します」

「ありがとう、フェリ、後、遺跡の様子はわかるか? 何か変わった事とかないか」

「少しお待ちください、遺跡周辺をスキャンします」

そう言ってフェリは何やらピキンピキンと音を立て始めた。

「遺跡周辺に複数の物体移動を検知、一隻の大型艦も確認いたしました」

「こっちが当たりのようだ。アリュナ、ナナミ、戦闘になるぞ」

「了解、巨獣を復活させようとするような狂った奴には退場してもらわないとね」

「ナナミも巨獣なんて怖いから絶対に復活なんてさせないんだから!」


アリュナもナナミも封印を解く奴らに対して敵意を剥き出しにしている。巨獣がどう言うものかはわからないけど、俺も全力でそれを阻止しようと強く思った。

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