第175話 一つ消えて
ガーディアンは確かに強いが、実際戦った感覚では人間のダブルハイランダーほどの脅威は感じられない。ラフシャルが言うように所詮は人工物と言ったところだろうか。
結局、ラフシャルの言う、白いガーディアンも登場する事もなく、百体ほど襲ってきたガーディアンを全て殲滅して俺たちはライドキャリアへと帰艦した。
「お疲れさん。また、来るかもしれないから、今のうちに休んどけよ」
戻ると、直ぐにジャンが労いの言葉をかけてくれる。こう言う気遣いができるのはジャンの良いところだよな。
「ガーディアンって、ダブルハイランダーって割には大した事なかったわね」
同じダブルハイランダーであるアリュナが、率直な感想を言う。
「そうね、良くてハイランダー……下手するとハーフレーダー並みに感じたわ」
エミナも同意する。みんな同じように感じていたみたいだ。
「いや、そう思ったのは無双鉄騎団が、軍としての戦闘力が向上しているからだよ。さらに言うと、ガーディアンに指揮をするリーダー機が不在だったのも大きいかもしれないね」
「リーダー機がいるとそれほど変わるのか?」
「別物になる、組織的に動くガーディアンは恐ろしいよ」
ラフシャルが染み染みそう言う。そうだとすれば、リーダー機が不在であったのはラッキーだったかもしれない。
それからラフシャルの案内で、封印の一つがある遺跡に到着する。遺跡の様子を見て、ラフシャルの表情が強張った。
「どうやら少し遅かったようだね」
「なんだ、封印が解かれてるのか?」
「おそらくは……まあ、とりあえず中の様子を見てくるよ」
軽く言うラフシャルに対して、ジャンは少し考えてこう言う。
「そうか……しかし、一人じゃ危ねえだろう、何人か一緒に行かせよう」
ラフシャルが中の様子を調べる為に、俺とアリュナ、それと護衛として、元は白兵戦が専門だったと言うメカニック見習いのダルムとバルムが同行した。
「双子は、有名な闘士だったって聞いたけど」
「へい、姉さん、リュベル王国の赤鬼、青鬼と呼ばれていました」
アリュナの問いに、バルムがそう答える。
「えっ! 嘘でしょう、あんた達があのリュベルの双鬼なの?!」
「ヘヘヘっ、恥ずかしながら」
「なんだ、アリュナ、知ってるのか?」
「リュベル王国の双鬼、白兵戦では大陸最強と言われた怪物だね。数年前のヴァルキア帝国との大きな戦いで、魔導機の侵入できない洞窟内の戦闘で、敵兵一万人を斬ったって話よ。それに噂では、生身の体で魔導機に勝ったって聞いたけど、あれは本当なの?」
「はははっ、いや、生身の体で魔導機なんか倒せるわけないしょう。あれは完全なデマですわ、実際はロープを使って魔導機のコックピットに飛びついて、工具を使ってハッチをこじ開けて、中のライダーを斬っただけですよ」
いや、それでも十分に凄いと思うんだけど……
「さて、二人の武勇を披露する、格好の相手が現れたみたいだね」
途中から魔導機の通れない細い通路になったので、途中から俺もアリュナも歩いて遺跡を進んでいた。だから、ラフシャルの言う、格好の相手に対して無力であった。
通路の先からゆっくり近づいてきたのは牛の頭に屈強な人の体をした石像でできた怪物で、大きな斧をかついでいる。怪物は明らかな敵意をこちらに向けていた。
「小型ガーディアンだね、生身の人間よりは遥かに強いから気をつけた方がいい」
「大師匠、任せてくだせえ。いつもメカニックで迷惑かけてる分、ここでお返ししやす」
そう言って二人は、ゆっくりと怪物へと近づいていく。大柄な二人より、さらに大きな体の怪物相手に、全く怯んでいない。
最初に動いたのは小型ガーディアンであった。大きな斧を軽く振り回し、ダルムとパルムに襲いかかる。
大きな体から繰り出される威力抜群の斧の攻撃を、避けると思ったのだが、驚く事にパルムはその攻撃を片手で受け止めた。そしてふんっ、と力を込めて、止めた斧ごと怪物を壁に叩きつける。
大陸最強は伊達ではないようだ。二人の強さを見せつける本番はここからだった。壁に叩きつけられた怪物が立ち上がろうとする──しかし、素早い動きでダルムが怪物に近づくと、牛の頭を片手で掴み、そのまま軽く持ち上げる。そしてゴミでも投げるようにパルムの方へと放り投げた。投げられた怪物は、投げられた反動を利用され、そのままフルスイングで強力なラリアットを首元に受ける。
再度壁に叩きつけられた怪物は、ラリアットを受けた首元からヒビが入り、そのままボロボロと崩れていった。
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