第173話 ラフシャルの不安

「巨獣の封印を解く、第一段階ってどう言うことだよ」


ジャンがそう聞くと、ラフシャルは不安な表情でこう答える。


「巨獣の封印を解くにはまずは遺跡を起動して、遺跡の機能を使って、三つの封印を解いていく必要があるんだ……一つでも封印が健在なら大丈夫だけど、遺跡を起動した人物の狙いが巨獣の封印を解くことだったら、かなりやばい事になる」


「何年も経ってるんだろ、遺跡がたまたま起動したんじゃないのか?」

「いや、起動するだけでも、かなりの知識と技術が必要なんだよ、偶然、遺跡が起動するなんてことはあり得ない」


「チッ……どうなっちまうんだ」

「巨獣の封印も心配だけど、もう一つ……巨獣の封印を利用して、人類でもっとも危険な男も封印されている……僕には、そっちの方が心配なんだけどね……」

「もっとも危険な男?」

「あっ、長くなるからその話はまた今度にしよう、今は封印を確認したい。ジャン、悪いけど、採掘は後回しにしよう、人類の危機だ、封印の確認に向かってくれるか」


「くっ……タダ働きかよ、まあ、しかたねえ、巨獣が復活したら商売も何もないからな、どこへ向かえばいいんだ」


確かにラフシャルの話からすると、呑気に採掘をしている場合ではないようだ。俺たちはラフシャルの案内で、三つの封印を確認する為に移動を開始した。



移動を開始して、しばらくすると、不意にフガクに大きな衝撃が走る。ドドドッと地鳴りのような音と同時に艦を大きく揺らす。


「なっ、なんだ! 敵襲か!」


「見て、何かウヨウヨとこっちに向かってくるよ!」

ナナミが外を見ながらそう報告する。


「まずいな、起動どころか本格的に防衛システムも発動しているみたいだ……留守を守る先鋒のガーディアンだけじゃなく、遺跡に設置されている全ガーディアンが動き出している」


「とにかくガーディアンだろうがなんだろうが、戦うしかねえ、全員出撃準備だ!」


ジャンの言葉に、ライダー一同が頷く。そして格納庫へと向かった。


「勇太とリンネカルロ以外は固まって戦うよ」

「それは褒め言葉としてとっておきますわ」

アリュナの仲間外れ発言に、リンネカルロがトゲのある返しをする。


「そうだな、ガーディアンの戦闘力を考えたらそれがいいだろう」

ジャンもアリュナの指示に賛同する。ダブルハイランダー並みのルーディア値と聞くと、油断はできない。確かに固まって戦う方が安全だろう。


ガーディアンは人形ではなく、獣のような形をしていた。四足歩行で移動するその姿を見ると、かなり素早そうだ。


ガーディアンの攻撃方法は体当たりと噛みつき、そして一部のガーディアンは、口から炎の玉を吐き出していた。どの攻撃もかなりの攻撃力がありそうだったが、ナナミ、ロルゴが前衛となって攻撃を受け止め、他のメンバーが一体ずつ撃破していく。リンネカルロはアリュナの指示通り、一人で雷撃を駆使して、ガーディアンを一掃していった。


俺は一人、ガーディアンの塊に向かって突撃していた。力を温存する余裕もないので、いきなり本気の無双モード発動である。光る拳を駆使して、ガーディアンを粉砕していく。


「白い機体のガーディアンがいたら気をつけて、そいつは成長型AI搭載のリーダー機で、ルーディア値10万のエクスランダーの怪物だから、勇太が対応するといいよ」


ラフシャルがそう注意を促す。だけどガーディアンのほとんどは黒っぽい機体で、白い機体は見当たらない。まあ、ルーディア値10万の化け物なんて相手にしたくないから、いない方がいいんだけど。


「おい、ラフシャル、ルーディア値10万って、そんな化け物もいるんなんら先に言え!」

ジャンがそんな話聞いてねえぞとばかりに文句を言う。


「10万って言っても所詮人工ライダーだからね、天然の怪物の勇太なら負けやしないよ」

「そうか、なら大丈夫だな」


「いや、どうしてそんな結論になるんだよ! ラフシャル、さっき成長型AIとか言わなかったか? 変な成長してて、本当の化け物に進化してたらどうするんだよ!」


「あっ、そうか、確かにその可能性もあるね」


ラフシャルは頭はいいはずなんだけど、ちょっとうっかりしてるところがあるんだよな……

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