第172話 オリハルコン鉱脈

アルレオの両手には、しっかりと持った巨大なツルハシ。それを硬い岩盤に叩きつける。金属同士がぶつかる高い音が響き、岩盤の一部を削り落としていく。


「オリハルコン鉱石ってどんな色なんだ」


ガツガツと岩盤を削りながらふと自分が何を探しているのか不安になりそう聞く。

「黒に近い青系の色だ、少し淡く光ってるからすぐにわかると思うぞ」

さすがは商人で知識豊富なジャンだ、鉱石の情報も頭に入っているようだ。しかし……知識はあるが、肉体労働は苦手なようで、ラフシャルが作った掘削機の操作には戸惑っているようだ。


「ラフシャル! これ、どうやるんだ! 軸がぶれてうまく動かせねえぞ!」

「しっかり腰を据えて持たないとダメだよ、ほら、ダルムとバルムを見てみな、彼らは上手く扱えてるよ」

「あの筋肉バカの双子と一緒にするなよ! こちとら頭だけで生きてきてんだからな!」


ラフシャルはルーディア値関係なく、誰でも扱えるようにと小型重機を作ったようで、その分、肉体への負担が大きくなってしまったようだ。筋肉双子に比べると圧倒的にひ弱なジャンは、重機を扱っていると言うより振り回されていた。


そんな無双鉄騎団の一斉採掘にて、最初の成果をあげたのは意外な人物だった。


「ジャン……これ、オリハルコンか?」


ロルゴが淡く光る鉱石を見せながらそう言ってきた。

「おっ! ロルゴ、まさにそれがオリハルコンだ! どこで見つけたんだ! 一つ見つければ、全体の鉱脈の流れがわかるかも知れねえからな!」


ロルゴがオリハルコンを見つけてくれたおかげで、鉱脈の全体像が見えてきたみたいだ。ジャンの指示で採掘が行われ、次々とオリハルコンを掘りあってていった。


「よし、50キロを目標にするぞ! みんながんばれ!」

「今、どれくらい取れてるんだい?」


ジャンの目標提示に対して、アリュナがそう聞いいた。

「まだ1キロも取れてない」

「ちょっと、もう半日はみんなで頑張っていますわよ、それで1キロも取れてないのに、目標が高すぎですわ!」

リンネカルロが採掘に飽きたのかそう愚痴をこぼす。


「昔はもっとポンポン取れたんだけどね、やっぱり鉱脈が痩せ細ってるようだね」

「それでも俺の見立てでは50キロは取れる! ブツブツ言ってないで掘った掘った!」


ジャンはいつの間にか重機を投げ出し、現場監督にシフトチェンジしている……そう言うの本当に上手いよな──


結局、三日の採掘で10キロくらいしか取れなく、目標には届かなかった。そこでラフシャルが提案する。


「よし、ポイントを変えよう! 鳳凰石も取らないといけないし、奥にもっと良い場所があるからそこに行ってみよう」

「なんだよ、そんな好ポイントがあるなら最初から言えよな」

「ちょっと、ここより危険なんだよ。遺跡が近くにあって、ガーディアンがウロウロしてるからできれば行きたくなかった場所なんだ」

「ガーディアンだと……古代文明の遺物か……ハイランダーを簡単に駆逐するって話は聞いたことあるけど本当なのか?」

「ハイランダーくらいじゃ歯が立たないよ、ガーディアンは人工ライダーに操作されている魔導機なんだけど、人工ライダーのルーディア値は25000だよ」

「うわっ、ダブルハイランダーかよ」

「でも、無双鉄騎団なら大丈夫、勇太もいるし、ガーディアンが出てきてもなんとかなると思うよ」

「そうだな、ガーディアンなんて勇太がなんとかするだろ。よし、奥のポイントに移動しよう!」


たくっ……頼りにしてくれてるのは嬉しいけど、俺ならなんとかするだろうって安易な考えやめた方がいいと思うぞ。



それからフガクで奥のポイントへと向かう。そんなに遠くはないそうだけど、この移動の時間を使って食事などをとっておく。野菜のスープを飲みながら、焼き立てのパンを食べる。食事の時間はどこの世界、どの場所であっても最高だ。そんな幸せを噛みしめながら堪能する食事中、ラフシャルの大きな声でその幸せのひと時が中断された。


「たっ、大変だ!」


あまりに大騒ぎしているので、食事を放り投げてブリッジから外を見ていたラフシャルの元に俺やジャンが駆けつける。

「どうした、ラフシャル! 何があったんだ」


「いっ、遺跡が起動している……」

「遺跡が起動? どう言うことなんだ?」


そう聞くと、ラフシャルは噛み締めるようにこう伝えてきた。


「遺跡の起動は、巨獣の封印を解く第一段階なんだよ」


ラフシャルの言葉に、ジャンも俺も、他の仲間たちも……体の芯から緊張が広がっていった。

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