第171話 巨獣の亡骸
「もう少しで海流の継ぎ目に出るから、そこから陸に上がろう」
ラフシャルが外の景色を見ながらジャンとフィスティナにそう指示を出す。
「似たような景色なのによくわかるな」
ジャンが感心したようにそう呟くと、ラフシャルは意外そうにこう言う。
「色合いや形も全然違うだろう。ほら、あそこなんて独特の形状してるし」
「……天才は見てる景色が違うのかね……」
こればかりは俺もジャンに同感で、何が違うのかさっぱり分からなかった。
ラフシャルの言う海流の繋ぎ目から陸へと上がると、広大な鍾乳洞のような通路を奥へと進んでいく。巨大な正方形の岩の前にくると、ラフシャルがまた何かの機械を操作し始めた。
「さて、巨獣の巣へと繋がる扉を開けるよ」
「まさか、でっけえのがゾロゾロ出てきたりしないだろうな」
「巣は完全に封印されてるから大丈夫だよ……多分……」
「多分ってなんだよ、多分って!」
「封印されて沸きは止まっているけど、生き残りがいる可能性はあるからね」
「おいおい……マジかよ……」
「まあ、いても大した数じゃないよ、勇太に片付けて貰えばいい」
「そうだな、勇太になんとかして貰おう」
「おいっ、二人とも何勝手なこと言ってんだよ」
俺の抗議など聞く耳を持たないのか、ジャンとラフシャルは大きな岩が真っ二つに割れて新たな道が開かれるのを見ていた。
「巨獣の物語を子供の頃から聞いている身としては、やっぱりいい気持ちはしないね」
開いていく岩を見ながら、珍しくアリュナが緊張の表情をしている。他のメンバーも巨獣の話を知っている連中はみな恐ろしげにそれを見ていた。
少しの時間、開かれた扉を警戒しながら見ていたが、完全に開かれた巨獣の巣の入り口からはゾロゾロと何かが出てくることはなかった。
「よし、フィスティナ、警戒しながら前進だ」
ジャンの言葉に従い、フィスティナはフガクを巨獣の巣の中へと前進させていく。
「あれ、見て!」
ナナミが何か見つけたのか、ある方向を指差して叫んだ。俺たちの視線は一斉にナナミの指差す方向へ向けた。
「なんだよ、あれ……」
「嘘でしょう……巨獣ってあんなに大きいの?」
そこにあったのは大きな白い骨であった。骨は生き物の形をしていて、その大きさはサッカーグランドくらいありそうだった。
「ミドルサイズの巨獣の死骸だね、まあ、あれくらいならアルレオだけでもなんとか倒せると思うよ」
「いやいや、待て、ラフシャル、ミドルってことはあれよりでかいのがいるのか?」
「そうだね、フガクより大きな巨獣も存在するし、僕は見たことないけど、話に聞いたところだと、それよりも大きな個体もいるらしいよ」
「そんなのどうやって倒すんだ」
「まあ、巨獣の強さは大きさだけじゃないからね、小さくても強いのもいるし、なんとも言えないかな」
「小さくても強いのがいるなら、大きくて強いのもいるんだろ、ちょっと想像したら怖くなってきたな」
「勇太の為のクラス2専用機が完成すれば、それすら恐れる必要ないと思うけどね」
「そんな怪物相手に恐れる必要がないって、どんな魔導機作ろうとしてるんだよ……」
巨獣の巣には、骨になった巨獣はチラホラと見かけるが、生きている巨獣の姿は見当たらなかった。やっぱり封印されてから1万年ほど経過しているから完全に絶滅したんじゃないかとラフシャルも予想している。
「そろそろオリハルコンの鉱脈に到着するよ」
ラフシャルが周り景色を見てそう言う。素人の俺には変化が見られない景色だけにいったいどんな感覚をしてるのか感心する。
「よし、少しでも発掘できればここまでの手間賃にはなるだろう、みんな必死に探すんだぞ」
「なんだよ、ジャン、お前は採掘しないのかよ」
「採掘なんてライダーの仕事に決まってるだろうが、俺は現場監督だ」
「いや、そうでもないよ、採掘用の小型重機を作ったから魔導機じゃなくても採掘できるよ」
「チッ、余計なことするなよラフシャル」
「だってみんなで掘った方がたくさん取れるだろ」
確かにラフシャルの言う通りだ。ブツブツ言うジャンも強制的に採掘を手伝わせ、みんなでオリハルコンの採掘に取りかかった。
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