第168話 大浴場
フガクには大勢の乗員に対応する為に大浴場が二つほどある。それを女風呂と男風呂で使い分けていて、当たり前だがそれぞれ異性禁制である。まだ、乗員を雇う前などは男風呂を使うのは俺とジャン、アーサーとロルゴの四人だけだったけど、今は多くの男性乗員がいる。いい意味でも悪い意味でも男臭くなった男風呂では、女性陣にはあまり聞かせられない下賤な話で盛り上がることもしばしば……
「やっぱりアリュナさんの威圧的なほど強調されたボディーが一番だよな」
「バカ言ってんじゃねえよ、リンネカルロ様の洗練された気品ある体に勝るものなどねえ!」
「ふっ、二人ともわかってないな、本当の女性の魅力と言うものを──見た目の美しさだけではなく、普段からの立ち振る舞いなどから考慮すると、大人の女性としての魅力はエミナさんが最高なのは明白だ」
「いやいやいや、全員わかってない。実はライダーではないから目立ってないけどよ、フガクの操縦を一手に引き受けてるフィスティナ嬢は、とんでもない美人だってことをよ、私生活をあまり見せないあのミステリアスな雰囲気は男心を擽らねえか」
男性乗員たちの人気はこの四人に集中していた。ナナミやファルマも可愛いと思うけど、やはり大人の女性の色気には勝てないってことなのかな。
「勇太さんはどう思いますか」
一人の乗員が何気なく俺に話を振ってくる。
「えっ、何の話だ?」
誤魔化すようにそう返事する。
「いや、無双鉄騎団で一番いい女は誰かって話ですよ」
「いや、みんな魅力的だと思うけど、誰が一番とか考えたことないな」
「まあ、そうですよね、勇太さんは優しいから、はっきりとアリュナさんとは言えないですよね」
「だから、勇太さんの一番がアリュナさんだって勝手に決めんなよ! リンネカルロ様かもしれねえだろ!」
「お前には勇太さんの心の声が聞こえねえのか、アリュナさんって言ってんだろうが!」
また白熱した討論が始まる。本当に俺はみんな魅力的だと思ってるんだけどな……
「おい、お前たち! アリュナさんが一番だとか、リンネカルロさんが最高だとか、エミナさんに惚れたとか、フィスティナさんは美人だとか言ってるけどよ、本当のナンバー1を忘れてねえか!」
メカニック見習いの双子の兄弟の一人、ダルムが声高らかにそう訴えた。
「なんだよ、ダルム、その四人以外に一番候補がいるのか?」
「そうだな……ちょっと想像もできないぞ。一体誰なんだよ」
「メカニック班の星、ライザさんだ!!」
ダルムがそう言うと、その場の時が一瞬止まった。いや、ライザも可愛いとは思うけど、ちょっと女性としての魅力ってなると確かにみんなの反応は理解できる。ライザの作業着姿はパッと見、男の子にも見えるからな……
「馬鹿野郎! ダルム! 貴様、ライザさんをそんな目で見てたのか! 我弟ながら情けないぞ!」
大声で怒りの声をあげたのはメカニック見習いの双子の兄、バルムだ。
「なんだよ、バルム! 貴様はライザさんに魅力を感じないのか!」
「ふっ、確かに作業の合間に見せる、ライザさんのあのちょっとした女性の仕草は最高に素敵だ。しかしな、ライザさんは俺たちの先生でもあるんだぞ、それをそんな変な目で見て……」
確かに双子に色々教えているのはライザという話は聞いている。先生に対してそんな邪な目で見ないようにするなんて、見かけによらずバルムは真面目なんだな。
「バルムよ、貴様の本音はわかっているんだぞ、そんなこと言って自分の気持ちを誤魔化しているが、ライザさんより素敵だと思っている人がいるな」
「チッ……さすがは双子の兄弟だな……俺の気持ちを見抜くとは……」
「誰だかはっきり言ってみろよ!」
「くっ……俺の心を離さない最高の女性は……ラフシャルさんだ!」
「なっ! いや、バルム、ラフシャルはああ見えて、男だからな」
俺は思わずそう注意するが……
「もちろん男だってのは知ってます、だけど……もう性別なんてどうでも良くないですか! 可愛けりゃなんでもよくないですか!」
うっ、この考えをラフシャルに伝えるべきだろうか……ちょっと真面目に悩むぞ。
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