第169話 大浴場/ナナミ
フガクには大きなお風呂が二つある。一つは男の人用、もう一つは女の子用に分かれてる。本当は勇太と一緒に入りたいけど、それはダメだってみんなに言われる。どうして勇太と一緒に入っちゃダメなんだろう、最初のお風呂は一緒だったのに不思議だ。
それにお風呂ではちょっと憂鬱になることがある、それはどうしてかと言うと……
「ナナミ、ちょっとそこの石鹸とって」
ナナミの隣に来てそう言うアリュナに石鹸を渡した。それにしてもアリュナの体は凄いな、全体的には引き締まった体なのに、胸はドーンっと出ていて……ナナミは自分のぺちゃんこの胸とアリュナの威圧感すらあるそれを比べてため息をつく。ナナミもいつかあんな感じになるのかな。
「ごめん、ナナミ、シャンプー切れたから貸して」
エミナがそう言ってお願いにくる。エミナの体は無駄が一切無く、理想的な女性の体をしていた。アリュナほどではないけど、ちゃんと出るところは出てるし、お尻がキュッと上がって綺麗だ。ナナミもエミナみたいなお尻になりたいけど、どうすればいいんだろう……
「ナナミ、ちょっと背中流して欲しいですわ」
リンネカルロがいつものようにナナミにお願いしてくる。いつの間にかリンネカルロの背中を洗うのは、ナナミかファルマの役割になっている。
リンネカルロの肌は白くスベスベだ。どんな魔法を使ってるのか本当に掌が吸い付くほどきめ細かく、触っているだけで気持ちがいい。胸もアリュナに匹敵するほど大きく、そして形が良かった。
「あら、リンネカルロさん、羨ましいわ。ナナミさん、次は私もお願いできるかしら」
フィスティナがそう言ってくる。フィスティナはお人形さんのように綺麗だ。ちょっと怖くなるくらい人間離れした美しさで、壊れそうで触るのも躊躇する。
「あら、ライザがこんな時間にお風呂に来るなんて珍しいわね」
アリュナが、タオルで体を隠して入って来たライザを見てそう声をかける。
「たまにはアリュナ様と一緒に入ろうかと……」
「嬉しいこと言うわね、だったら、そんなタオルで隠してないで、全部私に見せなさい」
そう言いながらライザのタオルをパッと引っ張った。
「あっ、アリュナ様、ダメです! 恥ずかしい!」
アリュナにタオルを取られて、ライザが全てを曝け出した。いつも作業着で男の子みたいな格好しているライザだけど、裸になると辛うじて女の子だというのがわかる。やっぱりライザはナナミと同類だ。ライザの極小の胸を見てそう思うと少しだけ気持ちが癒される。
「ナナミ、一緒にあっちの湯船に入ろうよ」
来たな裏切り者! 歳も背丈もそんなに違いないのに、ファルマの胸はいい感じで膨らんでいる。それを指摘すると、いつもこう返してきた。
「私はナナミの体の方が羨ましいよ、胸が無くても、こんな呪いの体よりはマシよ」
それを言われると、もう何も言えなくなる……どうにかファルマの呪いを解くことはできないのだろうか……
お風呂場では勇太の話になることが多い。今日は珍しくフィスティナが勇太の話を振ってきた。
「勇太さんは決まった方とかいるのでしょうか」
その言葉に、アリュナとリンネカルロが反応する。
「まあ、いないみたいだけど、一番近いのは私かな」
「あら、アリュナ、それは勇太本人から聞いたのですの?」
「聞いてなくても普段の言動でわかるものでしょう?」
「それはそれは勝手な思い込みですこと、勇太もさぞ困ってらっしゃるわね」
「どこぞの王女さんよりは思い込みは激しく無い方だけどね……」
「思い込みの激しい王女なんてこの艦にいるのかしら、初耳ですわ」
わわわっ、また始まっちゃった……普段はそうでも無いけど、勇太の事になると、途端にアリュナとリンネカルロの間に不穏な空気が流れる……
「二人ともリラックスしてるんだからやめてよね、お風呂入ってる時に揉めないでよ」
こうなるとだいたいエミナが仲裁に入ってくれる。しかし、今日はナナミも主張したい。
「勇太とは、ナナミが一番付き合い長いんだから、ナナミが一番近いよ!」
言えた……反論されるのが怖かったけど、そうはならなかった。それどころかどうしてかみんな笑い出した。
「ハハハッ、そうよね、ナナミが勇太と一番付き合いが長いよね」
「フフフッ、ナナミには敵わないですわ」
「だけど、そう言うことは、もう少し色んなものが大きくなってからだな」
アリュナはナナミの体を見ながらそう言った。ふんっだ。大人になって、リンネカルロより形が良くて、アリュナより大きな胸になるんだから! そしたら勇太だって放っておかないんだから。
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