第165話 アムリア連邦

エモウ、シバリエ、ルルバ、リネアの東部の有力国が中心となった連邦国家構想は、瞬く間に東部諸国へと伝達された。その意図が反ヴァルキア帝国であることは明白で、ヴァルキアの軍事力に怯えていた小国の指導者たちはこぞって連邦への参加を表明してきた。


最終的に東部連邦国家への参加国は47カ国にも及び、その国力はヴァルキア帝国に匹敵する。


「結局、ラネル王女は初代国家元首を引き受けたのか」

ジャンが何やら情報誌を見ながらそう聞いてきた。

「二年の約束で引き受けたみたいだよ、これから大変そうだな」

引き受ける前にラネル本人に相談されたのだが、政治や国のことなんて分からないから、期限付きで引き受けたらと無難なことを言ったのだが、まさか本当にそうするとは……



「ちょっと、ジャン! ちょっと話があるんだけど!」


凄い勢いでライザがやってきた。その後ろからオビワン、そしてダルムとバルム、とラフシャル以外のメカニック班が揃ってやってきた。


「どうした、ネジでも足らなくなったか」

「違うわよ! オリハルコンと鳳凰石の採掘の話はどうなったのよ、材料が揃わないとルーディアコアの生成ができないでしょ!」

「なんだよ、お前ら、ルーディアコアの生成がしたいのか?」

「当たり前でしょう! ルーディアコアの生成に興味のないメカニックなんて存在しないわよ、今まで未知の技術だったものが目の前で、実際作る所を見れるのよ」


「なるほどな、まあ、確かにそうかもしれねえな、エモウ王国との契約も切れるし、そろそろ出発してもいいかもな」

「再契約の話は出てないのかい」

ジャンの決断に、アリュナがそう聞く。

「正式に連邦国家が樹立したら、新しく契約を結びたいと考えてるみたいだけどな」

「連邦国家って相当デカくなるんでしょう、だったらメルタリアみたいに防衛契約を結んだらどう」

「そうだな、連邦国家になればヴァルキアでもそう簡単には手を出さないだろうし、うまくいけば何もしなくても報酬ががっぽがっぽてな感じになりそうだな」

「また、そんな都合の良いとこだけ考えて……」


「勇太、それより、出発するってなると、渚はどうするんだい、一緒に連れて行くのかい」


「それは本人の意思次第かな、一応、渚はアムリア所属だし、聞いてみないと分からない」

「いいのかい、せっかく会えた幼馴染なのにまた離れ離れになるよ」

「通信共有したからね、前と違っていつでも連絡はできるから、そんなに寂しい感じはないよ」


前は安否すら分からず心配だったけど、これからは連絡も取り合えるから安心だ。


その後、渚にそろそろ出発すると言う話をして、念の為に一緒にくるかと尋ねたのだが、彼女も同じように考えていたのか、こう言ってきた。


「誘ってくれてありがとう。でも、今からラネルが忙しくなるし、彼女のそばにいてあげないと……」

「そうか、相変わらず友達思いだな」

「そんなんじゃないよ、勇太とはいつでも連絡できるようになったし、会いたくなったら会えばいいでしょう」


「まあ、確かにそうだな」



その後、正式に連邦国家が樹立した。東部諸国連邦、正式名称を、初代国家元首の出身国から取り、アムリア連邦とした。連邦加盟国47か国、支配下魔導機数18000機にもなる超大国の誕生であった。


出発前に、アムリア連邦から無双鉄騎団に正式に契約の話がきた。俺とジャンはラネルに呼び出される。


「アムリア連邦は、永続的に無双鉄騎団と契約を結びたいと考えています」

「俺たちは高いぜ」

ラネルの言葉に、ジャンが不敵にそう言い放つ。

「金額はそれ相応にお支払いします。問題は契約内容ですね」

「基本的に傭兵は自由であるべきだ、拘束されるのは好きじゃねえし、防衛契約って形でどうだ?」

「防衛契約ですか……戦争が起これば駆けつけてくれるってことですね」

「そうだ、その条件でなら受けるつもりだ」

「本当は側にいて欲しかったですけど……」

そう言いながらラネルはなぜか俺を見つめてくる。


「わかりました。防衛契約でお願いします。それでは報酬ですが、契約金で10億、年間で3億でどうでしょうか」


メルタリアの条件よりかなり良いものだった。ジャンも納得したみたいで二つ返事で了承した。

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