第158話 共に戦う

「あれ、どうしてお前がここにいるんだ? それに腕も修理したようだけど、あまり時間も経ってないのに急いで直したのか?」


通信共有ができていないので言霊箱では話ができない。だから外部出力音そう聞いたのだけど返事がなかった。その代わりにその魔導機は、何かの意思を伝えるかのように敵機に向かっていった。


大型で力強い敵の魔導機に対して、細くてひ弱そうなその魔導機は素手で攻撃する。魔導機の関節を折ったり、頭部を捻って倒したり、どこからそんな力が出てくるんだと不思議に思うくらいギャップがある動きで、自分より大きな敵をバッタバッタと倒して行く。それにしても、なんとも奇妙な戦い方だな……


その時、妙な違和感を感じた、あの魔導機に変な懐かしさみたいなものを感じたのだ。俺は思いに耽けようとしたのだが、敵がそんな悠長なことをさせてくれなかった。巨大な斧を振り回して、敵の一体が攻撃してきた。不意の攻撃を避けると、エストックで首、胸、腕の関節を連続で突き、その魔導機を撃破する。


そうだな、今はそんなことを考えている暇はない、早くあのライドキャリアを沈めないと──


俺は敵への攻撃に集中するように頭を切り替えて、ライドキャリアを守っている敵部隊に攻撃を開始した。すると、それに呼応するようにあの味方の魔導機も動きを合わせてきた。


エストックで前の二機の敵機を突いて攻撃する。左から接近してきた敵機は、味方の魔導機が敵の腕を引いて振り回すようにして押し倒した。その味方を後ろから攻撃しようとした敵機の首を、素早く後ろを振り返り、マインゴーシュで切り裂く。間髪入れず二機の敵機が剣を振り上げて攻撃してくる。一機は俺がエストックで貫き倒し、もう一機は味方の魔導機が日本刀のような細長の剣を引き抜いて斬り伏せた。


俺と味方の魔導機はお互いを見て頷くと、同時に敵部隊を睨みつける。敵は俺たちの気迫に押されたのかゆっくりと後退りした。


どちらが合図を送るでもなくアルレオと味方の魔導機は同時に動いた。そして、今日、初めて一緒に戦ったのが信じられないくらいに息の合った連携を繰り広げる。


敵の攻撃をマインゴーシュで受け止めると、味方機が刀でその敵機の首を斬り飛ばす。味方機に斬りかかった敵機の腕を脇で押さえて倒すと、その敵の頭部をエストックで突き潰した。俺は大きく踏み込んで前にいる敵機に蹴りを入れて倒す、別の敵機の横からの攻撃をマインゴーシュで受けて、エストックで反撃して突き倒した。その両手が塞がれた瞬間を狙って敵機が攻撃してきたが、その敵の攻撃は味方機に弾かれ、返す刀で斬り伏せられる。


なんだこの安心感は……無双鉄騎団の仲間たちと一緒に戦っているような……いや、それ以上に俺の気持ちは落ち着き、戦闘中なのに安らぎすら感じていた。


そんな俺の気持ちを知っているのか知らないのか、味方の魔導機は俺が望むような動きを寸分狂わずしてくれる。自分の体が二つになったような不思議な感覚すら感じていた。


ライドキャリアを守る敵部隊を一掃すると、俺たちはハッチを破ってライドキャリアの内部に侵入した。ライドキャリアの動力部のルーディアコアを破壊すれば、全ての機能が停止するはずだ。俺たちはそれを探した。


動力部は艦の中心下部にあった。丸い大きなコアをエストックで貫いて破壊する。バシュっとコアは簡単に弾け飛び壊れる。ゴゴゴッ……ともの凄い音が響いて、急激に静けさが訪れる。どうやらライドキャリアの機能が停止したようだ。


外に出ると、敵艦からの攻撃は止んでいた。どうやら上手くいったみたいだ。大事な艦を壊され、怒ったのか周辺にいた敵が襲いかかってきた。俺と味方はそれを迎え撃つ。


戦いながら、ふと、自然な感じで味方機の戦いを冷静に真後ろから見る瞬間があった。どこかで見た動き……いや、俺は何度も、何度も、あの姿を見ている……だんだん、味方の魔導機の姿と、周りの風景が昔の記憶に置き換わっていく……そこは古びた道場、幼い頃から出入りしていた幼馴染の実家……学校が休みの日に遊びに行っても、幼馴染はいつも日課の稽古をさせられている……いつもその稽古が終わるのを道場の隅で眺めて待っていた。


味方の魔導機と、その時の幼馴染の姿が完全に一致する──俺は襲ってきた敵部隊の最後の一機を倒すと、味方機に近づいた。


「お前、渚か?」


そう俺が言うと、味方機は動きを止めた。

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