第157話 殲滅へ

1時間ほどの仮眠でジャンに起こされた。起きてすぐにルジャ帝国の侵攻軍との戦闘に駆り出される。ジャンは全軍に向けて戦いの準備のメッセージを伝えている。


「しばらくは小競り合いもしたくなくなるくらい、ルジャ帝国を徹底的に叩くぞ、全軍、戦闘準備!」


やっぱり1時間の睡眠では全然足らない、眠い目を擦りながら格納庫へと向かった。


「勇太は中央から切り込んで敵軍を分断、リンネカルロは左翼敵軍の殲滅に、私とナナミは右翼敵軍の殲滅、エミナとアーサーはエモウ軍のサポート、ロルゴ、ファルマはフガク近くの防衛と他部隊のフォローをお願い」


アリュナの作戦の指示にみんな頷くと、各々自分の魔導機に乗り込む。俺のアルレオに乗り込もうとしたのだけど、ラネルに呼び止められる。

「私も勇太さんと一緒に中央の分断に参加したいのですが……」

「いや、俺と一緒は流石に危ないから、ラネルはロルゴたちとフガクの防衛の手伝いをしてくれるか」


中央から切り込んでの敵軍の分断なんて自分で言うのもなんだけど、俺にしかできない無茶な作戦だから、そんなのに大事な王女さんを連れて行くわけにはいかない。だから無難な役割をお願いした。


ラネルは納得はしていないようだが、渋々それを了承した。


敵軍は魔導機800機ほどで数だけならこちらの四倍近くいる。それだけの戦力差がある為か、敵軍もこちらと正面から戦う気のようで部隊を展開して迎え撃つ構えを見せた。


俺が中央に切り込むことで敵の戦力は分断される。そうすれば組織的攻撃力は弱まるり、仲間に対しての危険度は大きく下がる。俺は誰より先に敵軍へと突撃した。


「勇太、無茶はしても無理はするなよ、ヤバそうだったら分断は断念していいから戻ってこい」


ジャンも俺の任務が無茶なことは理解しているようでそう言ってきた。まあ、とりあえずは突撃して様子を見ることにする。


無双モードは体力の消費が激しいので今回は使わないことにした。数が多すぎるので体力がなくなった時はかなり危険なことになるのは想像できる。俺はエストックとマインゴーシュを通常モードで使用して、敵機を撃破していった。


チラッと仲間の戦いを見たけど、ナナミやエミナのように無双鉄騎団の機体はラフシャルによって大幅にパワーアップされているようで派手な活躍を見せていた。特にファルマのガルーダが装備している新アローは驚異的な力を見せつけている。一回の弓を引く動作で10本ほどの矢が空を舞い、矢の一本一本が風の渦のようなものに包まれていて命中した敵機を粉砕していた。


アリュナのベルシーアの双剣は炎を吹き出し、敵機を灼熱の炎で攻撃している。敵の機体が真っ赤に熱しられてドロドロになっているのがわかる。一体どれくらいの温度になっているのか……


ロルゴのガネーシャは盾を構えて敵の攻撃を防いでいるだけのように見えるが、ガネーシャの盾に攻撃を防がれた敵機が逆に破損して吹き飛ばされている。どうんな能力なのかよくわからないけど、敵を圧倒しているのは間違いなかった。


アーサーのセントールは持つ武器が大きくなっているように見える。妙にカッコつけて構えると、敵部隊に一直線に突撃している。突進力が前よりアップしているようで、しっかりと構えているランスに敵機が触れると、弾けるように飛ばされる。


リンネカルロのオーディンは前とあまり変わらず、驚異的な雷撃の範囲攻撃を連発している。ラフシャルはオーディンにはなにも細工をしていないのかな? それほど変化は見られなかった。


その後、特に脅威を感じる敵もなく敵軍の分断に成功する。陣形が崩れて二つに別れ、敵の組織力が落ちたのがわかった。


陣形が崩れて劣勢を感じたのか、敵のライドキャリアから樽のようなものが大量に投げ出されてきた。その樽は地面に落ちると大爆発を起こし、敵も味方も巻き込んで破壊する。


「なんだあの兵器は! 味方もお構いなしに破壊してやがるぞ!」


ジャンが怒ったようにそう叫ぶ。敵の司令官は非道なのか馬鹿なのか乱戦で味方も巻き込む攻撃を繰り出してきた。


「勇太! あの兵器を使ってるライドキャリアを潰せるか!? このままじゃこっちの被害も馬鹿にならねえ!」

「わかった、ちょっと行って黙らせてくる」


樽を打ち出しているライドキャリアは、敵軍の重要な艦なのか守りが厚かった。多数の重量級の大型魔導機が守りを固めていて、近づくのも容易ではなさそうだ。


強くはないのだが、耐久力があり防御が硬い厄介な敵機を倒して進んでいく。その進みは思ったより困難で、目的のライドキャリアまで到着するのにまだ時間がかかりそうだった。このままでは味方の被害が拡大する……誰かに手伝いに来てもらうか……そう考えていた時、横から近づいてきた敵機が妙な体勢で投げ飛ばされた。


俺はすぐに投げ飛ばした相手を見た。そこにいたのは、バルハ高原の砦で両腕を失っていたあの魔導機だった。

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