第152話 助ける者

「フェリ、急いでいるからなるべく移動中の戦闘は避けたい、適切なルートを教えてくれるか」

「了解しました。移動時間の短縮を最優先事項に設定いたします」


こうしてフェリがルートをナビしてくれたのだけど……いや、確かに急いでいるけど、移動させられている道は、道とは言えないような悪路ばかりで、崖なども平気で登らされた。こんなの登れないと伝えると、マスターとアルレオなら可能ですと涼しい声で言われる。


なんとかフェリの無理難題のルート選択を乗り越えて、目的地であるバルハ高原へ到着したのは出発してから半日ほど経過した頃であった。バルハ高原では広範囲にわたって激しい戦いが繰り広げられている。


「フェリ、味方の識別は大丈夫か」

「はい、テミラ、アムリアのビーコン水晶は解析済みです」

「よし、それじゃ、味方を助けて周るぞ」


アサルトウェポンをマインゴーシュとエストックの元の状態に戻し、戦場へと突撃した。


「右三十度、味方機劣勢です」


フェリのナビに従い、窮地の味方を助けて周る。敵の数が多いのでなるべく一機に手数をかけないように、一機一撃を心がけてエストックとマインゴーシュで撃破していく。


50機ほど敵機を倒した頃合いに、フェリから提案される。


「マスター、丘上の砦が味方のものだと思われますが、敵に制圧されそうです。この戦いの要所だと思われるポイントですので、制圧阻止を推奨いたします」

見ると、丘の上に敵の大軍に囲まれた砦が見えた。


「あっ、あの砦か、分かった。大事な場所ならすぐに助けよう」


走って丘を駆け上がり砦に近づくと、敵がアルレオの存在に気が付きワラワラと殺到してくる。その数はざっと数えて100機近く、俺はその集団に突撃した。


回転しながらエストックで突き攻撃を連続で繰り出す。周りは敵だらけだ、適当に突いても命中する。左手に持ったマインゴーシュで敵の攻撃をいなしながら、エストックの突き攻撃で敵を撃破しながら砦に近づく。


城壁の近くまで来ると、ゾワっと何か妙な不安感が襲いかかってきた。なんだこの感覚……前にも感じたことある……どこだったか……


なんの感覚かわからなかったが、俺はすぐに砦の中に入らないといけないと感じていた。あの中に大事な何かがあるような気がしてならない。

「フェリ、アルレオであの城壁を飛び越えれるか」

「残念ですがアルレオの跳躍力でも5mほど飛距離が足りません」

「そうか、5m足らないか……それなら!」


俺は敵機の一体を踏み台にして高くジャンプした。魔導機の体長は10mほど、これなら十分届く!


踏み台にされた敵機はペシャンコに踏み潰されたが、その犠牲のおかげか、城壁の上に飛び移ることができた。そこから砦の中を見ると、多数の敵機に囲まれた魔導機が、無残にも腕を切り落とされた瞬間であった。それを見た瞬間、一気に大量の不快感が俺の心を侵食する。


強烈な怒りの衝動が俺を掻き立てる。助けなきゃ、なぜか強くそう思った──


城壁から飛び降り、一目散でそこに近づき、剣を振り下ろそうとしていた敵機の両腕をエストックで叩き飛ばす。そして同時にマインゴーシュで首も飛ばした。


両腕を失った魔導機を拘束している二体の魔導機にも怒りをぶつける。前蹴りで一体を破壊し、もう一体は突き武器であるエストックで強引に上下真っ二つに両断した。


なぜこんなに怒っているんだ俺は……理由はわからないけど、無性に腹を立ってていた。


俺の登場が急すぎて唖然としていた周りの敵が、ようやく反応する。20機ほどの敵が一斉に俺に斬り掛かってきた。怒りの感情が残っている俺は激しくそれを迎え撃つ。


最初に剣で攻撃してきた敵機の頭部をエストックで貫き潰す。横から斧で水平に殴りかかってきた敵の攻撃を避けると、接近してマインゴーシュで首を斬り飛ばし、前からきた魔導機の腹部を蹴り潰す。どうやら俺は無意識のうちにルーディア集中に入っていたようで、全ての動きが素早く力強かった。まるで大きな藁人形と戦っているかのように敵機が軽く感じる。


向かってくる敵を倒しているだけであったが、気が付けば、近くにいる敵は派手な明るい黄色の機体の一機になっていた。最後に残ったそういつは攻撃しようか逃亡しようか迷っているのか挙動不審にウロウロしていた。俺がその敵機にゆっくり近づくと、砦の入り口の方へと走って逃げていった。

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