第153話 無双モード

周りを見渡し状況を確認する。どうやら砦内の敵は一掃できたみたいだ。次は砦の外にいる敵を片付ける為に外に出ることにした。去り際に味方に外部出力音で声をかける。


「そこの両腕を失った魔導機、大丈夫か?」

魔導機から返事がない、怪我して動けないのか心配になったが、少しの間の後、返事があった。

「……だ……大丈夫です……」


「そうか、俺は外の敵を倒しに行くから、動ける魔導機で入り口を防御してくれ、一機も砦には近づけさせないように叩くけど、もしかしたら撃ち漏らすかもしれないからな」


動ける魔導機と言ってもざっと見て一桁くらいしかいなさそうではあったが、なんとか入り口を守るくらいはできそうだと判断した。


俺はすぐに外の敵を片付ける為に外に向かった。


──勇太! ──


不意に後ろから誰かに名前を呼ばれたような気がした。振り向いて確認するが、さっきと何も変化はない、どうやら気のせいのようだ。


そういえばさっきの魔導機のライダーの声、渚の声に似ていたな、だからか、あいつに呼ばれたような気がしたのかもしれない。



砦の外の敵は何やら混乱しているようだ。敵は俺の登場にどうして良いのかわからないのか、ただその場で待機していた。アルレオが現れたのに気がつくと、なんとも歯切れの悪い感じでバラバラにこちらへ向かってくる。数が多いので統率された行動をされると厄介なのだが、何か事情があるのか指揮系統が弱っているみたいだ。


指揮が戻るのを待つ義理もないので俺は倒し易いうちに敵を殲滅することにした。


敵の数は数百機はいる、こんな時ヴィクトゥルフだったらヴィクトゥルフ・ノヴァの一発で終わるので楽なのだが、今はそんな大量破壊兵器もないのでチマチマ倒すしかない、そう思っていたのだけどフェリが新たな提案をしてきた。


「マスター、敵機が多く、味方機が近くにいませんので、マインゴーシュとエストックを使用して無双モードに変更することを推奨いたします」

「無双モードとはなんだ」

「ルーディア集中時にだけ使用できるスペシャルモードです。気力、体力を最大消費いたしますが、敵殲滅効率が700%アップします」

「よし、むっちゃ疲れるけど、早く敵を倒せるんだな、それじゃ、やり方を教えてくれ」

「はい、まずはマインゴーシュをアルレオの右肩の後ろにあるソケットに挿入して、エストックを背中の部位に垂直に差し込んでください」


「肩の後ろのソケット? なんだよラフシャルの奴、アルレオにいつのまにそんな仕掛けつけたんだよ」

ブツブツ文句を言いながらもフェリの言う通りにした。


「無双モードへの承認は音声入力になっています。『ヒロイック・ブースト』と大きな声で叫んでください」


「たくっ……ヒロイック・ブースト!」

なんだよそれっと思いながらも言われるままに叫んだ。


英雄強化ヒロイック・ブーストが認証されました。無双モードへ移行します。ルーディアコア、アクセス──スペル『スピード・アップ』詠唱開始──スペル『パワー・アップ』詠唱開始──スペル『オーラ・ブースト』詠唱開始──スペル『シャイン・フィスト」詠唱開始──全スペル展開します」


フェリがそう言うと、シャキシャキッと音がして、何やら微妙にアルレオの形態が変化する。そしていつものルーディア集中の時より激しい黄金のオーラがアルレオを包み込む。


「よし、なんか強そうだぞ。だけど、これって武器しまっちゃったけど、どうやって戦うんだ」

「無双モード中は両腕が強力な武装となっています」

フェリが言うので両腕を見ると、拳が凄い光で輝いている。なるほど、こいつで殴れば良いのか。まあ、とりあえず戦ってみよう、そう思って近づいてきていた敵機に、こちらから向かった。


グンッと強い重力を感じて、一瞬のうちに敵に接近する。試しに敵機の頭部を殴ってみた──すると頭部は消し飛び、衝撃波というものなのか、攻撃の威力は魔導機の機体全部に伝わったようで、全体が激しく損傷して吹き飛んだ。


そうか、直接当てなくても、衝撃波だけでもかなり威力があるからこれを攻撃に利用すれば良いんだな。


俺は直接殴るのではなく、手を振るように敵機を攻撃した。ブオンと重い風の音が鳴り、目の前にいた複数の敵機がその一撃で装甲が剥ぎ飛ばされ、物凄い勢いで吹き飛ばされた。

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