第144話 アサルトウェポン

敵の増援部隊は静かだが確実に接近してきていた。いつもならパッと突っ込んで暴れて戦うだけでいいのだが、今回はそうは行かない。複数の仲間を守りながら戦うにはどうしたらいいか本気で考える。


やはりさっきの戦闘のように後方で待機して貰って、撃ち漏らした敵を倒してもらうとかどうかなと考えていただのが、どうもラネルたちはやる気満々のようで、俺の隣から動こうとしない。


「とりあえず、みんな固まって離れないように、陣形を守って戦おう」

バラバラに動かれたらとてもじゃないが守りきれない。俺はそう皆に注意した。


「勇太、敵が気づいた見たいだよ」

「よし、俺は中央で標的になるから、ナナミは左を、エミナは右を頼む。他のみんなは少し後ろから援護を! 絶対に前に出るなよ!」


そう指示を出した後、すぐに敵の先鋒部隊が突入してきた。敵は圧倒的多数なのを認識しているのか、大雑把に乱入してくる。


俺は目立つように中央で仁王立ちしてそれを迎え撃った。


やはり目立つ位置にいるのが幸いして、敵の先鋒部隊の大半が俺に殺到する。まずはエストックの連続突きで数体を蜂の巣にする。踏み込んで周りの敵機の首をマインゴーシュで跳ね飛ばす。マインゴーシュとエストックの扱いにも慣れてきた、二つの武器を操り的確に敵機を撃破していく。


二十機ほど破壊したところで、敵も俺を脅威に感じたのか攻撃が慎重になってきた。不用意に突撃せず、周りを囲むようにじわりじわりとにじり寄ってくる。こうなってくると少し厄介だな……


敵は俺以外を狙い始めた。まずは右にいるナナミがターゲットになる。しかし、馬鹿な奴らだ、ナナミなら簡単に倒せると思ったのかな、だけどそれは大きな誤算だ。ナナミは殺到してきた敵機の攻撃を左手に持った盾で防ぎながら、右手の剣で確実に撃破していく。さらにさっき話していたラフシャルが施した盾の能力が発揮される。


「シールド・グラヴィティ!」

ナナミがそう叫ぶと、ヴァジュラの周りの地面がボコッと陥没する。同時にその範囲にいる敵機が地面に叩きつけられるように倒れた。十機近い敵機がプシュプシュと白い煙をあげて動かなくなる。


後でラフシャルに聞いた話だが、ナナミの使用した技は、魔導機のルーディアコアと、装備に埋め込んだルーディアコアによる相応効果を利用した魔導撃という攻撃らしい。リンネカルロのオーディンの雷撃と同じ原理だと聞いて納得した。ちなみに魔導撃の発動キーが音声入力なのはラフシャルの趣味だそうだ。


エミナの強化されたボウガンは、ナナミの魔導撃とは少し違う、エンチャント・ウェポンという技術で、アルテミスから撃ち出されたボウガンの矢が命中した敵機は、命中した箇所からパリパリと凍結していき、そのまま動かなくなる。


二つのルーディアコアの起動が必要となる魔導撃は体力と気力の消耗が激しい分、威力が強いが、エンチャント・ウェポンは物理弾を強化するだけなので、ルーディア負荷を抑えられ、効果がルーディア値に左右されにくいのが特徴のようだ。


俺とナナミ、エミナの三人により、正面から攻撃してくる敵部隊はそのほとんどを撃退していけているが、敵も馬鹿ではなく、数の差を利用して後方へと回り込もうとしていた。このまま包囲されると後ろにいるラネルたちが危険になる。俺は正面の攻撃をナナミとエミナに任せて、ラネルたちの援護に回る事にした。


動き回りながら複数の味方の援護をするのは限界がある。その場から援護できる飛び道具があればいいのだけど……すぐに魔光弾を思い浮かべたが、一発しか撃てない魔光弾は決め手の攻撃にはなるが、今の状況では役には立ちそうになかった。


他に方法がないかフェリに相談する。すると彼女は最良の方法を教えてくれた。

「マインゴーシュとエストックをアサルトモードに変形させてください」

「アサルトモード? なんだよそれ、閃光モード以外に変形するのか?」

「はい、マインゴーシュとエストックは三つの特殊モードで使用することが可能です」


特殊モードは三つもあるのか──まあ、とりあえず使ってみればわかるだろうと、変形方法をフェリに聞いた。まず、マインゴーシュの持ち手を、閃光モードとは逆の方向へと回転させる。すると、マインゴーシュがカシャっと変形して銃の持ち手のように変形した。そしてマインゴーシュの刃の部分に出来た穴にエストックを差し込む。差し込んだエストックをそのまま持ち手から回転させながら押し込むとエストックが筒のように変わっていった。押し込んだエストックの持ち手をもう一度引くと、銃のグリップのように変形してアサルトモードへの変形が完了する。


「アサルトウェポンを構えてください。アルレオのスクリーンをスコープモードに変更します」

フェリの言うように変形したマインゴーシュを構えると、スクリーンが拡大表示され、円形の目印が現れる。その円形の目印を敵機に合わせて引き金を引く。


バシュ! と音を立てて光の細い筋がターゲットにした敵機まで伸びていく──そして光が命中すると、命中した箇所が破裂するように吹き飛んだ。魔光弾に似ているけど、魔光弾より線が細く、威力もあれほど強力ではないようだけど、十分、敵機にダメージを与えられるようだ。


「アサルト弾は光属性の魔導弾です。物理弾とは違い、マスターのルーディアを利用して生成された光弾です。連続で使用すると体力と気力を消耗しますのでお気をつけください」


使いすぎると疲れるよってことだな、まあ、どれくらいの疲労度があるのかは実際に使ってみて確認しよう。俺は周りを見て、苦戦している味方機を探す、そしてアサルトウェポンを構えて光弾を放っていった。

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