第139話 ラネル王女
ピンチそうな魔導機がいたので勢いで助けたのだが、なんと合流する予定のアムリアの人間だった。敵を助けたんじゃなくて本当に良かった。
襲っていた二十機ほどの黒い機体ばかりの気持ち悪い敵部隊を片付けると、助けたアムリアの魔導機に声をかける。
「大丈夫か? 肩をやられてるみたいだけど」
「だ、大丈夫です、怪我はないですし、魔導機もなんとか動きます」
「そうか、君は一人なのか、仲間は誰もいないようだけど」
「あっ! すみません、助けてもらって申し訳ありませんが、襲撃されて仲間が戦闘中なんです、一緒に助けに行ってもらえませんか」
一人でこんなところで襲われているのは変だと思った。どうやら襲撃されて仲間と逸れたようだ。
「わかった、すぐに助けに行こう!」
俺がそう言うと、アムリアの魔導機はフラフラと立ち上がって、仲間の元へと案内した。
案内された場所に行くと、彼女の仲間は魔導機はボロボロの状態であったが、辛うじてまだ生存していた。俺はすぐに助けに入る。
取り囲む魔導機は十機ほど、さっきの黒い機体ではなく、灰色の汎用機のようだ。味方機に近づくついでに、走り抜けながら左右にいた五機の魔導機をエストックとマインゴーシュで破壊する。味方機を取り囲んでいる敵機は四機、まずはエストックで頭部と腹部を貫き一機を倒すと、マインゴーシュで二機の頭部を飛ばす。残った一機をエストックで腹部を貫きながら、マインゴーシュで首を飛ばしてトドメをさした。
助けられて安心していると、まだ奥に味方がいると聞く。俺はアルレオを全速力で走らせ、そちらに向かった。
言われた方向に走ると、すぐにボロボロになりながら必死に戦う三機の魔導機が見えてきた。三機は身を寄せ合いながら、十機ほどの敵機に囲まれながら必死に戦っていた。アムリアの魔導機を置いて走ってきたので味方がどっちかわからなかったが、取り囲んでいる魔導機はさっき倒した灰色の魔導機に似ているし、多分、劣勢の方が味方だろう。
取り囲んでいる魔導機たちは、アルレオが走ってきたのに気づき、すぐに戦闘態勢にはいる。やる気満々なら遠慮はいらない、アルレオをさらに加速させて攻撃を開始した。まずは超高速で無数の突きを繰り出し、三機の魔導機を蜂の巣にする。状態を低くして、タックルを繰り出すように敵機に接近すると、起き上がりざまに二機の首をマインゴーシュで飛ばした。敵がノロノロと攻撃してきたが、軽くエストックで弾き返し、返す刀で頭部を貫き潰す。
残った敵機が慌ててアルレオを取り囲もうとする。俺は回転するようにエストックで突きを繰り出し、取り囲んできた敵機を次々に破壊していった。
一通り敵機を倒すと、安全確認の為にフェリに聞いた。
「フェリ、周りに敵はいそうか?」
「さきほどの友軍以外に魔導機の反応は近くにはありません」
なら大丈夫だな。安心して味方の魔導機を救助できる。
「王女様!?」
驚くことに最初に助けた魔導機のライダーは、アムリア王国の王女様だった。次に助けた魔導機たちは、テミラの案内役部隊だそうだ。
「い、いえ、小さい国の王女です、様など付けずに接してください」
「わかった。え〜と、ラネル王女、早速だけど、エモウ軍と合流しようと思うけど、みんな動けそうかな」
「はい、高速ライドホバーの一機は大破してしまいましたが、もう一機は辛うじて動きます。魔導機は全機ボロボロですが歩行には支障はありません」
「それじゃ、移動しよう」
そう言ってエモウ軍の待機している合流地点へ目指したのだが、その直前で敵の大部隊を見つけてしまう。
「凄い数だな……」
「ルジャ帝国の侵攻部隊ですね、このまま進んだら発見されそうです」
俺一人なら突破できそうだけど、ボロボロの魔導機と辛うじてい動いているライドホバーを連れてはとても進めない。さて、どうしたもんか──仕方ないのでジャンに相談することにした。
「ジャン、聞こえるか」
「おう、勇太、偵察はどうだ」
「アムリアのラネル王女と合流した」
「なんだと! なかなか合流地点にこないと思ったけどそこにいたのか」
「それで、現状の話をするけど、ラネル王女を連れてそっちに行こうとしたけど敵の大部隊が展開していて進めそうにない」
「大部隊ね、こっちでもそいつは把握している。ちょうど今、戦闘準備を始めたところだ。状況はわかった。それじゃ、こうするぞ、お前はラネル王女を連れて、迂回して北西に見える山に向かえ、そこにこっちからも応援部隊を向かわせるから合流して戻ってこい」
「わかった。北西の山だな」
ジャンとの会話をラネル王女たちに伝え、敵を警戒しながら北西の山へと向かった。
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