第130話 謁見
試合に勝利したファルマがガルーダから降りてくる。俺は笑顔で迎えた。
「やるな、ファルマ、見事だったぞ」
「ファルマ、頑張ったね」
「良い戦いでした。自分の機体と相手の機体の特性を良く理解してましたね」
ファルマはみんなに褒められて、顔を赤くして照れている。
そこへ試合を取り仕切っていた人が近づいてくる。おそらく賞金を渡しにきたのだろう。
「お見事な戦いでした。賞金の方ですが、申し訳ありません。我が主が直接お渡ししたいと言っておりまして、この時間にこちらを尋ねて貰えませんでしょうか」
もらった紙をエミナが見て、驚いている。
「ここってこの国の王城ですよね」
「はい、その通りです。できればご内密にお願いします」
王城に来いって言う主とは……
指定の時間まで少しあったので、一度ライドキャリアに戻ってジャンに相談することにした。ちょうどジャンは補給の手配を終えて戻ってきていたので話をする。
「なんだと、そんな試合してたのかよ」
「それでファルマが勝ったのは良いけど、城に来いって言われてるんだよ、なんか面倒臭そうな話になるかもしれないし、取りにいかない方がいいかな?」
「馬鹿野郎! 賞金が貰えんだろ! いかないでどうする! 変な言いがかりつけてくるかもしれねえから俺も行くぞ!」
やはりジャンはこう言うことには頼りになる。後、王城に行くならと、メルタリア王女の肩書きを持つリンネカルロも同席することになった。
城に行くと、すでに話が通っていたのか、門番が丁重に対応する。すぐに担当の者が出てきて、案内してくれた。
通されたのは城の謁見室。ここまでくれば想像できていたが、現れたのはエモウ王国の王様だった。
「エモウ王、ブラッシュ二世だ。わざわざ城まで呼び出して、すまなかったな」
「貰うもん貰えるなら別に構わねえよ」
ジャンがなんとも失礼な言い方をするが、エモウ王は気にしていないようだ。
「そうだな、早速賞金は渡そう」
そう言うと、部下に指示して賞金の入った袋を持って来させた。それを勝者であるファルマの前に置いた。ファルマがそれをどうしようかと困っていると、ジャンがこう言った。
「それはお前のもんだ、ありがたく貰っておけ」
ジャンは賞金はファルマの個人的な収入だと認めたようだ。団員の稼いだお金は全部無双鉄騎団の収入だと徴収するかと心配したが、ジャンはそう言うとことはしっかりしている。
「それで王さんよ、俺たちをわざわざ城まで呼び出したのは賞金を渡す為じゃねえだろ。早く本題を話してくれるか?」
ジャンの言葉に俺は驚く。
「えっ! そうなのか」
「当たり前だろ。賞金渡すだけの為に城に呼び出して、王さん自ら対応するなんて普通考えられねえだろ」
「ハハハッ──そこまでわかっているか、さすがは私のラフガンを倒した傭兵団の者だな」
「私のってもしかして魔導機ラフガンのライダーって……」
「そう、ラフガンに乗っていたのは私だよ」
ちょっと驚いた。まさかあれにこの国の王様が乗っていたとは……
「実は信頼できる傭兵団を探していてね、できれば君たち、無双鉄騎団を雇いたいと思っている」
「まあ、そんなところだろうな。しかし、傭兵を探す為に自ら魔導機に乗って試合するとは、暇なのか?」
「ハハハッ、暇とは酷い言われようだな。まあ、俺はそもそも傭兵と言うものを信頼してなくてな、最強の傭兵団とか、無敵の傭兵団とか自称で売り込む傭兵ばかりで、実際は実力は大したことないってことが多いだろ。そこで自分の目で見て、雇う傭兵を見極めようと思ったんだよ」
「なるほどな、確かにそうかもしれねえ。それで、あんたのお眼鏡に適った俺たちをどんな条件で雇ってくれるんだ」
ジャンがそう言うと、リンネカルロが、さらに念を押すようにこう話しかけた。
「エモウ王、私が誰かわかりますか?」
「はて、どこかで会ったかな……」
「メルタリア王国、第三王女のリンネカルロです。一度、ファルディアの舞踏会でお会いしたかと思いますわ」
リンネカルロってエモウ王と面識があったんだ。
「なっ!! リンネカルロ王女……いや、天下十二傑、雷帝リンネカルロ……」
「そうですわ、この雷帝が所属する無双鉄騎団、どれほどの価値があるかよく考えて条件を提示した方がよろしくてよ」
「まさか雷帝の所属する傭兵団とは……危なかった……失礼な金額を提示するところだった……」
エモウ王は正直にそう言った。
「それで、報酬はいくらなんだ」
「私を倒したライダー、それに雷帝……他の団員も優秀なのは間違いないだろう……よかろう、報酬は10億ゴルドでどうだ」
「ほほう、この国の規模でその額を提示するとは、王さん、あんたケチじゃねえな」
「それほど無双鉄騎団を高く評価したんだ」
「十分だ。良いだろう、契約成立だ」
ジャンが即決するとはそれほど好条件なんだろう。しかし……ここで仕事を引き受けて、巨獣の巣へ行く予定はどうなるんだ……まあ、巨獣の巣は急いでいたわけじゃないからいいか。
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