第129話 賭け試合

火炎のダンラッシュは、予想通り3分でラフガンを倒すことはできなかった。ダンラッシュは肩を落として会場をさる。リスクが無いと思っていたけど、名乗りを上げて試合に挑むと、失敗した時、自分の名や所属組織の名を貶めることになりそうだな。だけど、逆に勝利した時は名をあげることになるってことか……


魔導機ラフガンを転ばせることはエミナの見立て通りかなり難しいようで、挑戦は次々と失敗に終わって行った。十人ほど挑戦が終わったところで、参加者たちの間ではラフガンを倒すのは不可能では無いかといった雰囲気になっていた。


「私、挑戦してみようかな……」


そう言ってきたのはファルマだった。普段、そんなこと言う子じゃ無いのだけど……


「本気か、ファルマ」

「うん、私のガルーダだったら倒せそうな気がして……でも、名乗りを上げないといけないんだよね、失敗したら無双鉄騎団の名を貶めちゃうかな」


「そんなことは気にしなくていいぞ、どっちみち無双鉄騎団はまだ無名の傭兵団だし、貶めるほどの知名度がないから思いっきり行って来い!」


ファルマがそんなに積極的になるのは珍しい、俺は彼女の挑戦を応援した。


ファルマは一度ライドキャリアに戻り、ガルーダに乗ってやってきた。そして挑戦の列に並ぶ。


さらに挑戦は続き、魔導機ラフガンは次々と挑戦者たちを退け、今だに惜しい場面すらなかった。そしていよいよファルマの出番となる。


「む……無双鉄騎団……ファルマ……」


か弱そうなファルマの名乗りに、周りのギャラリーたちがザワザワと騒めき立つ、ラフガンがこれまで、ある程度高名な傭兵たちを跳ね除けてきた事もあり、女性で、しかも細い声のファルマが倒せるわけないと思ったようでヤジを飛ばして、からかい始めた。


「おい、おい、女の、しかもあんな非力そうな魔導機で倒せると思ってるのかよ!」

「いくら無料でも冗談がすぎるぞ! 冷やかしでやってんじゃねえよ!」


「まあ、無理かもしれねえけど頑張れよ、俺は応援しているぞ!」


そんなギャラリーにナナミは腹を立てる。

「何よ、ファルマのこと何も知らないのに! ファルマは頑張り屋の良い子なんだから!」

良い子云々はあまり関係ないと思うけど……


ファルマのガルーダは細いワイヤーを持っていた。武器の使用は禁止されてないので問題ないけど、あんなの何に使うんだ……


「さて、無双鉄騎団の……え〜と、ファルマの挑戦です。制限時間は3分、さぁ! 試合開始です!」


ファルマは試合が始まると、持っていたワイヤーを輪っかにしてラフガンに投げつけた。輪っかは見事にラフガンの体を通って足元に引っかかる。


よし、上手いぞ、そのまま引っ張れば……


ファルマはワイヤーを思いっきり引っ張った。しかし、重量の重いラフガンはびくともしない。


「どうした、全然動いてねえぞ! もっと力を入れろよ!」

「おら、気合入れろ!」


ファルマはヤジなど気にしていないようで、焦っている様子はない。だけどパワーはそれほどないガルーダでは、ワイヤーを引っ掛けても引き倒すことはできそうにない、どうするつもりだ。


だけどファルマはこうなることは想定していたようだ。ガルーダはワイヤーを引きながら、上昇し始めた。空へ浮き上がったガルーダを見て、ギャラリーが大きくざわつき始めた。


「とっ、飛んだぞ!」

「飛行できる魔導機だと!」


ガルーダは上昇しながらワイヤーを引いた。まさか上に引っ張られるとは想定していなかったのか、ラフガンは足をとられてフラフラバランスを崩す。しかし、それでもラフガンを地面に転がすまではいかなかった。


ファルマは引っ張っていたワイヤーを不意に離した。ラフガンは引っ張られるワイヤーに対して踏ん張っていたのか、逆にそれでさらにバランスを崩しヨタヨタと不安定になった。


その状態を逃さず、ファルマのガルーダは急降下して上空からラフガンに足から突撃した。ドガッ! と鈍い音がして、ラフガンは背中から地面へと倒れ込んだ。その瞬間、ファルマの勝利が確定する。


勝利の宣言がされると歓声が湧き上がり、ワーワーと大きな盛り上がりを見せていた。さっきまでヤジを飛ばしてたのに現金な奴らだな……


それにしてもファルマはよく頑張ったな、力では劣っているのに自分の魔導機の特性を活かした見事な戦いっぷりだった。

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