第128話 エモウ王国




エモウ王国に入国した無双鉄騎団は、ビールライフ渓谷の地底海流に入る前に、王都で補給をすることになった。ラフシャルはあっという間に着くとか言ってたけど、よくよく聞いたら地底の何もない海流を五日は移動しないといけないらしく、今の物資では心許ないとの話になった。


「新型ライドキャリアの速度はかなり早いな」

エモウ王国までの移動を見ていて思ったのだが、ライドキャリアの移動速度がかなり早くなっていた。


「確かに早いわね、だけどメルタリアからバラヌカまでの移動ではそんなに感じなかったけど」

「操縦者が変わったからかもしれないな、フィスティナは俺よりルーディア値が高いからな」

バラヌカからは新加入したフィスティナがライドキャリアを操縦していた。操縦をしなくなったジャンは艦長席で偉そうに踏ん反り返ってる。


「フィスティナ、あんたルーディア値いくつなんだい」


ライドキャリアの操縦席に座るフィスティナは、アリュナにそう聞かれて、少し考えてこう答えた。

「3000です」


しかし、それを聞いたジャンがフィスティナに指摘した。

「あれ、面接の時は2500て言ってなかったか?」

「あっ……そうでした、2500でした」


自分のルーディア値を言い間違え、ブリッジでは小さな笑いが起こった。フィスティナはちょっと天然なのか、普段から少しぼーっとしている。


「もう少しでエモウ王国の王都だ、最低限の補給だけしたらすぐに出発するからな」


「え〜少し遊んで行こうよ」

ナナミがそう言うと、ジャンはすぐにこう言い返した。

「バラヌカで散々遊んだろうが、休暇はしばらく無しだ」


ジャンは早くオリハルコンをお目にかかりたいと思っているのか、妙に先を急いでいた。


王都に到着すると、ジャンとアリュナは補給の手配に向かった。俺はナナミとファルマに誘われ、そこら辺を散歩することにした。危なくはないと思うけど、一応、護衛としてエミナも連れて行く。


「見て、見て、変な置物あるよ」

店主の目の前で変とか言っちゃダメだ、とか注意などしながら、露天を回っていると、通りの先にある広い広場で何やら凄い賑わいを見せていた。


「なんだろう、ちょっと行ってみるか」


広場には、多種多様、色とりどりの魔導機が並んでいた。魔導機の足元ではそのライダーたちと思われる人々がザワザワと集まり何やら話をしていた。


とりあえず何をしているのか気になったので、近づいて話を聞く。

「こんなところに集まって何してるんだ?」

そう聞くと厳つい男が教えてくれた。

「今から魔導機の賭け試合あるんだよ、勝つと大金が貰えるらしい」


なるほど、だから魔導機がこんなに集まってるのか。


「さぁ、魔導機の賭け試合を始めるぞ! 挑戦者はいないか! 試合ルールは簡単、この魔導機ラフガンを3分以内に地面に転ばせることが出れば挑戦者の勝ちだ、賞金は500万ゴルド! 参加費は無料だからどんどん挑戦してくれ!」


賞金500万ゴルドで参加費無料、賭け試合なのに挑戦者は1ゴルドも払わなくていいんだ。その一方的な好条件に、集まったライダーたちは飛びついた。我先にと挑戦する為に並び、長蛇の列となった。


「勇太も挑戦したら? 勇太なら賞金貰えそうだよ」

どうかな、確かに転ばせるくらいならできそうだけど……


挑戦するしないは別にして、とりあえずどんな感じか試合を見てみることにした。


魔導機ラフガンは重量級の魔導機のようで、重心が安定していて転ばせるのは難しそうだ。ラフガンにはすでにライダーが搭乗しているようで、挑戦者が前に出てくるのを待っていた。そこに最初の挑戦者が名乗りを上げる。


「東方最強の傭兵団、烈火爆裂隊の切り込み隊長、火炎のダンラッシュだ! 賞金は俺が貰う!」


こんなところに集まってるライダーはどんな奴らかと思ったけど、どうやら同業者が多いようだ。


「それでは最初の挑戦を始めます! 制限時間は3分! それでは開始!」


時間制限もあるので、火炎のダンラッシュは勢いよく走り出し、一気にラフガンに体当たりした。確かに転ばせるだけなら体当たりするだけで十分かもしれない、体当たりはまともに命中して、ラフガンとダンラッシュは激しくぶつかる。だけど、質量の違いか力の差か、ラフガンは微動だにしなくて倒れる事もなく、火炎のダンラッシュの魔導機は派手に弾き返された。


あっこれはダメだなという空気が辺りに流れる。


「あのラフガンって魔導機、ハイランダークラスの戦闘力はありそうね。重量タイプだし、転ばせるってルールだとかなり、難しいんじゃないかしら」


見ていたエミナがそう分析する。難しいとか聞くとちょっと挑戦したくなるな……

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