第127話 巨獣の巣
「300億だと! 何血迷った事言ってんだよ、そんな金、用意できるわけねえだろう」
ルーディアコアの生成に必要な材料の話をジャンにすると、想像通りの反応をする。
「いや、だから、その素材を自前で用意しようって話だ」
「用意って言ってもな、オリハルコンと鳳凰石だろ、超レア素材じゃねえか、そんなもんホイホイ落ちてるもんじゃねえぞ」
「それはラフシャルに心当たりがあるそうだから」
ラフシャルは何かの本を読みながら顔を上げる事もなく話し始める。
「まあ、昔は沢山あったんだけどね、今はどうかわからないけど、一応行ってみる価値はあると思う。いっぱい取れたら凄い儲けになると思うよ」
「ほほう、オリハルコンと鳳凰石の隠し鉱山か……それが本当なら興味あるな、それでその場所はどこなんだ」
「巨獣の巣だよ」
ラフシャルが短くそう答えると、ジャンは一瞬固まる。
「……嘘だろ……て言うか、巨獣って本当に存在してたのか!?」
「いたよ、人類の敵として大陸に君臨していた……強力な巨獣に対抗する為に僕は魔導機を作ったんだ。本来は人同士が戦う道具じゃないんだけどね……」
「そうか……巨獣なんて単語、今は昔話の怖い話で聞くくらいだからな、どうして巨獣は滅んだんだ?」
「巨獣は滅んでなんかいないよ。大陸に幾つかある巨獣が湧き出るポイントを封印しているだけなんだ。だから封印が解かれたら、またワラワラと湧き出てくるよ」
「冗談だよな?」
「いや、本当の話だよ。もし、そうなったら今の人類にはどうする事もできないかもね……次に地上から消えるのは人間の方になるかも」
「怖え話だな……それでその怖い巨獣の巣に行くって言うのか」
「封印は強固だからね、そう簡単には解かれたりしないよ」
「ならいいけどな、場所はどこなんだ」
「ここから一番近い巨獣の巣はディアーブルかな」
「ディアーブルだって、あの失われた大地か! 近いったって随分、北だぞ」
「大丈夫、実は抜け道があるんだ。地底海流に乗ればすぐに行ける。地底海流の入り口は、ここから東にあるビールライフ渓谷ってところだから、そこまで行けばそれほど時間は掛からないよ」
「ビールライフ渓谷……どこだよそれ」
「確か、今はエモウ王国って言う小国の南辺りだったと思う」
「エモウね……聞いた事ねえな、あの辺りは小国が無数にあるからな、よく分かんねえわ。まあ、とりあえず次の目的地はエモウ王国だな」
「次の目的地はいいけど、ライドキャリアの搭乗員の求人はどうなったんだ」
巨獣の巣の件の話が一区切りついたようなので、ここでの目的の一つである求人の状況を聞いた。
「明日、面接だ。20名くらい応募があったから半分くらい採用することになるな」
「メカニックは応募があったのか?」
「それがよう、三人も応募してきたんだよ。ラフシャルとオビワンでもう十分だと思ったけど、良さそうな人材だったら追加で雇ってもいいかもしれんと思って、明日、そっちも面接だ。あっ、そうだ、ラフシャル、オビワン、面接官はライザに頼んだけど、お前たちも同席してくれるか、いい人材かどうか見極めてくれ」
「僕にそんな大役つとまるかな……」
「大賢者が何言ってんだよ、頼んだぞ」
次の日、予定通り面接がおこなわれた。ジャンは半分くらい採用と言っていたが、結局、搭乗員として採用したのは十五名にもなった。それとライドキャリアの操縦者として一人、メカニックは二人の採用を決めた。
「とりあえず、新しく雇ったライドキャリアの操縦者と、メカニックを紹介するぞ」
ジャンがそう言って三人の人物を連れてきた。
「まずはライドキャリアの操縦者のフィスティナ」
フィスティナは水色の長い髪の女性だった。瞳の色も透き通った綺麗な水色で、見つめられると吸い込まれそうになる。
「メカニックはこの二人だ。ダルムとバルムの兄弟だ。雑用係でもあるからこき使っていいぞ」
ダルムとバルムの兄弟は双子なのか瓜二つであった。二人とも2mくらいある大男で、筋肉モリモリのプロレスラーみたいだ。ラフシャルとライザの、力仕事をしてくれる人手があると助かるとの意見からこの二人は採用となったらしい。
この三人もそうだが、搭乗員も含め、新人はすぐに全員合流できるそうで、急ではあるけど、明日にはバラヌカを出発することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます