第104話 邪女/クルス
通信兵はイライラする私の前で、いくつもの言霊箱を弄りながら作業をしている。大きな声で何度も呼びかけるが、相手からの応答はなかった。
「まだ、オルレア将軍とは連絡が取れないの」
「はっ、はい、全ての通信手段を使っているのですが……未確認情報ですが、オルレア将軍の軍はすでに全滅しているとの話もありますし……」
「全滅……オルレア将軍には1000機の大軍を預けているのですよ、何を相手にしたら全滅するのですか」
「はあ……ですから未確認情報と……」
プッシュ──
「ちゃんとした答えを言えない口なんて必要ないでしょう」
煮え切らない言葉に苛立った私は兵の口をナイフで切り裂いた。
「ぐうっああああ!」
兵は口を押さえて床を転げ回った──その姿を見て少しだけ気が晴れる。
「おいおい、クルス、俺のライドキャリアを汚い血で汚すなよ」
「申し訳ありません、ムスヒム王子、この兵が私をイラつかせましたので」
「イラつかせた、そうか、なら口を切られても仕方ないな、おい、目障りだ、そこで転げ回ってる奴を何処かへ連れて行け!」
話の分かる王子で助かる、だからこそ王になってもらわないと困るのよ……しかし、本当にオルレアは何をしているの、リンネカルロに寝返らないように、この美しい体を与えたのに使えない奴め……
「それより、クルス、この戦い、負けるなんてことはないだろな、ホロメル公爵の私兵軍や宰相ブロムの兵もかき集めてるのだぞ、もし、負けるようなことがあれば後はないぞ」
「負ける……それは万に一つもありえません、戦力差は五倍、私兵ばかりのあちらに対して、こちらの戦力の大半は国軍の正規兵、兵の数も質も圧倒しています、まず負ける要素はありません」
「だが、あちらにはあの親衛隊の12名の精鋭を倒したライダーがいるのだぞ、さらに国宝、ヴィクトゥルフ……あれを動かすとは……」
「ふっ、ヴィクトゥルフなど骨董品、何かの間違いで動いたのでしょう、さらに言いますと、そのライダーが倒したと言う親衛隊の精鋭12名、あの程度でしたら私でも同じことはできます」
「確かにトリプルハイランダーのお前ならそれも可能だろう、ならば、そいつが出てきたらお前が出撃して片付けるのか」
「それがお望みでしたらそのようにいたしましょう」
「なら安心だな、リンネカルロのオーディンもこちら手中にある、もう恐れるものはないだろう」
オルレアがヘマをしている可能性があるこの状況ではオーディンがリンネカルロに奪還されている事も考えられる。リンネカルロか親衛隊を倒したライダー、どちらか一人なら私だけで問題ないけど、二人同時に相手をするには厳しいわね、ここはやはり対リンネカルロで用意していたアイツも出撃させる必要があるか……
「ムスヒム王子、ラドルカンパニーから秘密裏に購入したあの魔導機を出撃させてもよろしいでしょうか」
「120億もしたあの機体か、万に一つも負けない相手に出す必要があるのか? あれはいざという時の秘密兵器だとお前が言ったではないか」
「この戦い少しだけ懸念点があります、それを払拭する為に、ここは出し惜しみするべきではないと思いました」
「そうか、なら出撃を許可する、敵軍を完膚なきまでに叩きのめせ!」
「はい!」
私は後ろを振り向き、直属の部下にこう命令した。
「私の魔導機アークエンジェルの準備をしなさい! それと魔導機ギガントマキアの出撃準備も急ぎ行うように!」
命令を受けた部下は大きく返事をすると、急いでそれを実行する為に動いた。私は動きにくい司令官服を脱ぎ捨てライダー用のスーツへと着替える──ライドキャリアのメインルームでいきなり裸になると、部下たちは見て見ぬ振りをして目を逸らす振りをするが、やはり私の美しい裸が気になるのかチラチラとバレないように見ている。それでいい、私の存在そのものがご褒美だと言う事を認識するといいのよ。
着替えが終わると、私は格納庫へと向かった。魔導機ギガントマキア──あれを見た敵軍がどんな反応をするか楽しみね──
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